青山で学会2015年11月17日 08時14分51秒

今年の日本音楽学会全国大会は、青山学院大学が会場。下車駅は渋谷です。まず驚嘆したのは、環境がいいこと。チャペルを配した戸外の美しさもさることながら、校舎が立派で、近代的。エスカレーターで上り下りできる大学は、初めて見ました。学生が殺到するわけですね。

研究発表とパネルが5つ並行して進んでいますので、参加できたのはごく一部です。しかし特筆すべきは、中世ルネサンス音楽史研究会の方々による、「グイド・ダレッツォ、その虚像と実像」と題するパネル(14日)。会が長らく翻訳に取り組んでいる11世紀の音楽理論書『ミクロログス』の問題を、皆川達夫先生の発題で、5人のパネリストがテーマを分担し発表されました。

この発表(那須輝彦、宮崎晴代、石川陽一、吉川文、平井真希子)が、連携が取れている上、明晰かつわかりやすいプレゼンテーションで統一されており、みごと。皆さん、皆川先生の学風をしっかり受け継いでおられるのですね。

こういう、歴史的に重要で内容のむずかしい古典の研究を続けている会があり、50年以上を経てなお継続されているというのは、日本の音楽学の誇りと言えると思います。出版にはもう少しかかるとのことですが、楽しみにお待ちしましょう。

15日(日)の午後は、私の司会する、バッハを中心とするセッションがありました。先発はベルファストの富田庸さんで、バッハの自筆譜の新しい読み方を提案する内容でした。司会者に発表材料を期日をたがえずお送りくださったのも富田さんで、すみずみまで克明に準備されたプレゼンテーションは、模範的です。これでこそ、世界の第一線に立てるわけですね。尊敬します。来年も来てくださいね。

若手の村田圭代さん(バッハ研究)、田中伸明君(ベンダ研究)もしっかり持ち場をこなしてくれましたが、途中、発表者があらわれず連絡もない、というコーナーが出現してあわてました。事前連絡を怠った私にも、責任のあることです。そこで皆様に謝罪し、他の発表を聞きたい方はどうぞ、と申し上げた上、15分待って解散しました。

私も持ち場を離れ、隣の教室へ。そこでは、直江学美さんが日本の洋楽受容に貢献したテノール歌手、アドルフォ・サルコリの研究発表をしておられるのです。

直江さんは、私が以前ホームページを開いていた時に、「押し入れ」というページを持っておられました。ご記憶の方もいらっしゃることでしょう。国音の声楽を卒業後、郷里の金沢で准教授をしておられるのですが、音楽学会にも入会されて、サルコリの研究を進めておられます。

15分ほど覗きましたが、詳しい追跡調査の結果を堂々と発表しておられ、私はすっかり感心。プログラム上は絶対に聞けない時間割でしたから、何が幸いするかわからないものだと思いました。日本音楽学会は若い人たちが元気なのが特徴で、懇親会もにぎやかです。興味のある方に、入会をお勧めします。

【付記】青山学院で音楽を学ばれているお手伝いの学生さんたち、善意にあふれて献身的でした。ありがとう。