不思議な光景2015年03月26日 08時02分44秒

日曜日は郡山へ。{ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」の委員をしていますので、助成を差し上げたコンサートを聴き、贈賞セレモニーに出席するのが役割です。

対象は京都フィルハーモニー室内合奏団のコンサート。「音楽でつながろう!福島~京都~ウィーン」と題されています。この日のために、ウィーン・フィルから5人のメンバーが来日しました。朝着いてリハーサル、翌日コンサートを終えて空港へ、という超過密日程だそうで、重要公演の合間を縫って飛んできてくれたのには、驚くやら、感心するやら。演奏における存在感、被災地への激励効果も、並外れたものでした。

後半、《第九》の第4楽章には、地元郡山の中学生が、声楽、器楽の双方に、大挙出演しました。いかにも日本的な、おとなしい少女たち(少年もいます)ですが、演奏レベルはたいしたもの。音楽で出会う、つながるというのはこういうことなんだなと思い、不思議の感に打たれました。

ただ往復するのはつまりませんので、宇都宮で下車し、餃子を正味。新幹線に乗り直すと、なんと同じ車両の同じ列に、いつも仕事をご一緒している作曲家の西村朗さんがおられるではありませんか。一駅の間談笑しましたが、こういうことが起こること自体、福島県が音楽王国であることの証明だと思います。

足が映る2015年03月23日 15時25分58秒

連休の週末は、大阪と郡山でした。21日の春分、そしてバッハの誕生日は、いずみホールで、バッハのオルガン全曲シリーズその6。案内役を円滑にこなすためにはリハーサルをまるごと体験しておく必要がありますので、朝の5時45分に家を出ました。新幹線も新大阪駅も、相当な混雑でした。

多くのお客様に来ていただいているこのシリーズ。今回は完売で、大入り袋が出ました。オルガニストは、リューベック聖マリア教会のオルガニスト(=ブクステフーデの後継者)、ヨハネス・ウンガー氏、まだ30代の方です。

今回はハ長調を中心としたプログラムで、ペダルが活躍します。ウンガーさんが「いいプログラムですね、ヴォルフさんが作られたのですか」とおっしゃるので、僭越ながら「私です」と返答。ウンガーさんによれば、ハ長調はオルガンが美しく響く調であることに加え、オルガンの最低音を響かせられるので効果が大きい、とのことです。なるほど、ペダルの活躍は、ハ長調と無関係ではないのですね。

ペダル演奏はどこからも見えませんので、今回特別に、足の活躍が映し出されるスクリーンを設置しました。ツマ先やかかとまで駆使されるその秘術は、たいへん面白い見物。同時に、音楽が、とてもわかりやすくなります。ペダルを見ることでバス・パートの動きを耳がキャッチすることになり、音楽の成り立ちが手に取るようにわかるからです。後半に演奏されたドイツ語テデウムBWV725に、その効果がとくに発揮されたと思います。

この曲は、古来の旋律に和音を付けるだけで10分ぐらい演奏する、めずらしい趣向のもの。ばくぜんと聴くと退屈になりかねませんが、バスを意識することによって、変化する和声の面白さが逐一伝わってきたのです。これを受けて、演奏効果という点ではバッハのオルガン曲中1,2を争う《トッカータ、アダージョとフーガ》が大きな盛り上がりで演奏され、客席は最高潮に。アンコールとして《G線上のアリア》の演奏されたことが、よきサービスとなりました。

心に残るコンサートはいくつもありますが、今回ほど、周囲のお客様からたくさん声をかけていただいたのは初めてです。先の長いシリーズなので、この調子を保っていきたいと思います。好評の「足が映る」装置、今回だけと思っておりますが、ご要望もあり、迷うところです。左、ヨハネス・ウンガー氏。




お寿司屋にて2015年03月21日 00時08分27秒

鳥取からの帰り、某駅で下車し、お寿司屋さんに入りました。一人で食べていると、左側に女性が来て、慣れた感じで食べ始めます。どうやら常連さんのようです。

しばらくすると、2階から、にぎやかな3人組が降りてきました。セットかと思ったらそうではなく、私と同年配の男性は、カウンターで親しくなった方らしい。その男性だけ、1階に残る形になりました。

