今月のCD~フォルテピアノ2017年02月23日 07時18分03秒

古楽に作品・演奏の両面で大きな価値を見出している私ですが、その価値観を主張しにくかった分野が、モーツァルトのピアノ・コンチェルトでした。フォルテピアノによる挑戦はずいぶん前から始まりましたが、もうひとつ透徹したものがない、あるいは味気ないと思え、講座でも、ピアノの有名どころを使うことが多かったです。

しかし最近、様子が変わってきました。製作、修復、調整といった能力の高まりで、モーツァルト時代の音が、本当に出るようになってきたように思えるのです。演奏者の習熟度も、もちろん上がっているのだと思います。

そうした意味で光っているのが、ロナルド・ブラウティハムがケルン・アカデミーと競演しているBISのシリーズです。

ソロは潤いのある響きで、ニュアンス豊かに、泉のような流れを作り出しています。オーケストラ、とくに管楽器との絡み合いの親密度が最高で、ピリオド楽器ならでは。ウィレンズという指揮者がついていますが、楽器間の直接交流がさかんでまるで指揮者がいないように見えるのは、それこそがいい指揮だ、ということでしょうか。

今月対象とした新譜は「第19番ヘ長調+第23番イ長調」と、「第20番ニ短調+第27番変ロ長調」の2枚。カップリングの魅力は後者でしょうが、私は前者を選びました。20番のロマンツェだけは、まだどうしてもピアノが欲しくなるのです。

その後「第18番+第22番」と、「第14番+第21番」が発売されました。今週土曜日の横浜モーツァルト講座が第18番、第19番を扱いますので、ちょうどいいタイミングで入手できました。

劣らずよかったのが、イザベル・ファウストの弾くモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集(ハルモニアムンディ)です。

オケがアントニーニ指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコというので鳴らすまでイメージがつかめませんでしたが、洒落っ気も茶目っ気もあって、断然面白いです。シュタイアーの新作カデンツァが使われているのも、クリエイティヴ度を高めています。作品への大きな貢献でしょう。