面白い!芥川賞選考会2012年08月28日 15時02分45秒

26日(日)は、サントリーの大ホールで、芥川作曲賞選考演奏会が行われました。小ホールとロビーでジョン・ケージの《ミュージサーカス》がにぎやかに展開しており、それを覗くという特典もつきました。

サントリー芸術財団のサマーフェスティバルでは、私は例年コンサートを優先していたものですから、選考演奏会を覗くのは、じつは初めて。こんなに面白いものだとは知りませんでした。

オーケストラ曲の新作を顕彰する芥川作曲賞、その特典は、新作を委嘱されることです。今年は2010年の受賞者、山根明季子さんの新作《ハラキリ乙女》が琵琶とオーケストラでまず演奏され、続いて、4つの候補作品が演奏される(大井剛史指揮の新日フィル)。それを受けて、3人の審査員が各曲を事細かに論評する、選考会になります。北爪道夫、高橋裕、原田敬子の3氏は、いずれもすでに芥川賞ヲ受賞した方々です。

皆さん、作品をとてもよく調べてこられていて、多角的な論評が、とても勉強になります。でも大変ですねえ。客席を埋めているのは同業者や現代音楽のコアな聴き手、作曲したご本人などで、一家言お持ちの方ばかり。しかも選考ですから、価値判断を逃れることができません。批評や審査という作業は自分自身が批評され審査されることなのだという認識を私はいつも肝に銘じていますが、こうした公開選考会は、その図式が絵に描いたようにはまってしまう。だから面白いのだと言われれば、まったくその通りです。

皆さん堂々と務められ、最終的に、新井健歩さんの《鬩ぎ合う先に》という作品の受賞が決まりました。さまざまな感想を抱きつつ、大阪行の新幹線へ。米沢の牛肉弁当を買って乗車しましたが、あいにく箸が入っていません。車内販売で調達しようと思ったら、さかんに行き来していたはずが、そのとたんに、ぴたりと来なくなる。仕方がないので、手づかみで食べました。慣れないので食べにくく、味がかなり割り引かれました。

暑中の合唱コンクール2012年08月26日 10時52分56秒

金曜、土曜と、埼玉県合唱コンクール。金曜日が中学校の部、土曜日が大学と高校の部でした。埼玉県の合唱レベルは高く、高校の場合、昨年の全国大会に出場したシード校が、5校もあるのです。関東大会の出場枠が、さらに8校ある。当然激戦で、審査員泣かせです。

いつも思うことですが、コンクールの審査は、音楽に対する価値判断の困難さを集約するような性質のものです。さまざまな着眼点のどこに注目するかで、結果はまったく違ってくる。たとえば、県代表として関東大会や全国大会で戦える団体を選ぼう、という考え方を頭の片隅に置けば、それだけでもう相当、審査は影響を受けます。私はそういう発想を持ちませんでしたが、持つことも、もちろん正当です。

今回審査委員長をさせていただいて印象的だったのは、委員の先生方が苦心し、悩み、たえず自己批判しながら採点しておられる姿でした。合唱にキャリアのある先生方もけっして独断的ではなく、そういう点では自分とまったく同じだと知ると、勇気づけられます。5人で補い合う、ということです。

私の採点はすでに公表されていますから、多少コメントしても大丈夫ですよね。浦和高校グリークラブの豪快かつユーモラスな男声合唱が1位に輝いたことにはまったく異存がありませんが、私の個人的なこだわりも含めて、その上に2校置きました。ひとつは、詩と音楽の関係の一分の隙もない把握を通じて優雅の極みを歌い出した川越女子高、もうひとつは、ラテン語のテキストを生き生きと躍動させた伊奈学園です。今回はラテン語の曲を歌った合唱団が相当あったのですが、歌詞内容の把握は正直のところあいまいに思える場合が多く、そこがきちんと勉強されるとどれほど効果があるかを、あらためて実感しました。32校のこうした競い合いのあとに、5つのシード校が演奏しました。

