ヨーロッパ真摯の旅2015(4)---ワルシャワ2015年06月15日 00時30分08秒

写真はたくさん撮っていますが、タブレットのブラウザからはアップデートできないとわかりましたので、帰ってから、特集をいたします。

夜ワルシャワに着いてみると、すぐ駅前だと思っていたホテが、郊外と判明。郊外を知ることもまた良し、とすぐ気持ちを切りかえ、タクシーのお世話になりました。とても緑豊かな郊外であり、市内です。

それにしても、ポーランドは物価が安いですね。ずいぶん乗った感じなのに、換算すると1500円ぐらいです。手軽に旅行できますよ。

私の旅行目的の一つは、ポーランドからドイツを見る目を経験してみたい、ということでした。それは、バッハの領主であるザクセン選帝侯がポーランド王であったことを、ポーランドの人々がどう受けとめていたのか、知りたかったからです。ポーランド史をひもとくと、このザクセン朝・二重王国時代については記述も乏しく、まともに取り上げられていない印象を受けていました。

外目には豪奢とはいえない王宮に入ると、内部は美術館の趣。歴代のポーランドの王公や名士の肖像が、ずらりと並んでいます。ところが、バッハの領主アウグストのそれは、小さいのが一つ、申し訳程度にあるだけ。その意味するところを、考えざるを得ませんでした。そう思って見ると、近くて遠い国なのかな、と思うことがいろいろあります。(続く)

ヨーロッパ真摯の旅3ーグダンスク2015年06月13日 14時37分33秒

ちょっと補足します。ライプツィヒの空港から、列車で中央駅へ。そこでコインロッカーに荷物を預け、身軽になってポーランドに行ってこよう、という計画です。ところが、ライプツィヒ行きの列車が1時間以上遅れていることが判明。そこでタクシーに切り替え、無事、コインロッカーに荷物を納めました。後日、中身を取り出します(なぜか、当たり前のことを書いてしまう)。

ベルリン着が夜の10時を過ぎましたので、ここもタクシーで、空港に近いホテルへ。翌朝テーゲル空港までは、バスで一足でした。グダンスク行きの飛行機は久しぶりのプロペラ機で、お客も数えるほど。しかし、着陸直前の眺めは、見事だったですね。バルト海のくっきりした海岸線が、グダンスク市を経て、東北東へとすーっと延びているのです。その昔ドイツ騎士団は、ここを東進したわけか。いま先にはバルト三国があり、ロシアがあり、さらにフィンランドがある。バルト海の懐は深く、その文化的役割は絶大です。

運河沿いに巨大な観覧車がありましたので、そこから市街を一望。ただし新しい施設を工事中だったため、バルト海の海岸に直接行くことはできませんでした。一種不気味なレストランで(説明すると長くなりますので機会があったら後日)ニシンの入ったサラダを食べ、家族のおみやげに琥珀を買い、その日のうちにワルシャワへと移動しました。

グダンスクは、ドイツ名ダンツィヒ。重要な軍港であり、バッハのカンタータにも登場します。しかしこの日の印象では、町としてやや生気に欠けるように思われました。でも琥珀は、安いですよ!

写真が、ネクサス7のブラウザではうまく投稿できないようです。これは困った。



ヨーロッパ真摯の旅(2)ーー星の巡り2015年06月12日 15時35分19秒

最初にビジネスクラスを利用したときの感動は、いまも忘れません。その利点は精神的なものだというのが、私の持論です。

あるときそのことを指導の学生たちにとうとうと語っていたところ、あの、私、ファーストクラスに乗ったことがあるんですが、と、女子学生が遠慮がちに申告。航空会社の都合でということでしたが、座がしらけましたねえ。なぜならば、私のビジネスクラス礼賛は、ファーストクラスはこの世に存在しない、という見切りを前提としてしているのであって、じゃあファーストクラスは、という言葉がひとつでも出れば、その時点で瓦解してしまうものであるからです。