その男性が、よくしゃべる。私が関係している一流の銀行に勤めているそうで(真偽は不明)、「大きな声ですみません」と言いながら、女性スタッフの名前を一人ずつ尋ねています。名残惜しそうで、1階に残りたいようなのです。

マスターをつかまえて、しゃべり始めました。よく話を聞いてあげるマスターなので、私のお寿司を握る人が、しばらく不在に。女性に興味があるらしく、私の左の女性の容姿を誉めます。すると女性が「オジサンもダンディですよ」と返しました。ほんとですか。

一席もらったオジサンは、千円札を出し、「これで何か出してください」と言います。ビールとお寿司が出てきました。でも、その後も、「お味噌汁をお願いします」とか言うのですね。お店は、サービスせざるを得ない。計算のうちとも思われました。

オジサンは大いにお店を誉め、銀行が近くなので、毎日寄る、と宣言しました。すると温和なマスターが「年に1回でいいです」と返し、左側の女性が爆笑。オジサンがトイレに行った気配なので、私はマスターと女性の対応を誉め、「きっと寂しいんですよねえ」などと言いながら、女性と対話モードに入りました。50歳ぐらいの方です。

お金を払おうとして気がつくと、オジサンが後ろで聞いているではありませんか(汗)。気が咎めた私は、その銀行の系列で仕事をしているんですよ、音楽関係ですが、とリップサービスしました。するとオジサンは嬉しそうに、ジャズ・ピアニストは全部知っている、と言って、かつての勤め先で先生をしている有名な方の、ご家族のアドレスを携帯で示します。私はつい、有名な方を知っていても全然偉いとは思いませんよ、と言ってしまいました。お勘定を済ませ、もう帰りにかかっていたからです。

するとオジサンは、私に、スマホに録音した音楽を聴かせようとされるのです。ほとんど、すがりつかんばかり。こんなとき、皆さんならどうされますか。辛抱強く対応して差し上げるのが人の道だ、というご意見もありそうですね。けっして悪い人ではないし、年齢もいっておられますから。

それほど人がよくない私は、冷たく対応して、お店を出ようしました。するとお店の女性が、申し訳ありませんと、気の毒そうに謝罪するではありませんか。それでわかったのは、お店がこういうお客様をどれほど迷惑に思っているか、ということです。本人だけが、気がついていない。

たしかに、もう一度そのお店に行くかと言われたら、行かないと思うのですね。飲食業もたいへんだなあ、と実感しました。写真は、翌朝訪れた白鷺城。いいところですが、ラウドスピーカーで音楽が流れているのには閉口しました。



とても良かった「鳥の劇場」2015年03月19日 14時53分15秒

土曜日は、豊橋での仕事を終えたあと姫路に入りました。ここを根拠地として、日曜日に鳥取県の「鳥の劇場」を往復しよう、というのです。

廃校を利用して運営されている「鳥の劇場」の活動は、斯界で有名。私の関心は、掲げられている高い理念が、過疎を語られている県の、それもかなり奥まったところでどのように実現されているのだろうか、というところにありました。

鳥取県を訪れるのは、生まれて初めて。早めに着いたので鳥取市内を城址のあたりまで散策し、昼食の後ローカル線に乗って、浜村駅へ。そこから送迎車に乗せていただき、劇場に到達しました。一帯は温泉地のようです。

廃校の利用ですから環境は質素そのものですが、びっくりしたのは、雰囲気の温かさ。訪れた観客が心地よく過ごせるように、バリアフリーの観点も含めて、細やかな配慮が徹底しているのです。

上演される戯曲は、つかこうへい作の『戦争で死ねなかったお父さんのために』というもの。私にはこれまで、縁のなかった領域の芝居です。200席ほどの劇場に入ると、お父さん役の高橋等さんが、満面に闘志をみなぎらせながら、ああでもないこうでもないと、台詞の稽古をしている。ベースは学校の演劇部で、つか戯曲は、劇中劇として設定されるようです。

