新年の「古楽の楽しみ」--祈りを集めて2018年01月05日 21時52分29秒

年頭にあたりふさわしい企画を、と考えましたが、日本のお正月にばっちりはまる古楽は思い当たりません。そこで、1月は、「祈り」の音楽を特集しました。宗派を超えたイメージで聴いていただければと思います。

8日(月)は、「祝福の祈り」です。祝福の祈りがテキストにたくさん出てくるのは、詩篇曲。クロード・ル・ジューヌ、シュッツ、ヨハン・ルートヴィヒ・バッハの詩篇曲をまず聴き、ヨハン・ルートヴィヒ・バッハのカンタータを経て、バッハ《ロ短調ミサ曲》の〈ベネティクトゥス〉+〈オザンナ〉で締めくくります。ルートヴィヒのカンタータはバッハがライプツィヒの礼拝で上演したもので、たしかにそれに値する作品です。

9日(火)は、「平和の祈り」。これは事実上、三十年戦争とヴェストファーレン条約にかかわる作品の特集になりました。作曲者はキンダーマン、シュターデン、ヴィートマン、シュッツ、ヘルプストで、嘆きの曲と喜びの曲が、歴然としたコントラストで並んでいます。勇士グスタフ・アドルフの死に捧げる曲も2曲。締めはもちろん、《ロ短調ミサ曲》の〈ドーナ・ノービス〉です。

10日(水)は、「憐れみの祈り」。このレパートリーは、古楽には豊かです。詩篇のテキストによるラッスス、ドゥラランド、バッハ(=ペルゴレージ《スターバト・マーテルの編曲)の作品を一部抜粋の形でご紹介し、最後を《ロ短調ミサ曲》の〈アニュス・デイ〉で締めくくります。

11日(木)は、「快癒の祈り」。このテーマに特化した作品はありそうで少なく、選曲に苦労しました。最終的なプログラムは、ヴェックマンのモテット、クーナウの聖書ソナタから(第4番〈瀕死のヒゼキヤとその快癒〉、ハマーシュミットの詩篇曲、バッハのカンタータ第25番(この世を病院にたとえる)、《ヨハネ受難曲》第2稿の冒頭合唱曲となりました。

12日(金)は、「安らぎの祈り」。ラテン語の「パークスpax」は平和とも平安・安らぎとも訳せますが、死と向き合う内面指向の曲をこちらに集めました。ジョン・シェパードのレスポンソリウムのあと、シメオン頌歌を4曲(パレストリーナ、バード、クリストフ・ヴェルナー、ブクステフーデ)。シメオン頌歌はコラールにもなっていますので、こちらはバッハの和声付けと、ブクステフーデのカンタータで。最後に、イエスの慰めの言葉に付曲したヴェックマンのバス独唱カンタータを置きました。

こうご案内してみると、とんでもなく地味な週になりそうです。しかししみじみと心に染みる曲がいくつもありますので、気軽にお聴きください。いくつかの新録音を含めて、演奏には適材適所を心がけました。