1月のイベント2018年01月09日 21時27分19秒

再びご案内です。1月のイベントは、この週末から始まります。

朝日カルチャー横浜校のモーツァルト講座が、今月は第4週から第2週に移動しています。内容はモーツァルト《ハ短調ミサ曲》の第2回で、その後半です。

移動の理由は、埼玉ヴォーカルアンサンブルコンテストの審査員をするためです。コンテストは、室内合唱が楽しめる催し。14日、27日、28日に久喜で行われます。大学生の時住んでいた蓮田の近くです。

17日と31日(水)が朝日カルチャー新宿校。10:00からの「オペラ史初めから」が「ウィーンのバロック・オペラ」と「ハンブルクのバロック・オペラ」、13:00からの「新バッハ作品探訪」が、「マルコ福音書とカンタータ」、および「マタイ福音書とカンタータ」となります。今期は、4つの福音書の違いがカンタータにどう反映されているかをテーマとします。

20日(土)は立川の「たのくら」で、私の意外と好きなヤナーチェクを取り上げます(《死者の家から》)。

いずみホールでは、23日(火)と24日(水)に、イザベル・ファウストのバッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータの全曲コンサートを行います。私も参りますのでお会いしましょう!

新年の「古楽の楽しみ」--祈りを集めて2018年01月05日 21時52分29秒

年頭にあたりふさわしい企画を、と考えましたが、日本のお正月にばっちりはまる古楽は思い当たりません。そこで、1月は、「祈り」の音楽を特集しました。宗派を超えたイメージで聴いていただければと思います。

8日(月)は、「祝福の祈り」です。祝福の祈りがテキストにたくさん出てくるのは、詩篇曲。クロード・ル・ジューヌ、シュッツ、ヨハン・ルートヴィヒ・バッハの詩篇曲をまず聴き、ヨハン・ルートヴィヒ・バッハのカンタータを経て、バッハ《ロ短調ミサ曲》の〈ベネティクトゥス〉+〈オザンナ〉で締めくくります。ルートヴィヒのカンタータはバッハがライプツィヒの礼拝で上演したもので、たしかにそれに値する作品です。

9日(火)は、「平和の祈り」。これは事実上、三十年戦争とヴェストファーレン条約にかかわる作品の特集になりました。作曲者はキンダーマン、シュターデン、ヴィートマン、シュッツ、ヘルプストで、嘆きの曲と喜びの曲が、歴然としたコントラストで並んでいます。勇士グスタフ・アドルフの死に捧げる曲も2曲。締めはもちろん、《ロ短調ミサ曲》の〈ドーナ・ノービス〉です。

10日(水)は、「憐れみの祈り」。このレパートリーは、古楽には豊かです。詩篇のテキストによるラッスス、ドゥラランド、バッハ(=ペルゴレージ《スターバト・マーテルの編曲)の作品を一部抜粋の形でご紹介し、最後を《ロ短調ミサ曲》の〈アニュス・デイ〉で締めくくります。

11日(木)は、「快癒の祈り」。このテーマに特化した作品はありそうで少なく、選曲に苦労しました。最終的なプログラムは、ヴェックマンのモテット、クーナウの聖書ソナタから(第4番〈瀕死のヒゼキヤとその快癒〉、ハマーシュミットの詩篇曲、バッハのカンタータ第25番(この世を病院にたとえる)、《ヨハネ受難曲》第2稿の冒頭合唱曲となりました。

12日(金)は、「安らぎの祈り」。ラテン語の「パークスpax」は平和とも平安・安らぎとも訳せますが、死と向き合う内面指向の曲をこちらに集めました。ジョン・シェパードのレスポンソリウムのあと、シメオン頌歌を4曲(パレストリーナ、バード、クリストフ・ヴェルナー、ブクステフーデ)。シメオン頌歌はコラールにもなっていますので、こちらはバッハの和声付けと、ブクステフーデのカンタータで。最後に、イエスの慰めの言葉に付曲したヴェックマンのバス独唱カンタータを置きました。

こうご案内してみると、とんでもなく地味な週になりそうです。しかししみじみと心に染みる曲がいくつもありますので、気軽にお聴きください。いくつかの新録音を含めて、演奏には適材適所を心がけました。