最初は開演までの時間つなぎかと思いましたが、やがて、その狙いが判明。ドラマの要所で重要な役割を果たす台詞を、あらかじめインプットさせておく意図なんですね。その効果は絶大でした。これは一例ですが、力強い原作にクールな枠組みを与えることによって、戦争と人間の関係に、複雑かつ多重な方向から光が当てられるようになっている。イデオロギーで切り捨てることのできない人間の思いを、さまざまに体験しながら芝居を観ていけるのです。

芸術監督を務める演出家、中島諒人(なかしままこと)さんがおっしゃる「演劇に何ができるのか」という探求はこういうことだったのかと感心し、勉強になりました。高橋さんの熱演はすばらしかったですが、オテロかジークフリートかというテノール歌唱にも仰天。こうした俳優さんたちがチームワークよくここに腰を据えていることも、劇場の理念あればこそだと思います。アフタートークの後、中島さんとお話しし、写真も撮らせていただきました。応援したい活動です。



豊橋駅のコインロッカー(2)2015年03月17日 08時00分10秒

振り返ったオジサンの笑顔が尋常でないので、これは変な人かなと一瞬思ったのですが、口から出た言葉は、「荷物が出せないんだよねえ」。対話式の操作が、取り出す段階でわからなくなってしまったようなのです。

預かり証を探している私は、人助けをする状況にはなかったわけですが、放置することもできない。なぜなら、そのオジサンは私と同じ区画のロッカーに荷物を預けておられるので、それを出せないと、私の荷物も出せないからです。

焦る気持ちをおさえて、代わりに操作。ちょっと手間取りましたが、それは、バーコードをかざす時にちょっとコツがあるためでした。何とか解決し、さて自分のことを、と思ったら、背中にいる別のオジサンが、わからない、とおっしゃるではありませんか。こちらは、預ける段階。便利な新型も、コインと鍵だけで扱えた旧型に慣れている人をまごつかせるのですね。

毒を食らわば皿までの心境となり、手伝って差し上げました。もちろん、時間は迫っています。私の場合、預かり証を入れる可能性があるのは、胸のポケット、サイドのポケット、財布のいずれかです。鞄に入れたはずはないのですが、みつからないので、地べたに鞄の中味を出し、底まで調べてみました。やっぱり、ない。でももう一度始めからやり直して、ついに見つかりましたね。散歩で汗をかいたためでしょうか、スマホの裏にぴったりくっついていて、気がつかなかったのです。

劇場は駅から近いので、走り込み、ことなきを得ました。このオチではもの足りないっ、とおっしゃる方のために、意外にいいところだった豊橋公園・吉田城のスナップを載せておきます。気の休まるところです。



豊橋駅のコインロッカー2015年03月14日 19時35分19秒

ブログをやっておりますと、読んでくださる方のために、好むと好まざるとにかかわらず書かなければならないことが出てきます。さて。

土曜日のお昼、豊橋駅に降り立ちました。穂の国芸術劇場で市民演劇を見るためです。少し時間があるのでコインロッカーに荷物を預け、市内の散策に出発。豊橋駅のコインロッカー、どんなものだと思われますか?

それは、私の知るかぎりもっとも進んだものでした。私は、コインロッカーについては国際的に多様な経験を積んでいますので、よくわかります(きっぱり)。

大きなパネルをクリックして進む対話式ですが、カードか現金かを選択するようになっていて、すばらしいことに、紙幣が使える。小銭がなくて涙を呑んだ経験って、皆さん、お持ちですよね。このコインロッカーは、おつりが出ます。

おつりを受け取り、城址を散策。名物のカレーうどんを食べ、時間が迫って来たので、コインロッカーに戻りました。

さて、バーコード付の預り証を出そうと思ったら、これが、どこにも見つからない。なぜかフランクフルトなどという都市が頭に浮かび、さながら十一面観音のようになって探索を開始。すると、私の前にいたオジサンが振り返り、満面の笑顔で話しかけて来ました。(続く。姫路にて)

