知の交差点 ― 2015年11月01日 16時30分35秒
10月31日(土)は松本の、深志教育会館へ。私の出身校である松本深志高校が、標記のタイトルによる講演シリーズを行っていて、私を呼んでくださったのです。
一応「J.S.バッハの人間と音楽」というタイトルを立てましたが、単にお話をするのではなく、生徒さんや先生の演奏といっしょに作り上げていこう、ということになりました。選んだのが、《平均律》のハ長調プレリュード、《捧げ物》の蟹のカノン、《フーガの技法》の第9対位法、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番のアルマンド、カンタータ第147番のコラール。統一されたリハーサルがありませんでしたので、どんな流れになるか予想できないままに、本番を迎えました。
まず写真や絵をごらんいただきながら、生涯と活動を概説。これは簡単にとどめ、さっそく実演に入りました。1年生女子によるプレリュード.。きれいな音で、とても見事です。しかし右手の表情が勝っているように思われましたので、曲のコンセプトを、映写した楽譜をもとにご説明し、バスを十分に響かせること、右手にはさまざまなアーティキュレーションが可能であること、大きなカデンツの流れをとらえて演奏することなどを申し上げました。生徒さんが即座に趣旨を理解し、適切な様式の演奏を仕上げてくれたことにびっくり。
以後、弦の二重奏、四重奏、ソロ、合唱と合奏、と進むうち、私は、一生懸命演奏している生徒さんたちが、半世紀ちょっと前の自分と重なるように思えてきました。深志高校音楽部における情熱を注ぎ込んだ部活こそ、今の私を作っているものです。
そもそも私は出身校とか出身団体とかにはクールな方で、昔話をしながら飲むよりは先のことを考えたい、固まるよりは広くお付き合いしたい、というタチです。至らない若者でしたので、思い出がいいことばかりではない、ということもあります。そんなわけで後輩たちの活動にもあまり関心をもたずに来たのですが、今まさにその後輩たちが、私といっしょにバッハの音楽を作ってくれている。その事実が、とても重いことのように思えてきたのでした。
終了後の質疑応答の中で、お話をいままで何度も聞いてきたが、今日がいちばん良かった、とおっしゃった方がおられました。そうだとすれば、それは明らかに、深志の人たちと共同で作り上げたことの成果です。その伝統の流れに君はいるんだ、と言われれば、たしかにそうだと思います。
外へ出ると、すっかり晴れ上がった、かなり寒い夕べ。山を見たいと、城山公園まで歩いてみました。ドイツ人の観光客2人と会話したほかはほとんど人にも会いませんでしたが、心がとても満たされていて、幸福感がありました。
秋色の松本平。向こうに見えるのは美ヶ原です。
紅葉の向こうに松本の中心街、その先に、高ボッチ高原で知られる鉢伏山があります。なだらかな山容ですが、写真にすると平らですね(笑)。
夕陽が沈んだ方角。中央右は乗鞍岳です。どんどん暗くなり、お城にたどりついた時には下のようになっていました。
松本に感動した一日でした。
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