今月の「古楽の楽しみ」--シュッツ(日にち修正済み)2017年02月03日 00時31分46秒

宗教改革特集で開始された、私担当の「古楽の楽しみ」。2月はその続編で、シュッツです。コラールとその編曲という庶民路線で始まった、ルター派地域の音楽。そこに芸術的な高踏性をもたせたシュッツは、初期バロックの偉大な存在です。

シュッツの特集は4年ぶりですが、今回は、前回とダブらないプログラムを基本にしました。シュッツの作品はすべて声楽ですから、一息ついていただくべく、シャインとシャイトの器楽曲を含めました。したがって、初期バロック「3S」の特集としても聴いていただけます。

第1日(13日、月)は、《ダビデ詩篇曲集》から3曲(ラーデマン)と、《小宗教コンチェルト集Kleine Geistliche Konzerte》の、第1巻から3曲、第2巻から2曲。前者はレミー指揮、ミールツ他の新しい演奏ですが、第2巻には1960年代のマウエルスベルガーの演奏を使ってみました。ソロがシュライヤーとアダムで、両大歌手がシュッツを基礎にして出発していたことがよくわかります。小編成の渋い曲を、じつに粛々と演奏しているのです。

第2日(14日、火)は、《シンフォニエ・サクレ》全3巻から抜粋しました。器楽の華やかな、カンタータ風の音楽です。演奏は第1巻がウィルソン、第2巻がメッソーリ、第3巻がユングヘーネルです。一番聴きやすい日だと思います。

第3日(15日、水)は、最高傑作と言ってもいいであろう《宗教合唱曲集Geistliche Chormusik》と、晩年の作品。演奏はラーデマンで進め、最後の《マニフィカト》を、クイケンで出します。

第4日(16日、木)は、未使用素材という枠を外し、シュッツ入門には最適の《十字架上の七つの言葉》で開始しました。今回の演奏は、ユルゲンス指揮の歴史的名盤です。イエスのエグモントと、オルガンのレオンハルトがすばらしいです。

シュッツは、気に入った聖書の歌詞を何度も作曲する傾向があります。マニフィカトもそうでうが、シメオン賛歌〈主よ、いまこそ私を〉も、劣らずです。これを3曲聴き、《音楽による葬儀》の同曲で、締めくくることにしました。そこではこのテキストが、シュッツの好きなもう一つのテキスト、「死者は幸いである」と結びつくのです。演奏は、ザ・シックスティーンです。

最終形を獲得するまで、かなりの試行錯誤を強いられる企画になりました。今回、4回のうち2回を新人ディレクターが担当したのですが、彼女がニュー・グローヴのシュッツ項目をコピーし、カラー・マーカーでびっしり勉強しているのを見て驚嘆。努力は人生で一番大切なものだと思いますし、けっして嘘をつかないものです。すばらしい戦力を得て、いい番組を作りたい気持ちがますます強くなりました。

たのくら30周年2017年02月04日 23時34分42秒

先月の21日(土)になりますが、立川でやっている「楽しいクラシックの会」の30周年記念パーティがありました。月1で、30年。それだけでも「よくまあ」と思いますが、ここがすごいのは、パーティのたびに、記念文集を作っていることです。なんと5冊目。170ページにわたって、会員のエッセイや記録、写真などが載っています。


こういうことができるのは、会が上からではなく、下からの運営をしているため。会員がみな持ち回りで役職を担当し、わけへだたのないコミュニティが形成されているのです。私も、一番くつろいでお話しできるのがこの会です。

パーティも会員の熱心な準備で実現され、盛りだくさんのプログラムでした。一流ホテルで行われ、いとも盛大でしたが、ホテルの誘導があったせいか、お行儀のいいイメージの会になったのが、個人的には残念。今度は絶対、砕けてやりましょう。その目標もできましたので、とりあえず35周年を目指して、いい会にすべくがんばります。

そのおり、「古稀クイズ」というのをやりました。その中から選んで、皆さんにも出題します(次回)。

古稀の心境を問う2017年02月06日 22時55分52秒

「たのくら」の30周年パーティで、クイズをしました。題して、「古稀記念クイズ」。最近の私の心境を、クイズ仕立てにしたものです。

10問出しましたが、9問当てた人が1人いたのには驚きました。8問が1人。半分当たるかどうかが、だいたいのところだったと思います。正直な設問ですが、外れて欲しいと思って出題しています(笑)。最後の3問をご紹介しますので、よろしければ、考えてみてください。コメント歓迎します。