2018年を迎えて2018年01月04日 00時17分35秒

皆様、明けましておめでとうございます。年賀状はこれから投函するところですが、こちらで先にご挨拶いたします。皆様のご訪問、たいへんにありがたく、今年もどうぞよろしくお願いします。

2018年の目標や仕事の計画を、あらましお伝えさせてください。今年の最大の目標は、提出した博士論文に基づいて(その成否はともかくとして)、《ヨハネ受難曲》に関する著作を出版することです。同時に、旧著『マタイ受難曲』の改訂版を準備します。ヨハネ研究を通じて得た知見を、マタイにも及ぼしたい、という思いからです。詳細については、進展をお待ちください。

《ヨハネ受難曲》に関する連続講座は、早稲田エクステンションセンター中野校で、春秋の通年でやることにしました。朝日カルチャーの横浜校では、モーツァルト講座を続けます。新宿校では、バッハのカンタータを系統立ててやろうかと考えているところです。今年のライプツィヒ・バッハ祭もカンタータがテーマですが、藝関連のシンポジウムと重ならないことがわかりましたので、朝日旅行社のツアーに参加することにしました。

合唱コンクールの審査は今年も入っており、全国大会も含まれています。積んできた経験をなんとか生かせれば、という気持ちです。

いずみホールの2018年度には、好きな方には驚いていただけるような勝負企画を準備しました。発表が楽しみです!

2017年を回顧する2017年12月31日 00時05分29秒

毎年自分なりの10大ニュースをまとめていますが、今年は順位でなく、時間軸で整理することにしました。もちろん1位は、博士論文を書いたことです。しかしそれ以外には、順位をつけることがむずかしいのです。

(1)この3月で、聖心女子大・國學院・ICUの非常勤講師を退任。大学での授業は、すべて終了しました。(ずいぶん前のことのような気がします。)

(2)6月10日に、藝術学関連学会連合のシンポジウムを神戸で開催。来年6月にもう一度開催して、会長を退任します。

(3)その翌日から、ライプツィヒ・バッハ祭へ。モンテヴェルディの《ヴェスプロ》が頂点をなす音楽祭を同行の方々と満喫し、その後、北ドイツの北海沿岸を訪れました。

(4)NHKの「古楽の楽しみ」、今年は音楽史を広く見る特集を多くやりました。もっとも印象に残っているのは、6月の聖母マリア特集です。

(5)6月に雄犬「陸」が死に、7月に雌犬「レーナ」がやってきました。バッハと同じ誕生日だけあって、勤勉・努力型の犬であると感じます。彼女が最近熱中していることがあり、またご報告します。

(6)9月、大阪のいずみホールで、「ウィーン・ムジークフェスト」を開催。実力派のピアニスト、ブーフビンダー氏の際立った存在感により、充実の催しになりました。

(7)10月上旬に博士論文「バッハの《ヨハネ受難曲》―その前提、環境、変遷とメッセージ」を完成、提出しました。審査は年明けになります。大詰めの8月、9月は机に向かって集中する日々でした。

(8)朝日カルチャーの仕事を新宿と横浜でたくさんさせていただきましたが、10月から早稲田のエクステンションセンターに出講、上智大学のシンポジウムにも参加しました。毎回配付資料を作成し、できるかぎり準備して臨みました。

(9)全日本合唱コンクール全国大会の審査員を、10月に大阪、11月に東京で務めました。至りませんが、熊本、新潟の県大会にも初めてお邪魔しました。

(10)12月10日、15年続けたすざかバッハの会の連続講義にピリオドを打ちました。子供の頃を過ごした千曲川沿岸を定期的に訪れ、ずいぶん命の洗濯をさせていただきました。

