駅伝の高等戦術2016年01月04日 06時55分43秒

新春の風物は、やはり駅伝ですね。花形はもちろん箱根ですが、そこで有名になった選手たちの集結するのが、元旦の群馬(実業団)。年末には富士山女子駅伝というのも現れて、たくさんの時間を用意しなくてはならなくなりました。

それにしても、青山学院は・・。先日ちょうど学会の全国大会を開いたばかりで、音楽の先生たちもみな友人。爽やかな若者の揃った輝きのイメージには、なんとも魅力があります。

1万メートル28分台がずらりという強力軍団が成長してきたのは、原監督の手腕のたまものでしょう。聞くところでは、自分で考えられる選手を育てるという、自主性重視の教育方針をとっているとか。共感します。どの分野も同じことです。

その監督が、山下りの6区を一年生が走るのが心配だ、とコメントし、それが報道されていましたね。後から考えると、監督は隠し球の小野田君に絶対の自信をもっていて、わざとそう言っていたのではないでしょうか。他のチームは皆、ヨーシそこを突こう、と思うはず。それが水際だった快走をされたのでは、これはダメだ、と意気消沈してしまいます。すべて想定内だったのではないかと想像します。

青学だけでなく多くのチームが、下級生をバランスよく入れてきます。ラストチャンスの四年生には気の毒にも思えますが、それは来年以降のために、絶対欠かせないことであるわけですね。参考になります。中継を楽しみましたが、美談満載の絶叫中継は、ふらふら選手に飛びつくカメラワークとともに、過剰なのではないかと思いました。

『モーツァルト 最後の四年』ウェブサイト日本語版はこちらです。http://composed.webcrow.jp/(しばらくご案内させてください)

奥の深いものが好き2015年12月26日 09時31分16秒

先日ある団体の忘年会に顔を出したところ、すてきな女性が私に、「先生は『マイト・アンド・マジック』をやっておられるのですか」と尋ねました。一瞬虚を突かれて言葉が出ませんでしたが、別に悪いことをしているわけではないと思い直し、やっています、じつに面白い!と答えました。

長いこと取り上げなかった、ゲームの話題。少しずつはやっていたのです。私の洋モノRPG熱を吹きこんだ「マイト・アンド・マジック」のシリーズにいま「レジェンド」という第10巻が出ているのですが、これがじつにすばらしい。パーティ編成を変え、作戦を変えて、何度も出発しています。

運動神経が鈍く年齢も来ている私は、リアルタイムのような忙しいのは苦手。ターン制にじっくり取り組みたい、というタチです。それにしてもこのゲームは、奥が深い。かなりやりこみ、マップとイベントの全貌がつかめてこないと、本当の意味での作戦が立てられません。そこにあるいろいろな可能性の選択が、悩ましく、また楽しいのですね。作る人たちもすごいなあ、と思います。

昔は麻雀が「亡国の遊戯」と言われました。今はむしろゲームでしょう。麻雀は4人必要ですが、ゲームは一人で、好きなときにできる。いい時代になりましたねえ(ちょっと、ひっかかりますが)。

ベテランの鬼手2015年05月25日 21時33分52秒

勝負事に厳しさはつきものですが、将棋の厳しさは、格別。理系的な頭脳を要求されますので、年齢による力の衰えが速いのです。ある程度の歳になると、若い棋士に、いいように負かされるようになる。対面して長時間対局するわけなので、これは辛いことだろうと思います。一時代を築いた有名な棋士も、一番下のクラス(C2)に落ち、連戦連敗になってしまうのがこの世界です。

昨日の日曜日、NHKの将棋トーナメントの対局は、それを絵に描いたような組み合わせでした。方や「貴公子」と呼ばれ、日の出の勢いの若手、佐々木勇気五段。後手をもって対するのは、歳の差30近いベテラン、藤原直哉七段。失礼ながら事実を記せば、C2に徳俵で踏みとどまっている年長者です。

冒頭のインタビューでは、「ベストフォーを目指します」と高らかにおっしゃる佐々木五段に対し、藤原七段は、「予選を勝ち抜けるとは思っていませんでした」と。少し将棋を知っている人であれば、やっぱりそうか、勝敗は見えている、と思ったことでしょう。私も、藤原さんにがんばって欲しいが無理だろうなあ、と思って観戦しました。

すると、藤原七段が隙のない差し回しで、優位を築くではありませんか。でも、終盤戦で若手の力が生きますから、どこかで逆転されることがほとんど。そういう対局を、ずいぶん見てきました。

ところが、挽回されてきたようにも見えた大詰めで、解説者もまったく想像していなかった、すばらしい手が出たのですね。龍(飛車が成った最強の駒)を玉のそばにタダ捨てする鬼手です。取ればアウト、取らなくてもアウト。佐々木五段がすぐに投了し、藤原七段の快勝になりました。ガッツポーズといきたいところですが、終わってもじっと瞑想し、喜びを示さないのが、この世界です。

私は涙が出るほど感動してしまい、今日もまだ、その余韻が残っています。こういう会心譜がテレビ放映されるなんて、棋士の勲章ですよね。藤原さん、これからもがんばってください。