〔第1問〕
今までの人生で一番苦労したと思っていること
 1.外国語の習得
 2.締め切りの遵守
 3.会議への出席

〔第2問〕
今、世に実在すると思うものは
 1.聖女
 2.安息
 3.縁

〔第3問〕
あるといいなあと思うものは
 1.タイムマシン
 2.若返り薬
 3.人生を終えるスイッチ

謹んで正解を発表します2017年02月08日 23時41分06秒

皆様、ご回答ありがとうございます。楽しんでいただけたようでなによりです。

7名の方からご回答をいただきました。この中に、全問正解の方が1人、全問外れの方が1人おられます。2問正解が4人、1問正解が1人です。ということは、相当当てられた、ということですね。

〔第1問〕
今までの人生で一番苦労したと思っていること
 1.外国語の習得
 2.締め切りの遵守
 3.会議への出席

正解は「1」です。「2」の締め切りは、割に守ってきた方ではないかと思います。「3」の会議は、心からいやだ、というほどではありませんでした。「1」は、筆舌に尽くしがたい苦労をしたという実感があります。外国人恐怖症を克服しなくてはなりませんでしたし、どんなにがんばっても、理想にはとうてい届きませんから。

ここでもう、勝ち残りが2人になりました。

〔第2問〕
今、世に実在すると思うものは
 1.聖女
 2.安息
 3.縁

正解は「3」です。これは5人正解でしたね。「聖女」に関しては説明が要りますので、次の更新ででも。「縁」は本当にあると実感しています。

ここで勝者が決まりました。

〔第3問〕
あるといいなあと思うものは
 1.タイムマシン
 2.若返り薬
 3.人生を終えるスイッチ

正解はこれも「3」です。やはり5人正解でした。私は過去を悔いるたちなので、若返り薬でもう一度というのは論外。タイムマシンも過去への旅ですよね。ただこれは、バッハやモーツァルトに会いたいのではないか、と選んだ人がかなりおられたようです。私、バッハにもモーツァルトにも会いたくないですよ。音楽で十分。安らかな満足感に恵まれた日にスイッチに手を伸ばす、なんていいかな、と思います。

というわけで、全問正解されたばかりか、きわめて適切にコメントされた歌人、久美さんの慧眼に敬意を表します。ほりっぺ君も、もう一息でしたね。全問不正解は、中世研究者の優さんでした。ああ。

300☓4=12002017年02月12日 22時24分32秒

生活に、一変した部分があります。

小さい頃から運動神経がまったくなく、スポーツ全般が、苦手でした。適度に運動しなくてはと思うものの、急に始めることができるわけもなく、せいぜい歩くことぐらいが関の山でした。

ところが--。わが家に生まれた若干の空間に、トランポリンがやってきたのですね。健康器具です。やってみると、これが意外に気持ちがいい(笑)。なによりいいのは、密室で、誰にも見とがめられずにできることです。ジョギングとは、わけが違います。

そこで、一度に300回、飛ぶことにしました。100回までは、なるべく背筋を伸ばして飛ぶ。200回までは、なるべく高く飛ぶ。300回までは、肩を動かして飛び、300回に近づいたら、ジャンプを大きくする。

家に一日いるときには、これを4回繰り返すと、1200回になります。まずまずの運動ではないでしょうか(今日もやりました)。気のせいか、始めてから身体の調子が良く、整体のお店でもほめられました。

肩と肩甲骨は同義語だと思っていたのですが、違うそうです。それが実感できるまで、がんばりたいと思います。

「安息」考2017年02月16日 16時44分33秒

過日の三択問題(聖女・安息・縁のうち、どれが実在すると私が思っているか)について、、簡単に注釈しようと思いました。しかしいざ書こうとすると、むずかしいのです。

「縁」は本当にあるなあと思う昨今なので、考えるべきは、残りの二択。ありそうだがどうやらない、あるいは、あって欲しいがないと思わざるを得ない、と私が思っている2つのものです。

「安息」は、誰でも、つねに求めているものですよね。私もそう。ゆっくり休みたいなあとか、温泉に行きたいなあとか、いつも思っています。

でも現実にそれを求めて行動しているかというと、そうではない。休もうと思えば休めないわけではないが、考えてみると、休まないことを自分が選択しているわけです。横になりたい時もありますが、少し横になっていると、時間がもったいないような気がしてきて(貧乏性の一語)、起きてしまう。多分、起きることができなくなるまで、そうするんじゃないかと思います。

