こんな小説があるとは2015年11月13日 06時38分16秒

先日発表された文化功労者の中に、皆川博子さんというお名前が入っていました。まったく知らないお名前でしたので、『夏至祭の果て』という小説を読んでみました。

いや心底、驚きました。キリスト教禁制時代のキリシタンを描いた作品で(1976年の直木賞に落選したものだそうです)、よくぞここまでというほどの時代考証に基づき、力のある文章で、迫力満点のストーリーが展開されています。オビに篠田節子さんが「再読し、作品世界の大きさ深さにあらためて打ちのめされる」とお書きになっていますが、まったく同感です。

併載されている小品の中に『蛍沢』という清元の新作が入っています。その七五調の文章の冴えはすごい。こういう美しい日本語が生きているんだなあ、と感嘆しました。いずれにしろ徹底的に掘り下げる作風で、読む側に強い神経が要求されるようなところもしばしばあります。その意味で大衆的とは言えないかもしれませんが、忘れられてしまったらたいへんです。

文化功労者におなりになって、再評価の機運が高まるといいと思います。しかしマスコミの報道でスポットライトを浴びる受賞者は、誰でも知っている有名な方ばかり。隠れた価値を、もう少し報道してもらえたらと思います。

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