今日(日)はサントリーの芥川賞選考会に出席し、そのあと大阪に向かいます。

大物です2012年08月24日 01時43分18秒

今日も暑かったですね。夜コンサートが予定されていましたが、軽装で出かけました。NHKの録音を済ませ、早めの夕食を摂ろうと、新宿西口方面を散策。「蒙古タンメン中本」という店に入りました。過去何度か入ろうとしていつも入れずにいたお店で(行列)、今日は幸い滑り込めました。

人気店ですね。次々とお客が入ってきて、景気がいい。ただ、すべて若い人で、年配者は、私しかいないのです。とりあえず穏やかにと注文した「蒙古タンメン」も、相当なボリューム。右側を見ると、ごく普通の体型の若い人が、ライス大盛りの丼を横にして食べています。信じられません。大らかな味わいでおいしかったですが、「自分場違い」という気持ちも少し残りました。

汗をかきかき、オペラシティへ。今日は、出光音楽賞の受賞記念コンサートなのです。一応ネクタイをして、会場に入りました。「題名のない音楽会」の収録を兼ねていますから、満員です。将来性のある若手を選ぶこの音楽賞、今年の受賞者は2人のピアニスト(金子三勇士さん、萩原麻未さん)と1人のマリンバ奏者(塚越慎子さん)。私のお目当ては、国音のホープ、塚越さんでした。音楽学に在籍されたお姉様(←皇族のような方)のご紹介で、バッハ関係のアドバイスをさせていただいています。

いや、大物です!直接お話ししているとホンワカした感じの方なのですが(天然、といったら失礼かな)、ステージに上がると堂々たる風格で、演奏に集中したときのオーラがすごい。奥行きのある、広々した音楽作りをされます。12月に「たのくら」のコンサートに出演されるのですが、楽しみです。またご案内しますね。

レセプションにも出席しました。ところが予想に反して、上着を着ないでいったのが、ほとんど私だけ。皆さん、盛装なのです。こういう時って、本当にいたたまれない思いをします。上着をもっていくべきでした。

早手回し2012年08月22日 23時28分13秒

暇になったはずなのにいっこうに時間を上手に使えず、皆様にお伝えするような本格的な仕事ができていない、私。ひとつ言えることは、めぐってくる仕事の準備やケアを以前よりしっかりやっていること、そしてそれ以上に、仕事を早手回しに済ませるようになっていることです。

長いこと私は、ギリギリ派で通してきました。締め切りの仕事があると、催促をもらったタイミングで拍車をかける。必然的に絶えず追われている形になりますが、その分緊張感が高まり、短い時間に多くのことができるばかりか、出来栄えもよくなるように思ってきました。つねに早めに仕事をする人を偉いと思う反面、追い込まれて必死の作業をする人に比べ、見切りが早い傾向があるように思ったことも何度かあります。

ところが、私、早くなってきたのですね(笑)。今日はなんと、9月一杯と約束していた仕事を仕上げました。それは、いずみホールの「ウィーン音楽祭」で使う字幕の仕事です。ミサ曲の字幕は作っていましたが、レクイエム(モーツァルト)のテキストにはまともに向き合ったことがなかったので、とても勉強になりました。こうした傾向が老いの兆候にすぎないのか、自分なりの成長と考えてもいいのか、よくわかりません。能率自体が上がっているとは、思えないものですから。

長野はおいしい!2012年08月20日 23時54分21秒

19日(日)は、すざかバッハの会で講演。《ロ短調ミサ曲》の〈ニカイア信条〉がテーマでしたが、《ロ短調ミサ曲》の講演も数を重ねているので、効率良く進めることができました。精読したと思しき訳書を手に、専門的かついい質問をされる方がおられたのですが、尼崎(大阪)からわざわざ来られたと伺って驚嘆。この作品を研究しておられる方の多さに驚くと同時に、つねに最高レベルの発信を心がけなくてはならないと、あらためて銘記しました。