となると、究極のゴールとしての安息は、死しかあり得ないことになります。バッハのカンタータが述べているとおりです(笑)。

しかし死んでしまったら、自分が安息にあるかどうかわかりませんよね。ということは、死を安息として受け入れる気持ちを整えるということが、生前に安息を予感できる唯一の方法、ということになるのではないでしょうか。

そういう安息を知りたいと思います。

答のない「聖女」考2017年02月18日 09時17分28秒

さて、三択の冒頭である「聖女」です。この概念は、あるいはマスコミの言うpolitical correctnessに抵触するのかもしれないですが、私の中では、輝きのあるものの一つです。

そこで、「聖女にもっとも近いと(私が)思う人は誰か」という三択問題を、当初考えました。しかし、これが難航。考えれば考えるほど、「聖女とは何か」という哲学的な問題が立ちはだかってきて、わけがわからなくなってしまうのです。わけがわからないのでは、実在を信ずるに至りませんよね。

でも会の方々はどう思うのだろう。興味をもった私は、「皆さんにとってもっとも聖女に近いと思われる人は誰か」という逆問を作り(「ずるい!」という声あり)、クイズに挿入しました。三択候補は有名人からと考えて、高峰秀子、吉永小百合、本田真凛としました。

しかしこれだと答が偏るかもしれないと思い、「吉永小百合」を「壇蜜」に変更。強いてキーワードを挙げると、高峰さんは求道者の要素、壇蜜さんは秘められた知性の要素、本田さんは天真爛漫の要素、ということになるでしょうか。

票は高峰さんに集まりましたが、本田真凛さんを知らない方が何人かおられたのにはびっくりしました。もはやスーパースターだと思っていましたが・・。

定義をしようとするからいけないので、イメージの問題だと割り切るべき、という意見もありそうです。そう思ったら、先般の《ヴェスプロ》で活躍しているグレース・デイヴィッドソンさんの姿が浮かんできました。なぜだろう。でもそれを分析しようとすると、定義に戻ってしまいます(笑)。

写真2点2017年02月21日 00時47分37秒

最近の写真を2点、公開します。


これは、新大阪駅のレストラン、パシオン・エ・ナチュールで、18日(土)、マーク・パドモア+ティル・フェルナーのシューベルト《美しき水車屋の娘》の終了後に。

私は一応大阪音大の客員教授ですので、2人は同僚です。コンサートを聴いてくれた同業の西村理さん(左)が、片岡リサさん(右)を呼び出してくれました。元気いっぱいの片岡さんは受賞積み重なりの箏奏者。3月6日のいずみホール「ランチタイム・コンサート」に出演されるので、いいご挨拶ができました。

私の左は、シューベルト研究者の堀朋平君。ホールのシューベルト・シリーズに協力していただいていますが、この日の解説、字幕も抜きんでたレベルのもので、すばらしいコンサートを、いっそう盛り上げてくれました。《冬の旅》の字幕は私のでしたが、それがはっきり色褪せて思えました。嬉しい乾杯でした。


こちらは、13日(月)に、モーツァルト愛好会の方々と催した懇親会。右手前が、高橋会長です。

全員男性で私を含め年配の集まりでしたが、モーツァルトの突っ込んだ話続出で、盛り上がりました。皆さん、ありがとうございました。お店は、新宿歌舞伎町のHeart Dining' Bar & K。長いこと新宿で食事をしてきた私が、最近ようやく見つけた名店です。

今月のCD~フォルテピアノ2017年02月23日 07時18分03秒

古楽に作品・演奏の両面で大きな価値を見出している私ですが、その価値観を主張しにくかった分野が、モーツァルトのピアノ・コンチェルトでした。フォルテピアノによる挑戦はずいぶん前から始まりましたが、もうひとつ透徹したものがない、あるいは味気ないと思え、講座でも、ピアノの有名どころを使うことが多かったです。

しかし最近、様子が変わってきました。製作、修復、調整といった能力の高まりで、モーツァルト時代の音が、本当に出るようになってきたように思えるのです。演奏者の習熟度も、もちろん上がっているのだと思います。