というわけで、どうしたら元がとれるか、熟慮しました。密室に入ってしまったら、あとは別れ別れ。むしろ差が出るのは、手続きの部分ではないだろうか。

エコノミーの荷物預けは、長蛇の列をなしますよね。一大難関です。そこで仮に、御常連のTAISEIさんがお客だったとしましょう。TAISEIさんはもういい加減並んで、いらいらしておられる。時間が迫ってきているので、時計を見ては、天を仰ぐ。足踏みが始まり、ため息さえ聞こえてくる。そのとき私がさっそうと現れて、ただちに荷物預けを済ませ、足取り軽く検査場へと消えていくーー。こんな情景が完成すれば、ビジネスクラスも元がとれると確信しました。

ところが、星の巡りが 悪かったようでーーー。シーズン外のせいか、エコノミーはガラガラ、にもかかわらずビジネスのお客は案外いて、行列の長さがほぼ同じだったのです(汗)。結局ビジネス、満席でした。やっぱり、景気が回復しているんでしょうか。

元をとらなければなりませんので、急いでラウンジを探し、白ワインの一気注入。行きにラウンジを活用したのは初めてで、少し元をとりました。ミュンヘン乗り継ぎでライプツィヒに、そう疲労なく到着。駅で荷物を預けて、そのままベルリンに移動、宿に入りました。翌朝、グダンスク行きの飛行機に乗るためです。

ヨーロッパ真摯の旅2015(1)2015年06月11日 15時54分51秒

私のヨーロッパ旅行は実地見聞と図書館訪問を伴っています。貧乏性なので、音楽を聴きに行くだけではもっちたいない、と思ってしまうのです。そこで、お客様がたをお送りしてからの約一週間を、勉強の時期に充てています。

でも、今年は困りました。バッハ祭のいいとこ取りをしてみると帰国がいずみホール出演のまさに当日になっていて、後ろに延ばすことができないと判明したのです。そうなると「先に行く」しか方法がありません。そこで、月曜日の聖心を終えて火曜日に発ち、國學院は補講を励行するように案配して、土曜日の合流前に、3泊の余裕を作りました。

図書館はいま差し迫って調べることがありません。そこで、実地見聞のフルモードに。バッハにとってとても重要だが、まだ訪れていないところはどこだろう、と考えていたら、ありましたね、大事なところが。ポーランドです。なにぶんバッハの領主はポーランド王ですし、世俗カンタータには、ポーランドの地名がどんどん出てくる。やはりこの目で見て、土地勘を養っておきたいところです。

調べてみると、ポーランドはやけに広く、ターゲットが点在しています。そこで訪問地をグダンスク(ダンツィヒ)、ワルシャワ、クラクフの3つに絞り、北から回ることにしました。

小心者としてかなりの期間迷ったのは、ビジネスクラスを奮発するか、エコノミーで自重するかということでした。ご承知のようにその差額はきわめて大きいですから、もし身分相応にエコノミーで行けば、差し引き、大金の収入があったのと同じことになります。老後(すでにですが)の安定、という言葉も脳裏に浮かんでくる。でも結局一度知った蜜の味は拒絶しがたく、乗ろう、でも乗って良かったと思えるだけの元をとろう、と、不肖私、決心したのでした(続く)。

梅雨入り2015年06月09日 07時43分07秒

昨日はとても蒸し暑いと思ったら、梅雨入りとか。今日は雨ですね(東京)。不快指数の高いこの時期、皆さん、お仕事たいへんお疲れさまです(合掌)。

不肖私、今日羽田から、ヨーロッパに行ってまいります。今回は図書館には寄らないので、パソコンは持参せず、タブレット+外部キーボードで更新できたらと思っています。今日はミュンヘン乗り継ぎでライプツィヒまで行き、ベルリン泊まりの予定。珍道中などと言われないよう、真摯に行ってまいります!