今月の「古楽の楽しみ」2015年03月12日 12時11分36秒

今月は、聖金曜日も近いことなので《マタイ受難曲》のリレー演奏をやろうと思い、発表もしていました。ところが、前述した「おぎやはぎの放談」が入ったため、《マタイ》は延期。バッハの管弦楽組曲を1曲ずつ取り上げることにしました。

人気の高い管弦楽組曲。リクエストの回にはよく出ていますが、私は第1番しかやったことがなく、切り札のひとつとして温存していました。21世紀の新しい演奏をメインに、さまざまな演奏や編曲を組み合わせる形で構成してみました。

16日(月)は、第1番ハ長調。まず通し演奏を、ヤープ・テル・リンデン指揮のアリオン・バロック・オーケストラで。目立たない録音だと思いますが、とてもいいですよ。それからリレー演奏に入ります。レーガー編曲のピアノ連弾版で序曲(演奏はモレーノ&カペッリ)、クーラント以降の舞曲は、アーノンクール~ベルリン・フィルからブリュッヘン~エイジ・オブ・インライトゥンメントにリレーします。ブリュッヘンもいいですね。

17日(火)は、第2番ロ短調。クイケン兄弟~ラ・プティト・バンドの新録音(2012年)でまず通し、リレーはムラヴィンスキー~リヒター~ブッシュ(!)という凝った形にしました。締めは、ヴァイオリンがソロになる初稿から最後の3曲を、ドンブレヒト指揮のイル・フォンダメントで。

18日(水)は、第3番ニ長調。フライブルク・バロック・オーケストラの新録音(2011年)によるメインのあと、マーラーの《バッハの管弦楽作品による組曲》を置きました。前半の楽章2つが第2番から、後半の楽章2つが第3番からという変わった曲です。演奏はシャイー。そのあと《G線上のアリア》をミルシテインで聴き、管打楽器をもたない初稿によるジーグで締めくくります。

19日(木)は、第4番ニ長調。この日はトランペットとティンパニをもたない初稿から入り(演奏はヘンゲルブロック)、次に通常の全曲を、ピエール・アンタイ指揮のル・コンセール・フランセで聴きます。そして、昔第5番と言われたト短調の組曲(BWV1070、偽作)から、序曲と〈トルネーオ〉を聴いて(演奏はターフェルムジーク)終わります。

興味のある方、早起きをお願いいたします(笑)。

3月のイベント(補遺)2015年03月10日 23時37分09秒

21日(土)は、バッハの誕生日。この日に合わせて、ヨハネス・ウンガー出演によるオルガン作品全曲演奏会Vol.6が、いずみホールであります(16:00から)。

ウンガー氏はリューベック聖マリア教会オルガニストで、ブクステフーデの系譜を継ぐ人。詳細はいずみホールのプログラムでどうぞ。教会の動画もあります。http://www.izumihall.co.jp/schedule/list.html?kind=kbn&kbn=1

《トッカータ、アダージョとフーガ》をトリとするプログラムにはペダル・ソロの活躍する作品が多いため、「ペダルこそオルガンの魅力」と題しました。加えて、ペダル演奏をスクリーンに映し出す用意をしています。今回だけのサービスです。

28日(土)13:00~15:00は、朝日カルチャーセンター横浜校のモーツァルト講座。「危機の時代の見直し(3)――北ドイツ&フランクフルト旅行をめぐって」というテーマです。

29日(日)には日本ピアノ教育連盟の全国大会でモーツァルトのピアノ協奏曲に関する講演をします。専門家の集団に聴いていただくので、新しい情報を提供すべく、しっかり勉強して臨みたいと思います。

視察がいくつか入っていて、なかなか忙しい後半です。放送については、次回にご案内します。

山越え2015年03月09日 06時35分30秒

この週末、トークの仕事が続きました。

6日(金)は、ご案内した楽しいクラシックの会主催のコンサート。西山まりえ、櫻田亮という魅力的なお二人のステージを、皆さん満喫されたこととと思います。櫻田さんは美声冴え渡る絶好調で、西山さんの優雅にして行き届いた伴奏との相性も抜群。アルビノーニのカンタータがすばらしい締めくくりになりました。これからの共演にご注目ください。このコンビは昨年末須坂で誕生したもので、発信地としての須坂の役割が、ますます大きくなっています。