そうした意味で光っているのが、ロナルド・ブラウティハムがケルン・アカデミーと競演しているBISのシリーズです。

ソロは潤いのある響きで、ニュアンス豊かに、泉のような流れを作り出しています。オーケストラ、とくに管楽器との絡み合いの親密度が最高で、ピリオド楽器ならでは。ウィレンズという指揮者がついていますが、楽器間の直接交流がさかんでまるで指揮者がいないように見えるのは、それこそがいい指揮だ、ということでしょうか。

今月対象とした新譜は「第19番ヘ長調+第23番イ長調」と、「第20番ニ短調+第27番変ロ長調」の2枚。カップリングの魅力は後者でしょうが、私は前者を選びました。20番のロマンツェだけは、まだどうしてもピアノが欲しくなるのです。

その後「第18番+第22番」と、「第14番+第21番」が発売されました。今週土曜日の横浜モーツァルト講座が第18番、第19番を扱いますので、ちょうどいいタイミングで入手できました。

劣らずよかったのが、イザベル・ファウストの弾くモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集(ハルモニアムンディ)です。

オケがアントニーニ指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコというので鳴らすまでイメージがつかめませんでしたが、洒落っ気も茶目っ気もあって、断然面白いです。シュタイアーの新作カデンツァが使われているのも、クリエイティヴ度を高めています。作品への大きな貢献でしょう。

3月のイベント2017年02月26日 20時35分55秒

2月の短さへの実感は、終わりに近づくにつれ加速度的に増していきますね。そこで、少し早めに、来月のご案内です。

原則第1・第3水曜日としている朝日カルチャーセンター新宿校の講座、今月は1日(第1)と29日(第5)になります。10:00からの「オペラ史初めから」は、モンテヴェルディ《聖母マリアの夕べの祈り》のパート2、パート3。4種類の映像を交えてお届けします。バッハの「最新録音」講座は、1日が《フーガの技法》、29日がパルティータ第6番ホ短調です。

朝日カルチャーは立川講座(駅ビルルミネ)が定番化しそうです。11日(土)10:30~12:30は《ゴルトベルク変奏曲》をやりますので、近隣の方はどうぞ。これは「聴き比べによる名曲探訪」と謳っていますが、以後、私の「名曲談義」という形で続けていこうかと思っています。

12日(日)は、立川市錦学習館で、「楽しいクラシックの会」例会(10:00~12:00、《カルメン》その2)。午後(14:00から)は、年に一度の「錦まつりコンサート」です。今年は「メゾソプラノってすばらしい!Part2~なつかしい世界の歌、日本の歌」として、名花、井坂惠さんにご登場いただきます。ピアノは久元祐子さん、14:30から、入場無料です。登場する作曲家だけ挙げておきます。ショパン、モーツァルト、リスト、シュトラウス、ヴォルフ、シューベルト、山田耕筰、中田喜直、高田三郎、團伊玖磨。お待ちしています。

17日(金)はいずみホール・シューベルト・シリーズの最終回。アンドラーシュ・シフが、ピアノ・ソナタ第20番イ長調、第21番変ロ長調を演奏します。作品といい演奏者といい、自信をもってお薦めできるものと考えています。

いずみホールには続いて、スイスのオルガニスト、ジャン=クロード・ツェーンダーさんが登場され、19日(日)にマスター・クラス、20日(月)にバッハ・オルガン作品全曲演奏会vol.10を開催されます。

コンサートは16:00からで、「罪の深淵・救いの慰め」と題し、ホ短調曲を中心としたプログラムになっています。出演者のグレードが知名度にかかわらず高い、という印象を与えてきたこのシリーズかと思いますが、今回は、演奏者としても研究者としても世界の尊敬を集めている巨匠です。すばらしい笑顔をお持ちの先生に、しっかりインタビューしたいと思います。

これと重なるように、国際音楽学会(IMS)の世界大会が、東京藝大で開催されます。詳細はこちらをご覧下さい。http://ims2017-tokyo.org/jpn_front/ 盛りだくさんの内容で、じつに大勢の方が来日されます。準備の方々、お疲れさまです。

25日(土)は、朝日カルチャーセンター横浜校のモーツァルト講座。ピアノ協奏曲の勉強が私にもたいへんためになっていますが、いよいよ、第20番ニ短調となります。そもそもモーツァルトにとって短調とは、というところから始めるつもりです。

「古楽の楽しみ」はバッハのカンタータです。あらためてご案内申し上げます。