こうして回顧すると、今年も大切な年だったなあと思います。お世話になった多くの方々に、心より御礼申し上げます。皆様、どうぞよいお年をお迎えください。

オペラ史の概念をくつがえす--今月のCD2017年12月28日 21時27分24秒

今月はすばらしいものがありました。ラファエル・ピションとピグマリオンが、「愛の蕩尽!」と題して、フィレンツェ・メディチ家の祝宴でオペラがまさに花開こうとする瞬間を復元したのです。今年のライプツィヒにおけるモンテヴェルディ《聖母マリアの夕べの祈り》の感動をまざまざと蘇らせる圧巻の出来映えで、本当のオペラはモンテヴェルディから、という認識に修正を迫ってきます。

1589年に上演された『ラ・ペレグリーナ』というドラマの幕間劇をベースに、由来さまざまな音楽を創造的に組み合わせて、4つの音楽劇が生み出されています。題して、「愛の帝国」「アポロの物語」「オルフェウスの涙」「高貴な恋人たちのバレエ」。

作曲家はファンティーニ、カッチーニ、マレンツィオ、マルヴェッツィ、ガリアーノ、ペーリ、カヴァリエーリ・・などなどの人たちで、ただ、モンテヴェルディだけがいない。しかし音楽はほとばしるような生気にあふれ、気宇壮大で、和声感も見事。この思い切りのよさこそ、古楽の最先端なのです。

カッチーニやペーリはいままでミニアチュアのように思っていましたが、それが古楽的でありながら、壮麗といいたいほど立派に聞こえるのですね。どの時代の音楽にもそれ自身のベストがあって、演奏によってそれが少しずつ発見されているのだ、という感じがします。

リュリ以前のフランスの音楽劇を再現したドセのCDで、似たようなことを書きました。同じハルモニアムンディの、縦長ケースのシリーズに属する新譜です。詳細な台本と解説の詳細な日本語訳がついていますから、ぜひお薦めします。

綱渡りの仕事納め2017年12月25日 23時09分23秒

23日(土)が、今年の仕事納めでした。私が朝から緊張していたのには、2つの理由があります。1つは、午前中の朝カル新宿校の講座が、「光と闇(ないし影)」という分野横断の特別講座で、かなりのお客様が予想されたこと。もう一つは、午後に横浜校の定例のモーツァルト講座があり、時間内に移動できるかどうか、危惧されることでした。

新宿を12:00に終え、横浜を13:00に開始するためには、12:15の東海道線に乗車することが条件になります。過去に一度成功したことがありますが、カルチャーは駅から西、ホームは東端の1番線ですから、決死的に急がなくてはなりません。

とにかく、10時ぴったりに講座を開始することが先決です。しかし運が悪いのですね。中央線が事故で、しばらく止まってしまったのです。もう間に合わない時間でしたが最善を尽くそうと思い、動く歩道のところまで走りました。都庁に向けて3本の動く歩道があり、それでかなり時間を短縮できるのです。

ところがところが。この日は休日で、歩道が止まっているではないですか。ガックリきましたが、できるだけ急ぎ、なんとか5分遅れで開始することができました。

この日は、長調と短調の違いを、音階、和音、カデンツで学習し、その使い分けや相互乗り入れをさまざまな実例で鑑賞し、最後に、「短調を長和音で終える」ピカルディ終止の味わいを体得していただく、というメニュー。厄落としをしているので講座は快調に進み、質疑応答では、じつにたくさんの手が上がりました。

これはとても嬉しいことでしたが、必然的に移動が遅れ、横浜は結局13:10スタートとなって、延長で処理させていただきました。横浜の皆さん、ごめんなさい。

充実という点では、間違いなく今年指折りの一日。しかしものすごく疲れました。足をひきずって帰る姿は、人に見せられなかったです。

計算がたいへんで・・・2017年12月24日 15時33分10秒

今年の仕事も、大詰め段階。22日(金)は、NHK「古楽の楽しみ」録音の最終日でした。

番組の準備には、かなり手間がかかります。手間の度合いは条件によって異なりますが、まちがいないのは、専門から離れるにしたがってたいへんになること。最近のように「・・の歴史」といった企画を立てると、離れたところから出発せざるを得ず、課題が多くなります。

予備知識が少ないですから、どんな曲があるか、どんな録音があるか、というところから始まり、集まった素材から趣旨にマッチするものを選び、それらを時代を追って、あるいは地域を経めぐる形で、並べてゆく。枠組みは「54分40秒」。少し短くても終了テーマが肩代わりしてくれますが、超えてしまうとアウトです。

