10月のイベント2013年09月28日 07時00分12秒

9月もまもなく終わりますね。私、本当によく仕事をしたと思います。10月は2大学の授業も始まり、カルチャーも新学期。気分一新して取り組まなくてはなりません。

朝日カルチャー新宿校には第1、第3水曜日に出講し、10:00~12:00と、13:00~15:00の2枠を担当することになりました。どちらも「徹底研究」という触れ込みで、午前中はワーグナーの《ニーベルングの指環》、午後はバッハの《ヨハネ受難曲》です。今月は2日と16日。ワーグナーは当然《ラインの黄金》からで、「湧き起こるラインの水」「文明の悪の目覚め」というタイトルをつけました。《ヨハネ受難曲》の方は、《マタイ受難曲》講座からのバトンタッチですので、《マタイ》との比較から入り、プレ・バッハの受難曲を展望します。

朝日カルチャー横浜校は第1、第4土曜日の13:00~15:00。企画はどちらも継続で、「超入門」シリーズと「エヴァンゲリスト」シリーズです。5日の「超入門」の曲目を調べたら、ショパンの《英雄ポロネーズ》となっていて、われながらびっくり。誰でも知っている曲を取り上げて、音楽の基礎や聴き方を学んでいこう、というシリーズなのです。「エヴァンゲリスト」の方はいよいよ大詰め。終章「数学的秩序の探究」の後半で、《音楽の捧げもの》から開始し、バッハの死にたどりつきます。26日です。

今月は、「まつもとバッハの会」「すざかバッハの会」両方あります。松本は6日(日)の13:00~15:00(深志高校教育会館)で、《ロ短調ミサ曲》の〈グローリア〉。須坂は13日(日)の14:00~16:30(須坂駅前シルキーホール)。《ヨハネ受難曲》第1部第2稿の考察を行い、第2部に入れれば、と思っています。

12日(土)は、NHK合唱コンクールの審査を初めてやります。19日(土)は、越谷のサンシティ市民合唱団から、《ロ短調ミサ曲》に関するお話の仕事をいただいています。単発ですから、よくまとめておかなくてはなりません。立川の「楽しいクラシックの会」は、27日(日)の10:00~12:00(錦町地域学習館)になります。ワーグナー《ジークフリート》の、すばらしい第3幕をとりあげます。

28日(月)には学士会館で、ベルリン・フィルとウィーン・フィルに関する講演を朝日旅行社の主催でやることになっています。午後ですが時間はまだ伺っていません。

以上、よろしくお願いします。

〔訂正〕松本は、14:00~16:30の間違い。学士会館は、14:00~16:00でした。お知らせくださった方々、ありがとうございました。

祝CS進出2013年09月26日 08時21分57秒

知人のコンサートから帰ってCS放送に照準を合わせ、広島東洋カープのCS進出を知りました。洒落ではありません。昔フジテレビでやっていた「プロ野球ニュース」が、いまCSで放送されているのです。解説者はほぼ同じなので、かなりオールドな感じになっています。

おめでとう。勝利投手バリントン、セーブ・ミコライオ、決勝打エルドレッドというとどこの国のチームだとなりそうですが、やってきた選手たちはみな、広島という町が大好きになるようなのですね。いずれにしろ一体感のあるチームで、丸、菊池など、スピード感のある選手がたくさんいます。

阪神にはご遠慮いただき(優さんごめんなさい)、巨人に挑戦してもらいましょう!マエケンがいますので、勢いが途切れなければ(←これがむずかしい)、いい勝負になりそうです。

好きなチームの多いパ・リーグですが、このところ西武に絞って応援しています。はるか昔の西鉄ファンだったので、私的には自然な流れです。西武はこのところ大きく盛り上がってきていて、昨日も連夜のサヨナラ、すごかった。楽天もいいのですが、巨人と対決となると、きっと固くなる。西武の方が楽しみがありそうです。四番の浅村、すばらしいですよ。

巨人も敗れ、応援している方がことごとく勝つという、珍しい日になりました。・・・こう書くと、たいてい次の日ダメなのですが。

今月のCD2013年09月23日 11時41分40秒

今月は、いいものがたくさんありました。とくにヴァイオリン。その中で私が選んだのは、イザベル・ファウストです。バッハの無伴奏第2集(ソナタの1と2、パルティータの1)とドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲、ピアノ・トリオ第3番(仏ハルモニアムンディ)の2枚。どちらにするか迷った末、ドヴォルザークを選びました。

ファウストの音楽は、とにかくシンプルで、汚れがない。音楽の本質にまっすぐ入りこんで、気迫があり、端正です。チェロのケラスに通じるものがあるなあと思ったら、ドヴォルザークのトリオではケラスが共演していて(ピアノはメルニコフ)、これがやはり、合うのですね。すっきりとした、気高い音楽になっています。