会場に向かう前、まさお君と落ち合っての昼食。ここ数回は「豚のさんぽ」のソースかつ丼だったのですが、今回は、そのすぐ先に新しいラーメン屋があるのを発見(調べたら2010年末の開店だそうです)。「いろはのい」というそのお店で、「ひらひらーめん」という一種のワンタンを食べました。ネギが好きなので、「九条ネギのごま油和え」も注文。まさお君は「秋刀魚、合わせ味」というラーメンを選びました。斬新な発想とネーミングを駆使した若々しいお店ですが、にもかかわらず、「醤油を楽しむラーメン家」という打ち出し通りの、やさしく正統的な味わい。とても良かったです。これなら東京でも戦えますね、とまさお君。長野駅周辺、おいしい店が多いですね。

幕を開けないで2012年08月18日 16時45分34秒

今日18日は、「たのくら」例会と、恒例の「ビヤ・パーティ」でした。ワーグナー・プロジェクトが始動したのが4月。今月のテーマは、《妖精》《恋愛禁制》《リエンツィ》の初期3作品におけるワーグナーの発展をたどることでした。このテーマでどこまで興味をもっていただけるか心配でしたが、20代のワーグナーの発展はまことに顕著かつ面白く、充実感をもってお話できました。相当準備しましたが、やはり、準備は嘘をつきませんね。来月の《オランダ人》に向けて、意欲が高まってきました。

《リエンツィ》には、ベルリン・ドイツ・オペラの2010年のライヴDVDが出ています。フィリップ・シュテルツルという人のその演出を私はとうてい受け入れられないのですが、ここでは一般論として、「序曲で幕を開け、演出を始めること」について意見を述べさせてください。

今では流行となり、当然のように行われる「序曲のステージ化」は、基本的には、やってはならないことだというのが、私の意見です。すごくうまくいって効果的な事例がいくつかあることをもちろん知ってはいますが、あらずもがなのもの、音楽を阻害するものも、看過できぬほど多い。ドイツで演奏されている方からお聞きした話があります。ある時指揮者が怒り、どうしてすぐ幕を空けてしまうのか、十分間ぐらい音楽を聴くことがなぜできないのか、と演出家に詰め寄ったとか。私は指揮者の意見にまったく同感です。序曲は、幕が上がる前に音楽を純粋に聴かせ、聴衆の脳裏に豊かなファンタジーを呼び起こすために置かれている。主役は当然、オーケストラです。

しかし最初から幕を開け、パントマイムをあれこれ行うと、聴衆の注意力は削がれ、音楽は自律性を失って「劇伴」になってしまいます。このパントマイムはどういう意味なのだろう、と考え始めることも少なくない。ベルリンの《リエンツィ》の場合、ムッソリーニを思わせる独裁者が登場して、権力への志向を高めたり、目に見えぬ不安に怯えたり、という演技を行います。聴衆の目はその新奇な身振りに吸い寄せられて、序曲はいつのまにか、それへの伴奏としか認識されなくなってしまうわけです。

《リエンツィ》というオペラは、共和制の理念を14世紀のローマに復活させようとした夢想的な革命家が、その理想主義の故に孤立し破綻するドラマを描いている。だからこその「大悲劇」で、独裁を美化したものではありません。ですから、リエンツィの理想主義を提示することが悲劇の必須の前提になるわけで、音楽にまかせておけば、序曲は、おのずからそのことを語る。しかし演出の介入によってそこを否定してしまったら、序曲が無意味になるのみならず、ワーグナー青春の長所も短所もある作品を上演することの意味も、わからなくなってしまいます。作品に敬意を払う演出家であれば、このような舞台は考えるはずがないと私は思うのですが、現実はそうではないのが残念です。

ゆっくり話せるイタリアン2012年08月17日 09時05分53秒

盛り場ごとに人様をお連れできるお店をもっていたいと思っているのですが、抜け落ちているスポットが、渋谷でした。しかし、いいお店を発見。道玄坂の裏通りにあるイタリア郷土料理のお店、「ラ・ゴローザ」です。ちょっと工夫の要る行き方は、充実しているホームページで御覧ください。