歴史を遡るほど曲は短くなるので、たくさんの組み合わせが必要になります。候補曲のどれとどれを組み合わせるかは、最初は音楽的な問題ですが、進むにつれて、足し算引き算という数学的な問題になってゆきます。

私が計算に強ければ、それもまた、シンプルな作業でしょう。問題は、私が計算に弱い、しかも日々弱くなっている、ということにあるのです。間違った計算を含む形で帳尻合わせをしてしまうと、曲を差し替え、解説を書き換えなくてはなりません。そしてそれが、いつもの作業なのです。

準備したCDを郵送した後、メールでディレクターに解説原稿を送ります。すると、その段階で計算間違いを指摘される頻度が、じつに高い。原稿に大ナタを振るって帳尻を合わせたのに、じつは前の形でよかったのだ、などということになると、目の前が暗くなります。しかしまた、「ジャケットには7分と書いてありますが、計ってみたら11分でした」、といったケースも、まれにあるのです。そうなるともちろん、根本的な再検討を迫られます。

今回もそうしたことが起こりましたが、なんとか3本を録音しました。目下、「変奏曲の歴史」というシリーズを準備中です。

終了後、サントリー芸術財団の忘年会へ。私は三宅幸夫さんの思い出話をして、献杯をするという役回りでした。最近はいつも書いたものを持つのですが、今回は紙に書くタイミングを失し、まあ大丈夫だろうと、ぶっつけで本番へ。

そうしたら、計画した話の段取りを思い出せず、2回、立ち往生してしまいました。やはり、書いておかなくてはダメですね、この歳になると。

立食の会合では飲みながら歓談に専念し、帰路ラーメンを食べるのが、いつものことです。この日もそうしようと思い、スイカのチャージをしてから地下鉄に乗りました。その結果財布が空になったため、銀行でお金を下ろしてからお店に入ることにし、吉祥寺で下車しました。

そうしたら、銀行のことなどすっかり忘れて、お店に入ってしまったのです。はっと気がつき、カードが使えるといいが、と、心でお祈り。レジでは案の定「うちはカードは取り扱っておりません」とのことで、うなだれた私はいったん店を出てお金を補充し、お詫びして支払いをしました。

こんなことばかり書いていますね。自分は果たして大丈夫なのかな、と思うことの多い、この師走です。

カラオケで懇親会・新宿篇2017年12月21日 22時53分52秒

20日(水)には、朝日カルチャーのオペラ・クラスとバッハ・クラス合同の懇親会が予定されていました。講座の終了後です。

ところが、新宿で降りる頃、財布がないことに気づいたのです。持たないで出てきた可能性大ですが、落とした、掏られたという可能性も排除できません。歯医者に持っていった金一封を持ち越していたので、お金は何とかなりそうでした。

講座修了後、幹事さんの予約しておいてくれたカラオケへ。ただし横浜のような純粋のカラオケではなく、パーティスペースを兼ねた、パセラというお店です。部屋がちょうどいい広さで話しやすく、「懇親会はカラオケで」という横浜路線が実証される形になりました。やっぱり懇親会、必要ですね!皆さんとの間がぐっと近くなり、楽しかったです。

終了後有志で、歌舞伎町のHeart Dinin'Bar &Kへ。このお店、いったん店じまいして、その後再開したと聞いていました。しかし訪問は初めてです。食事メニューが簡素化されたようですが、飲む空間として快適なのは相変わらず。お薦めできると思います。

帰路がぜん気になってきたのは、財布が家にあるかどうかということです。前話のままですから現金は入っていませんが、カードは何枚も。紛失したとすると、処理が面倒です。しばらく探しましたが見つからず、あきらめて就寝しました。

今朝捜索を再開したところ、思わぬところから発見し、ほっとしました。思わぬところというのは、灯台もと暗し、という意味です。暗さは相当で、やっぱり、老衰のきざしありのようです。