がんばれました2015年06月07日 22時58分56秒

5月の、もう下旬だったでしょうか。どう計算しても、外国に行く前に、やらなければならない仕事がさばけないとわかりました。いつもそうだったような気もするが、済んだことは、どうでもよろしい。問題は、いま、どうするかです。

というわけで、この1週間、必死でやりました。がんばった甲斐があり、なんとか光明。区切りをつけて出かけられそうです。

誤解のないように申し上げておきますが、私は旅先でひどい目に遭うために、がんばっているわけではありません。ましてや、皆様に喜んでいただくためにがんばっているわけではない。自分がいい思いをするために、がんばっているわけです。皆さんに喜んでいただこうなどと仏心を起こすとろくなことはありませんので、今回の旅行は自己本位でいきたいと思います。期待をしておられる方、申し訳ありません。

焦りを誘った一番の仕事は、《魔笛》の台詞を作成することでした。今年11月のいずみホール《魔笛》は、台詞のみ、日本語でやることにしたのです。思いのほか膨大なオリジナルの台詞を一通り訳し、そこから集約して、マイ・バージョンを作ることにしました。

一番苦労したのは、日本語に敬語があることです。敬語の使い方が、じつにむずかしいのですね。そもそも自然児パパゲーノは、敬語になじむか。タミーノに対して、次第に敬語を使っていくという器用な対応でいいのか。相手がパミーナならどうか。ザラストロは丁寧にしゃべるべきか、ある程度威張っているべきか・・・などなど。ちょっとしたことで、人間関係のイメージが、大きく変わってきます。

関係ないですけど、ソフトバンク、すごいですね。とくに柳田(笑)。

古楽の楽しみ~パーセル特集2015年06月05日 22時44分17秒

古楽の楽しみ、最近はイギリス音楽をよく取り上げていますが、ようやく、パーセル特集にたどりつきました。私の大好きな作曲家のひとりです。

第1日(6/8・月)は歓迎歌(ウェルカム・ソング)、第2日(6/9・火)はアンセム、第3日(6/10・水)は舞台音楽、第4日(6/11・木)は器楽で構成しました。もし1日だけ早起きするぞ、という方がおられましたら、第3日がお薦めです。

第1日は、チャールズ2世のための歓迎歌《ようこそ、全能の王の代理者よ》とジェームズ2世のための歓迎歌《なぜ、なにゆえにムーサは皆沈黙するのか》をトラジコメディアの演奏で。合間に、ファンタジアと3声ソナタを1曲ずつ入れました。いずれも初期作品です。

第2日は、レオンハルトの弾くヴォランタリーで開始し、フル・アンセム2曲(ケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団)と、ヴァース・アンセム1曲(《主よ、私はあなたに拠り頼みます》レオンハルト指揮)を聴き、著名な後期作品《テ・デウムとユビラーテ》(ティモシー・ブラウン指揮)で締めくくる形にしました。カンタータ好きの私は楽器のつくヴァース・アンセムに今まで注目していましたが、フル・アンセムもいいですね。イギリス合唱芸術の粋、という感じがします。

第3日は、劇音楽のセミ・オペラとも呼ばれる分野から、《ダイオクリージャン》。終幕「キューピッドのマスク」を中心に構成しましたが、円熟期の名曲で、すばらしいです。演奏はガーディナー。

いちばん親しみやすいのは、第4日かも知れません。ムジカ・アンフィオン演奏の室内楽、レオンハルトの弾くチェンバロ作品、カークビーの歌う歌曲と並べましたが、ふるいつきたくなるような曲がいくつもあります。

「またこの世界に帰ってきたい」という言葉で、4日間の番組を終わりました。偽らざる心境です。

【付記】久美さん、ご指摘ありがとうございます。修正しました。しかし来週の日にちと曜日を間違えるなんて、私は正しく飛行機に乗れるんでしょうか。

6月のイベント2015年06月01日 23時19分44秒

恒例のご案内です。日にち順に。3日(水)は朝日カルチャーセンター新宿校の日。10:00~12:00のワーグナー講座は、《ニュルンベルクのマイスタージンガー》が第3幕に入ります。13:00~15:00のバッハ・リレー演奏講座は、《マニフィカト》です。今月の新宿は、この1回です。

その後ヨーロッパにまいりまして、戻ってきたその日に、いずみホールのオルガン・シリーズ。20日(土)の16:00から、オ・チャギョン氏(韓国)の登場で、「バッハ好みのロ短調」と題するコンサートです。体調に万全を期して帰国したいと思いますが、不安、なきにしもあらず。