もうひとつここで付け加えておきたいのは、ブルーノ・ワルターのフランス国立放送管弦楽団ライヴ・シリーズ。1955、56年ですから、80歳になろうとする頃ですね。その年齢とはとても信じられないほどほとばしるものがあり、オーケストラが感動して演奏していることがよくわかります。モーツァルト、マーラーもいいですが、ワーグナーの《ジークフリート牧歌》とブラームスの第2交響曲を、心が燃え立つ思いで聴きました。拍手が唐突なので、できればカットして欲しかったです。

「おすすめ商品」2013年09月20日 11時07分46秒

このたび、アマゾンから初めて書籍を購入しました。どうしたものか、本とCDは現物で選びたいという気持ちが抜けず、一度も利用したことがなかったのです。購入したのは、白水社から出ている海老澤敏・高橋英郎訳編の『モーツァルト書簡全集』全6巻のうち、唯一もっていなかった第5巻です。

さっそく読んでいますが、本当にすばらしい訳業ですね。海老澤先生は長いこと私の上司で、どのぐらいご多忙だったかをよく存じていますので、こうした手間のかかる困難なお仕事をその間にされたのは超人的です。学者の条件は勤勉だと、つくづく思います。ともあれ、私が初めてアマゾンを利用したこと、買ったのがモーツァルトの本であったことをご記憶ください。

しばらくして、アマゾンから、「おすすめ商品」というメールが届きました。読んで私は、寒気がするぐらい驚いた。なぜならそこには、バッハの無伴奏チェロ組曲のCDが、ずらりと並んでいたからです。

こうしたメールが来るからには、アマゾンは、私が無伴奏チェロ組曲のCDを必要としていることを知っていたわけですよね。どこから知ったのでしょうか。ここにもまだ書いていないはずですし・・・考えられるとすると、NHKに提出する事前予告がどこかに出るらしいので、それを見て担当者がアレンジした、ということでしょうか。そこまでリサーチして商売しているのであればすごいことだなあ、と思います。

ただ「時すでに遅し」で、私はCDをタワーレコードで買い集め、編成して、すでに録音に入っていました。放送は10月の7~10日ですので、またご案内します。

ピーター・ウィスペルウェイというオランダの奏者がヴェルサイユ・ピッチ(バロック・ピッチよりさらに半音低い)で録音した無伴奏は面白いですね。おまけにDVDがついていて、とても勉強になります。

国際化の証明2013年09月18日 10時38分15秒

日にちがどんどん過ぎ、いくつかのイベントについてご報告やお礼をするタイミングを失ってしまいました。松本には8日の「バッハの会」に続いて、16日に演劇を観にいくことになっていたのですが、台風で特急が全面運休に。また出直したいと思います。

その間に、広島東洋カープが怒濤の勢いで、7連勝。クライマックス・システムというのは妙な制度だと思いますが、後半を盛り上げることは確かですね。今の勢いなら、阪神を破って巨人と対決、ということになるかもしれません。パ・リーグは、西武にもうひとがんばりしてほしいです。

バレンティンのホームラン記録には、なかなか感動しました。私も長くプロ野球を見ていますから、王のかつての記録に外国人選手が挑戦するたびにアンチ機運が盛り上がり四球の連続、というシーンを、いくつも覚えています。それに比べると、バレンティンが投手に勝負され、記録をみんなに祝福されている姿は、隔世の感がある。まさにこれは、日本が国際化されたことの証明です。国際化の壁ということもさかんに言われますが、日本人が国籍を問わず外国人に慣れ、妙な偏見から格段に解放されていることは間違いないと、日頃から実感しています。ただ野球の選手、何年のいる人は、もう少し日本語ができるようになってもいいですね。せめて力士の半分ぐらいは。

去年からずっとやってきた朝日カルチャー新宿校の「マタイ受難曲徹底研究」講座、今日が最後です。昨夜は最終合唱曲を細かく分析し、なるほどこうなっているのか、と膝を打ちましたが、いまごろそんなことを言っていてはいけませんね(笑)。今日はリヒターとフィッシャー、究極の比較を行います。終了後会場を飛び出し、いずみホールに向かいます。

書き忘れたこと+幸福な体験2013年09月15日 10時37分59秒

そうそう、書き忘れたことをひとつ。

いずみホールでのコンサートの後、演奏者、マネージャー、なぜかまさお君、の4人で、大阪は北新地に、打ち上げにでかけました。いつぞや、大阪で一番おいしいものを食べられるところ、とご紹介した、カジュアル・スナックのMMMです。快活に迎えてくれる、気持ちのいいお店です。