料理もワインももてなしもとてもいいのですが、1点挙げるとすれば、雰囲気です。品よく落ち着いた空間で、ゆっくり話ができる。ちょうど渋谷方面で集まろうという機会が重なりましたので、先月、今月で3回も行ってしまいました。皆様にもお薦めします。

眠れます!2012年08月15日 09時23分46秒

通販にお金をかけている人って、たくさんいるんでしょうね。BSなどほとんど通販の番組で費やされていますから、よほど売り上げがあるのだと思います。

私は半信半疑で見るだけでしたが、家族は熱心。このたび、Dormeoという、高反発マットレスが、当家にやってきました。なんの予備知識もないまま寝てみましたが、これが、じつによく眠れるのです。寝付きよくぐっすり眠れ、変な夢を見ないばかりか、起きて平常に戻るまでに、少しタイムラグがある。遠くから、はるばると戻ってきた感じなのです。

私はホテルのようにふかふかに沈むベッドが苦手なので、そういう相性もあるかもしれません。しかしこれほど劇的に効果があるのは驚きで、お薦めしたい気持ちになっています。子供たちも、まったく同じことを言っております。

宴のあと2012年08月13日 22時34分31秒

オリンピックが終わり、なんとなく虚脱感に囚われている方、多いのではないでしょうか。速い、強いの限界に挑戦するスポーツの魅力、勝つために選手が全力を尽くし、勝ち負けも(たいていは)一目瞭然に決まるスポーツの魅力が、オリンピックには集約されています。こういう爽快さは、音楽コンクールには望めません。

日本の選手たち、本当によくやったのではないでしょうか。一口にメダルと言っても、全世界から速い人、強い人が集まるわけなので、その中で3位以内というのは、信じられないほどすごいことです。競技人口や体重によって難易度の違いは大きいと聞きますが、誰でもできる短距離走、400メートル・リレーで5位なんて、たいしたものではないでしょうか。マラソンの6位も同様です。

オリンピックの価値は、4年に1回しかないことによって、高められているに違いありません。そのチャンスを逃した人、生かせなかった人の悔しさはいかばかりかと思うわけですが(昔は甲子園で敗れた高校球児に対してもすごくそう思っていました)、この歳になってみると、人生の価値は若い時の1回に集約されるわけではなく、勝者もまた、人生に重荷を背負うのだと感じられます。この点は、音楽コンクールの優勝と似ているようです。

人並みに2012年08月10日 23時35分08秒

私と話す多くの方が、切歯扼腕の表情をするとき。それは、私が「サッカーは興味がありません!」と断言するときです。別にいいでしょう、世間に迎合しなくても。私は野球路線で、アンチ巨人。広島東洋カープを応援しています。

・・・と言い続けて来たのですが、見てしまったんですよね、昨日、午前3時からの女子サッカー実況中継を。魔が差しました(汗)。当初はバレーと交互に見て、バレー終了後は、女子サッカーに集中。いやもう、実に面白かった。はらはらドキドキの連続で、見終わったのが6時近く。それでも興奮してしまっていて、全然眠くありません。せっかく平常になった時差が、また戻ってしまいました。でも徹夜の方、たくさんいらっしゃったのでしょうね。

日本チームで知っているのが数人。アメリカ・チームは一人も知りませんでしたが、見栄えのする人が揃っていて、びっくりしました。プレーもルックスも際立っていたゴールキーパー、調べてみるとスーパースターなんですね。昔「ナポレオン・ソロ」というテレビ番組を見ていたことを思い出しました(ロバート・ヴォーン主演)。関係ないか。それにしても、じつに見応えのある試合で、なでしこもたいした善戦でした。

多くの競技を、なんとなく見ています。いいなあと思うのは、リレー競技などに示される、スポーツマン相互の爽やかさ。私はスポーツまったくダメで、内面領域中心に過ごしてきましたので、アスリートたちの純粋でまっすぐな心には、感銘を受けます。それと私は、自分を鍛え、全力を尽くしている人の姿を見るのが好き。そこに感動の原点があるのは、スポーツも音楽も、まったく同様です。