第一関門を通過しても喜んでいられなかったのは、第二関門が容易でなかったからです。7日(土)は、NHKで番組を収録しました。その番組は「古楽の楽しみ」ではなく、「おぎやはぎのクラシック放談『マタイ受難曲』」というもの(!)。《マタイ受難曲》を一人でも多くの人に聴いてもらいたい、という加納宏茂プロデューサーの情熱から生まれた番組です。

おぎやはぎのお二人、同僚の光浦靖子さんが放談担当で、司会が田中奈緒子さん、ゲストが亀川徹さん(芸大教授)。私の役割は、マタイ受難曲など聴いたこともない、という方々に曲の良さをわかっていただき、好きにさえなっていただく、という案内係です。もちろん、平素クラシック番組をお聴きにならない方に聴いていただきたい、という願いが込められています。

これは正直、自信が持てませんでした。構成を考えてもわれながら半信半疑で、プレッシャーというよりストレスを感じる数日。いざ始まると、いただいた台本ありやなしやというスケールで、アドリブが展開されます。私はすっかり泡を食ってしまい、うろうろ、まごまご状態で途中まで終了しました。

でもだんだん、噛み合ってきたのですね。落ち着いて観察すると、お三方の放談は、好きなことを言っているようでいて、番組の方向性をちゃんと抑えている。その的確さは、プロとしか言いようのない、見事なものです。おかげで、《マタイ受難曲》に共感しつつ耳を傾けるという目標に到達できたと思います。

20日(金)の16:05から放送ですが、ぜひお聴きくださいと言うのは気恥ずかしいです(笑)。とはいえいい経験をさせていただき、達成感を味わうことができました。

8日(日)は、「たのくら」の例会と、「錦まつりコンサート」を立川で。小笠原美敬さん(バス)、久元祐子さん(ピアノ)のご出演で世界の歌とピアノ曲を楽しみ、ハードな3日間を完走しました。山越えという印象のある、エネルギーを要する週末でした。多くの方にお世話になり、ありがとうございました。

2月のCD選2015年03月06日 10時32分22秒

遅くなりました。2月のCD、特選盤に選んだのは、デイヴィッド・ジンマン指揮、トーンハレ管弦楽団のストラヴィンスキー《春の祭典》(ソニー)です。

ロトのピリオド現代楽器による録音(面白い!)などでふたたび脚光を浴びている《春の祭典》ですが、このCD(BSCD2方式の録音で、音がいい!)には、1913年の有名な初演に用いられた自筆譜稿(世界初録音だそうです)と1967年の決定稿が、両者を比較するプレレクチャーとともに収められています。

違いも興味深いですが、劣らぬ長所は、やっている演奏者たちがその過程で《春の祭典》の勘どころを習得し、意識するようになっていること。結果として演奏が、見通しの利いた、とてもわかりやすいものになっています。この作品の入門にもいいのではないでしょうか。

対抗盤として考えたのは、小澤征爾指揮、水戸室内管弦楽団によるベートーヴェンの第4・第7交響曲(デッカ)。じつにオーソドックスで、若々しい覇気に驚かされるベートーヴェンです。とくに第4番がすばらしく、小澤さんに老年はないんだなあと感じ入りました。映像なしでの印象です。

真逆の熟した味わいを楽しんだのが、ネルソン・フレイレのショパン(デッカ)でした。ただし第2番のコンチェルトは、やはり若者の音楽かもしれないと思いました。

新聞では、ティーレマン指揮、ドレスデン・シュターツカペレのコンサートの批評を出しました。すばらしい演奏、ただし《英雄の生涯》にはアイロニーが欲しい、という論旨です。今月は、ヤノフスキ指揮のベルリン放送響をやります。