私がブログで紹介したことにママさんがとても感謝されていて、訪れるたびに、「美人のママさんがすてきだ」と書いてくれて嬉しかった、とおっしゃいます。「飲食」のカテゴリで取り上げましたので、ママさんにはまったく触れなかったのですが、何かの錯覚で、そう思われているようなのです。

この日も、フツーなようでいて凝っている、B級のようでとびきりの珍味をいただきました。レストランとしても使える、本当にいいお店です。お薦めします。

あ、書き忘れるところでした。ママさんは年も若く快活な、フランクでキュートな、とてもすてきな方です。お薦めします。

9月上旬には、サントリー芸術財団のサマーフェルティバルが開催されていました。今年から始まった「ザ・プロデューサー・シリーズ」、トップバッターは池辺晋一郎さんで、さすがに多彩な企画を提供されました。私は2つしか聴けず申し訳なかったのですが、6日(金)にブルーローズで披露された〈インプロヴィゼーション×ダンス〉は興味深かったですね。

邦楽、民俗音楽、ジャズなど世界の多分野からつわもののソリストが集合し、小一時間に及ぶ合同の即興演奏を行い、後半(「大自然―畏れと共生、そして美」)ではそこにダンスがつく。乗せられているうちに、音楽・芸術を通じての世界の協調と和合が、ひとしきり実現したような思いにとらわれました。幸福な体験です。

弱音の美2013年09月13日 10時03分15秒

5日(木)はいずみホールで、今年度のモーツァルト企画を導入するレクチャー・コンサートを開催しました。今年度はザルツブルク時代の終わり、モーツァルト20~25歳の作品に「克服」と題して光を当てますので、そこに至るまでのモーツァルトの歩みを、「天才の学習」と題してたどるのが目的です。

と書くといかにも私が企画したようですが、選曲、構成、演奏はすべて久元祐子さんによるものです。久元さんの負担を軽減するために、私が説明と司会を買って出たにすぎないのですが、久元さんのおかげ、またお客様のおかげで、たいへん楽しく進めることができました。

舞台上に左から、チェンバロ、フォルテピアノ、グランドピアノ(ベーゼンドルファー)が勢揃い。いずれも、いずみホールの所有する楽器です。モーツァルトの鍵盤音楽活動はチェンバロで始まり、まさにザルツブルク時代後期に、フォルテピアノとの出会いによって大きく展開しました。その響きを実感しながら、現代ピアノとの比較も行おうという、入場無料とは思えないぜいたく企画です(笑)。さすがに、スタインウェイとの比較は諦めましたが・・・。

後半に登場したフォルテピアノは、ベートーヴェン世代の名製作者、ナネッテ・シュトライヒャーによるオリジナル(!)。山本宣夫さんが修復に修復を重ねて実用に供しているものです。今回その音色がいままでになく心に響いたのは、久元さんが楽器への愛を込めて演奏されていたからに違いありません。

何より、モデラート・ペダル(弦とハンマーの間に布を挟んで減音する)の効果が美しく、耳を澄まして聴き惚れてしまいました。弱音がはっきりした音色の変化を伴って、耳を引き寄せるのです。いずみホールの楽器には、このペダルが2つ(!)。フォルテピアノはチェンバロにできない音の強弱を表現に導入するために発達したわけですが、その真価は弱音をこのように傾聴させるためにあったのだなあ、と思いました。

ビクトリア、歌舞伎2013年09月11日 11時01分53秒

北海道から帰り、《ゴルトベルク変奏曲》の話をした土曜日を挟んで、埼玉県合唱コンクール第3日へ(9月1日)。いくつかの部門に分かれていましたが、本当にようやく、ある程度のゆとりをもって対処できるようになりました。

課題曲は混声、男声、女声各4曲ずつあり、傾向の違う曲が選ばれています。必然的に何度も聴くことになりますが、やはり、光り輝く名曲がしっかり歌われると、うれしくなります。

すばらしいのは、混声の部の最初にあるビクトリアのO magnum mysterium。激戦となった大学職場一般/室内合唱の部では、1位、2位(私の順位=全体の順位)の団体が、どちらもこの曲に、抜きんでた合唱を聴かせてくれました。しかし、アプローチはまったく逆。一方はつややかで磨き抜かれたハーモニー(スカートラ・ディ・ヴォーチェ)、もう一方は、テキストへの共感を湧き上がらせる熱い演奏(あべ犬東)。どちらも、今なお記憶が鮮烈です。

3日(火)は、津の三重県文化会館に、松竹大歌舞伎を見に行きました。中村吉右衛門を総帥とする播磨屋一門の出演で、『連獅子』など。

歌舞伎では、役者が花道を退場するときに様式が発動されますよね。注目と喝采の中で、役者は姿を消す。こういう舞台芸術って、世界にどのぐらいあるでしょうか。ほとんどは、退場者は視線から外れて、静かにいなくなると思う。ここに、重要な価値観があるように思えてなりません。長幼の序、老の尊重、異界との接続などなど、いろいろな連想が浮かびます。勉強すると面白そう。