勝ち負け2015年03月28日 10時41分28秒

勝負事が好きな性格は昔からですが、将棋も、勝ち負けにこだわって見ています。最終第7戦までもつれ込んだ王将戦では、郷田真隆九段の強さに感嘆。棋王戦で羽生さんを3連勝で退けたキレキレの渡辺王将を、がっぷり四つで寄り切ってしまったのですから。長考で強靱な構想をまとめ、それを貫いていくという、意志的な将棋と拝見しています。

イケメンと呼ばれる郷田さんですが、口べたというか、ずいぶん控え目な方のようですね。44歳での王将は初めてと言われてびっくり。最近では、40代の男性が子供のように見えますので(笑)。

勝ち負けと言えば、大塚家具の「骨肉の争い」も、社長様の抜きんでたイメージに惹かれて、ずっと見てしまいました(笑)。それあればこその、あれだけ大量の報道でしょう。テレビのコメンテーターなど、ぴったりではないでしょうか。教訓として、かねてから思っていたことを再確認しました。それは、一方的な批判は応援を増やすよりは減らすものであり、その傾向は感情的なものになればなるほど加速する、というものです。

そして、プロ野球!私はCSで全試合が観られる体制を採っていますが、1チーム命というわけではないので、チャンネルを回すのが忙しい。でもそれだと、試合をじっくり楽しめませんね。昨日の勝敗には納得していませんが、まあ、これからです。

今月の空き時間は、モーツァルトのピアノ協奏曲の研究に注いでいました。日曜日の講演が、ピアニストの方々相手であるためです。モーツァルトと言えば、ヴォルフ先生のモーツァルト本の翻訳を宣言していますよね。共訳をお願いした越懸澤麻衣さんのがんばりで、早くも日本語が上がってきています。なにぶんの名著なので、早く皆様にお届けできるよう、時間を見つけて取り組みます。

守りが肝要2013年11月30日 10時05分58秒

29日、忙しい仕事を終えて戻ってくると、ちょうど竜王戦が最終段階に入っていました。結果は4勝1敗で森内名人が勝ち、新竜王に。これで将棋の7大タイトルは羽生3冠、渡辺2冠、森内2冠という分かれになりましたが、もっとも重要な竜王と名人の2つを制覇した森内さんが第一人者であることは、他の2人に対する最近の戦績から見ても明らかでしょう。

感じることが、2つあります。1つは、40代に入ってからいちだんと強くなられているということ。歳を取ると棋力は弱まるという通念がありましたから、とても不思議な感じがします。「いまみんな若い」ということの反映であるとしたら、勇気をもらえますね。森内さん、羽生さんの40代に、若い人が勝てません。

もう1つは、戦いにおける守備力の重要性です。早い段階で渡辺前竜王が敵陣に、鋭く銀を打ち込みました。これが来ると勝負あった、となる将棋をいくつも見てきましたから、これは大変なのかなと思いましたが、森内名人は最善の応手で押さえ込み、手のひらの中の反乱のように収束してしまいました。

麻雀でもそうですが、手を作って攻めることは、誰でもできる。しかし守ることは高等技術です。まあそれはわれわれのレベルでの話ですが、鉄壁の守りを磨き上げるというのはたいへんな修練と忍耐を必要とすることで、その成果を目の当たりにすると、心して学びたいなあと思います。なぜなら、守りを磨くということは、自分に都合の悪いシチュエーションに対する想像力を高めることであるからです。

日体大に学ぶ2013年01月05日 23時17分43秒

箱根駅伝で特定の大学を応援し、楽しみに見ている、と申し上げましたね。私の卒業した大学、勤務した大学は、駅伝に関係なし。白状しますと、私の応援している大学は、日体大なのです。あるとき何らかの理由で好きになったのですが、その理由は覚えていません。

しかし応援の成果ははかばかしくなく、去年はタスキがつながらないという惨状。今年もマスコミの注目はほとんどありませんでした。しかし私は、案外勝負できるのではないかと思っていましたよ。主将の服部がたいへんな根性の持ち主であることは知っていましたし、その彼が、山登りに並々ならぬ自信を示していたからです。

1日目、結構好調な滑り出し。4区の木村ががんばり、東洋大と約2分差で服部にタスキが渡ったときには、これは逆転できるのではないか、と、そわそわ気分になってきました。抜いたばかりか、3分近い差を付けてゴールする快走は、ご存じのとおりです。いや~良かった。

とはいえ、総合優勝はあやしいと思っていました。東洋大、駒大に比べると復路の陣容は平凡に思え、2分35秒差では、逆転がありうると思ったからです。まず6区が危ない。例年6区は日体大の鬼門で、東洋大は主将の市川。追いつかれてしまう危険が大です。

と思っていたら、鈴木が意外な快走。その後も、平凡に思えた4年生たちがみな区間2位のピッチで、差をどんどん広げていくではありませんか。こういう勢いの原動力は、なんなんでしょう。あたかも駅伝の神様が、後ろに立っているかのようでしたね。