21日(日)は立川で「楽しいクラシックの会」(錦町地域学習館、10:00~12:00)。オペラのシリーズに入っていますが、今月のテーマは「悲しすぎるオペラ~21世紀のパーセル《ディドとエネアス》」です。最近いろいろな映像が出ており、タイムリーだと思います(→訂正参照)。

26日(金)は日本モーツァルト協会のピアノ協奏曲連続公演、その3です。20番台のコンチェルトについて、自分なりの新しい見方を示せればと思います。14:00~16:30、東京文化会館会議室。空席待ちと伺っています。

27日(土)は朝日カルチャーセンター横浜校。モーツァルト講座(13:00~15:00)の今月のテーマは、1991年のオルガン曲とグラスハーモニカ曲です。

28日(日)は、すざかバッハの会のワーグナー・シリーズ(須坂シルキーホール、14:00~16:30)。今月は《ローエングリン》を取り上げます。

いま、出発前に仕事を片付けることがまことに困難な状況になっているのですが、帰ってきてからも相当たいへんなようですので、滞在中を、安らかに過ごしたいと思います。

【訂正】21日(日)の「たのくら」、9:30~11:30の間違いでした。会場の都合で30分早まっていました。ご確認をお願いします。

終わる企画、始まる企画2015年05月31日 11時54分13秒

今年の5月は暑かったですね。木曜日の掛け持ち(國學院大學と早稲田エクステンション・センター)が、荷物を持って炎天下を歩きまわる形になって、案外疲れました。

早稲田(中野校)は、今週で、計5回のバッハ講座が終了。設備も良く規律も正しくて、なかなかいいところでした。受講名簿があり、毎回、出席を点呼するのです。お返事がいいので感心していたら、出席をためていくことで単位が出るのだそうですね。さらにためていくと、総長からの表彰があるとか。これは励みになります。では試験をしましょうかと申し上げたところ、それは不要とのことでした(笑)。

昨、30日(土)から朝日カルチャー新宿校で始まったのは、レクチャー・コンサート。歌やダンスのための、小広い教室を使います。バッハの強みは、チェンバロやオルガンがなくても、無伴奏という強力な出し物があること。第1回は無伴奏ヴァイオリン・ソナタの第1番と《シャコンヌ》というプログラムで、須賀麻里江さんに出演をお願いしました。

お客様が間近に取り囲む形の空間で、バロック・ヴァイオリンの説明や曲の解説もたっぷり行い、終了後は演奏者を囲んで、質疑応答。高いステージに上がってしまうとできない密接なコミュニケーションを取ることができ、いい形で進められるという確信がもてました。熱演した須賀さんは大人気で、終了後は写真撮影の行列になりました。

次回は7月18日(土)16:00~17:30です。曲は、無伴奏チェロ組曲の第1番と第3番、出演は山本徹さん。二期会のヘンデル《ジューリオ・チェーザレ》で大きな存在感を見せていた山本さん、すばらしいと思いますのでご期待ください。

今月のCD2015年05月29日 09時08分04秒

CDをかけたとたんに流れてきた、潤いのある音。ああ、やっぱり手で弦をはじく楽器はいいなあ、と惚れ込んでしまったのが、福田進一さんのギターによる「ノクタナール~イギリス音楽集」(マイスターミュージック)です。
ダウランドの《涙のパヴァーヌ》に始まり、ブリテン、ウォルトン、パーセル、デュアードと進んで《グリーンスリーブス》でしみじみと終わる構成は、いにしえと今を往復して絶妙。福田さんならではの芳醇なサウンドと配慮の行き届いたフレージングで、イギリス音楽の品格を伝えてくれます。

もう一つ、ぜひ推したいと思ったのが、ユリア・フィッシャーがピアノのヘルムヒェンと組んだシューベルトのヴァイオリン作品全集(キングインターナショナル)。小作りではありますが親密なアンサンブルの、なんと温かいこと。これこそシューベルト器楽の魅力だと思います。フィッシャーはヴァイオリン/ピアノの二刀流なので、ヘ短調幻想曲の連弾まで弾いていてびっくり。