付記:Apple IDを使用してiCloudにサインインした、というメールが来ました。アカウントを保護するためにIDはロックされている、という文面で、「アカウント情報を見る」というリンクがあります。私がiPhone6でログインするはずはないのですが、誰かが悪用したのかと思ってリンクをクリックしたところ、セキュリティが搾取のサイトだと表示してくれて、事なきを得ました。皆さん、ご注意ください。

私、老衰?2017年12月19日 22時58分33秒

実話ですが、ありがちなことかどうか。

月曜日に歯医者に行く際、診察券の発見に手間取りました。名刺の間から無事発見し、近くの医院へ。ところが、保険証は提示できたものの、診察券が見あたらないのです。財布の中身を全部出して調べましたが、なし。発見はしたが、家に置いてきた、ということのようです。

なじみのお医者さんなので、大丈夫ですよということになり、チェアへ。その時シャツの胸ポケットに入れたかもしれないと思い至り、調べるとありました。保険証を出した財布に入っているとばかり、思い込んでいたのです。

治療の最中に、お金が足りるかどうか、不安になってきました。日曜日にCDを購入してお札がなくなっていましたので、仕事でいただいた交通費の封筒をもってきたのですが、入っている千円札は4枚だけ。微妙なところです。足りないときにどうするかのシミュレーションを頭の中でしながら、治療を受けました。

チェアに乗るさいメガネを外しましたが、終わったら見つかりません。どこかに置いたのですが、と言っても、ありませんというお返事。探しているとアシスタントの方が、ポケットではないですか、とおっしゃいます。たしかに、上着の内ポケットに入っていました。普通、ここにメガネは入れません(と思う)。

支払いは、3000円台でセーフ。しかし帰宅してみたら、日曜日にいただいたギャラが、ポケットに入っているではありませんか。心配する必要は、まったくなかったのです。

われながら失笑する一連の経緯ですが、歯医者さんサイドから見れば、いよいよこの人も、ということになりそうです。特定の「症」に、歩みを進めていなければいいのですが・・。

オペラ漬けの週末2017年12月18日 01時26分07秒

この週末は、オペラ漬けになりました。

16日(土)は、毎年1回ずつ続けている、いずみホール・オペラ。河原忠之さんのプロデュースによるシリーズが、今年で一区切りになりました。2011年からの7年間でなんと3回も賞をいただいたのは、ホールとしてはありがたいかぎり。河原さん以下、ご協力いただいた皆さんに御礼申し上げます。

今年の演目がドニゼッティの《愛の妙薬》になったのも、平素の企画になかなか入れられないでいただけに、ありがたいことでした。合唱とオーケストラが大阪(大阪音大のザ・カレッジ・オペラハウス)、歌い手が各地からの寄り合い--今回は大阪(石橋栄実、田邉織恵)、名古屋(中井亮一)、東京(黒田博、久保田真澄)から--というのが、基本的な形態。オペラをやることなど少しも考えずに設計されているホールですからさぞやりにくいだろうと思いますが、その空間をもれなく使い、合唱を効果あらしめる粟國淳さんの演出は、さすがです。

東京からもぜひ観に来ていただきたいなと思うのは、大阪のプリマ、石橋栄実さんがますます輝きを増しているからです。アディーナは初役だそうですが、フロアでは、その美しさに賛辞が集中。音楽面も含めて、私もまったく同感です。つねに誠実に勉強され、崩れたところがないのです。

17日(日)は、立川の「たのくら」(楽しいクラシックの会)で、《フィデリオ》の勉強2回目になりました。第2幕のあと、4つの序曲を年代順に鑑賞。これは、興味深い経験でした。終了後は皆さんが感想や質問を述べられるのですが、今回は、ベートーヴェンのオペラ作法に疑問を呈する意見が次々に述べられ、ディスカッションに発展。皆さん、ご意見をお持ちなのです。

夜は、NHK音楽祭の《ワルキューレ》にチャンネルを合わせました。評判どおり、白熱の名演奏でしたね。ミュンヘンのオペラ・ハウスでサヴァリッシュ指揮の全舞台作品演奏に接したのは大切な思い出ですが、どうやら、昔は良かった、などとは言ってはいられないようです。昔は、フォークトのようなテノールはいませんでしたから。それを含め、最先端の演奏であったと思います。