つくづく思ったこと。やはり失敗したときにどれだけ学ぶかが重要です。いちばん学ぶ可能性のある、ある意味では大チャンスが、失意の時。でも浪費してしまうことが多いですよね。一念発起し、ストイックな精進を重ねた日体大の学生たちは立派でした。あとあと、失敗して良かった、と振り返るに違いありません。

一方の私。新年早々こんなにツキを使ってしまって、野球が始まったら、目も当てられないことになるのでは。今朝の新聞に、WBCの山本監督がおみくじで自分の背番号と大吉を引き当て、大喜びしているとの記事が出ていました。「ぬか喜び」という言葉を思い出し、思わず寒気がしました。

カウントダウン11--強い挑戦者2009年06月03日 21時23分59秒

今日は、リフキン先生の講習会に出演してくれる学生さんたちとの試演会。《マタイ受難曲》のアリアを特集するのですが、皆さん、意気込みの伝わるいい歌を歌ってくれました。それにしても、《マタイ受難曲》を周囲の学生さんたちといっしょに勉強する日が来るとは思っていませんでした。とてもうれしいことです。

将棋の名人戦が進行中ですね。挑戦者の郷田九段が勝ち、3勝2敗で王手をかけました。ネットで見たり、一部中継を見たりしていると、ここ数局、郷田九段の強さが並々でない、と感じます。大長考の末に指した手が誰も予想していない手で、それに対して羽生名人が対応に苦慮する、という場面がしばしばあるからです。

たいへんな激闘が続いていますが、今局が郷田九段の圧勝であったということは、羽生名人の次局にとってはかえって良かったのかもしれません。あ、これも、ツキの理論ですね。

駅伝2009年01月05日 23時17分53秒

皆さんのお正月の楽しみは、何ですか。私は断然、テレビで見る駅伝です。駅伝がなかったら、三が日はさぞ寂しいだろうな、と思います。

1日に全日本実業団駅伝、2日と3日に箱根駅伝がありますね。質の高さでは実業団で、今年のデッドヒートはすばらしいものでしたが、迫力と感動においては、なんといっても箱根駅伝です。箱根駅伝で覚えた選手に実業団駅伝で再会するのも、楽しいものです。

箱根がドラマティックなのは、山登りがあるからですよね。あんな天下の険を走って上るなどということは信じられませんが(きっぱり)、無理をする分だけ差が生まれ、大逆転が起こる。「山の神」今井選手よりはるかに速く走る選手が出てこようとは、夢にも思いませんでした。

そんなわけで往路こそ箱根、と思っていたのですが、テレビの視聴率は復路の方が上なのですね。スター選手はだいたい往路に出るようなので、これには驚きました。

駅伝は日本的な競技で、外国人は違和感を感じるそうです。団体精神の極致だからでしょう。全体への責任を必死に背負いながら襷をつなぐ姿、私は大好きです。美しいと思います。

スポーツはいいですね2008年08月10日 23時33分14秒

甲子園に続いて北京オリンピックと、ついテレビを見てしまう日々が始まりました。

高校野球が面白いのは、一瞬の出来事で流れがガラッと変わり、大量点になったり、逆転になったりという意外性。昔は、負けたチームの気持ちはどうだろう、試合に出られない選手はどんなに無念だろうか、野球生活が終わってしまうのはさぞむなしいだろうな、というようにたえず感情移入していましたが、いまは、人生を長い目で見るようになっているので(笑)、冷静です。いずれにしろ、スポーツに適性をまったく持たない私は、勝ち負けに青春を賭ける人たちにあこがれるところ大です。

オリンピックで実感するのは、知らない競技がたくさんあること。でも見ていると、どれも面白いですね。バドミントンは有名競技ですが、試合を見ることはとんとなかったので、なるほどこういうものか、と興味をもちました。速度を減じて降下するという羽根の性質が、競技を支えているわけですね。遅くなるから、かなりのスマッシュでも、拾うことができる。まあしかし、ダブルスのめまぐるしいこと。誰のファンとか、そういう話はやめておきますが、しばらく楽しみたいと思います。

疲労雑感2008年06月19日 22時45分54秒

これじゃ疲れてたいへんだろうなあ、と思うことがよくあります。なにより、将棋。最高峰の名人戦などは2日がかりで、1日目は9時から夕方まで、2日目は9時から勝負がつくまで指す。多少の休憩はあるものの、正座して考え続けているわけですから、消耗度はたいへんでしょう。身体を動かすスポーツのほうが、まだいいように思えます。

羽生-森内戦などはいつもがっぷり四つの大勝負になりますから、終盤にゆくと鬼気迫るような感じになる。終了後にマイクを向けられても、いっこうに言葉が出てこない。心身が別の世界に入り込んで、戻ろうにも戻れない、という感じなのです。精根尽くす、というのはこういうことを言うのでしょうね。勝利まであと一歩、というところで羽生名人の手が震えることは、有名です。

しかもそういう大きな勝負が、次々に控えている。才能は集中力であり、そのあらわれは仕事の量でもある、という、たとえば火曜日に野平一郎さんに対して感じたことを、羽生さんにも感じずにはいられませんでした。