津の夜は静かですね。開いているお店もほんとうにわずか。翌日は午後の仕事に間に合わせるよう早起きし、海に行ってみました。海が近いと、どうしても行ってみなくなります。台風の余波で風が強く、海は荒れて、厳粛な趣を漂わせていました。本来なら見えるはずの知多半島も見えず、さいはての地に来たような気持ちになりました。残念ながら、写真を失敗。

今月の「古楽の楽しみ」2013年09月08日 08時26分34秒

ぎりぎりのご案内になってしまいました。今回は、詩篇曲(部分への作曲も含む)の特集です。番組のために集めているCDに詩篇曲がたくさん入っているので、じゃあ特集しよう、ということになりました。力作が多く、当時の礼拝および教会音楽における詩篇の重要性を痛感します。

9日(月)。シュッツの第19篇〈天は神の栄光を語り〉(Geistliche Chormusikから)を冒頭に置きましたが、これがすばらしい。ラーデマンの指揮です。シュッツからはもうひとつ、Symphoniae sacrae第3巻に含まれる第13篇。次にシャインで第39篇、スウェーリンクのオルガン曲をはさんで、ハマーシュミットの第8篇(←バッハ《ヨハネ受難曲》冒頭合唱曲のもとになったもの)。隠れた名曲と呼びたいのがフェルチュの第1篇。最後にクーナウの第31篇です。

10日(火)。シャイトの第66篇で始め、ドゥリヒウスの第84篇、第96篇と第93篇を使ってのブクステフーデとパッヘルベルの比較、シェレの第51篇と来て、最後はカイザーの《詩篇第62篇について》という作品で締めました。

11日(水)は、百番台。ここには夕べの祈り(晩課)を構成する詩篇が集中しているので、《涙とともに種蒔く者は》をシュッツの2つの作曲で聴いた後は、ビーバー、ファッシュ、トゥンダー、クニュプファーの作品によって、晩課の流れを作ってみました。〈ディクシト・ドミヌス〉〈ラウダーテ・プエリ〉等々の曲たちです。

12日(木)は、バッハ。詩篇テキストによるカンタータ第196番と第131番を枠組みとし、オルガン曲〈深き淵より〉とモテット〈主をたたえよ、すべての異邦人よ〉(偽作?)で構成しました。演奏は196がアラルコン、131がヘンゲルブロックです。

有名曲が少ないので渋い週になりましたが、内容は多彩にして豊かです。どうぞよろしく。

北海道三日間~ひとり旅はむずかしい(5)2013年09月07日 09時14分43秒

大自然の中に立つ「富良野演劇工場」は倉本聰さんの理想を実現した劇場だそうで、舞台と舞台裏にスペースを惜しみなく使い、しかしまことに簡素に建てられた木造建築です。ちょっと、バイロイト祝祭劇場を思わせる。そこで上演されたのは、矢代静一作の一人芝居『弥々』。いくつかの劇場のネットワークで行われる公演の第1回でした。

弥々というのは良寛の初恋の女性で、いったんは彼を拒否し、すさんだ生活を送りますが、その過程で、良寛への愛と尊敬を深めていく。マグダラのマリアのイメージが、背後にあるそうです。独演した毬谷友子さんの演技のすばらしさは、言葉もないほど。陰惨な場面もからりとした明るさで処理されるのがよく、女の一生が、スピーディーに綴られてゆきます。ベートーヴェン《悲愴ソナタ》の第2楽章が二度にわたって響き、深い慰安の効果を作り出していました。人生、愛、男女、理想、現実、あこがれ、真実--などなど、いろいろなことと向き合い続ける1時間半でした。

演劇はいいなあという思いが、人生のここに至って、加速しています。ただ、演劇を1つ観ることはコンサートを1つ聴かないということですから、音楽の世界における責任達成度が下がることも事実。しかし長いこと音楽音楽で費やしてきた人生が最後に他芸術に開かれて終わるというのも、個人的には悪くないなと思っています。また、芸術の本質を考えた場合、関係者がそれぞれのジャンルのことで手一杯という状況も、理想的ではないように思われます。

31日(金)。タクシーを頼んで十勝岳を周遊するというプランを考えましたが、雨模様であきらめ、小樽に海を見にいきました。地図で見ると留萌が近いし、1本で網走という可能性もなくはない。しかし乗り継ぎの便を考えて、小樽再訪を選びました(お寿司付き)。帰路札幌で降り、大通公園を往復。やはり大通公園にちょっとだけでも身を置かないと、北海道に来た気がしません。旭川からの飛行機夜の便で、羽田着。一気に気温が上がり、汗が噴き出してきました(完)。