含蓄深いシュトラウス2015年10月04日 11時21分23秒

9月30日から、いずみホールのモーツァルト・シリーズ2015が始まりました。トップバッターはハーゲン四重奏団です。今年の特集は1787~1791なので、室内楽で焦点を当てるべきは、弦楽五重奏曲。しかしあらかたの名グループは「四重奏団」ですから、川本嘉子さんを加えて1曲だけ五重奏曲(ハ長調K.515)をやっていただき、あとは《プロシャ王》と《ハイドン・セット》から1曲ずつ、というプログラムを組みました。

要するに比較に収斂したわけですが、前半の精妙な四重奏を聴きながら、五重奏との対比は十二分に出そうだ、と予想しました。果たせるかな後半は、「ヴィオラ+1」による重量感と表現の広がりが歴然と感じられ、大きな盛り上がりに。お客様からも、五重奏曲をもっと聴きたい、というリクエストが寄せられました。やっぱり、モーツァルトの後期は五重奏曲です!でもなかなか、アレンジがむずかしいのです。

10月1日に新国立劇場の《ラインの黄金》、3日に東京二期会のシュトラウス《ダナエの愛》と回ってみると、日本もオペラの国だなあ、と思います。《ダナエの愛》は過去に演奏会形式上演が一度あるだけだそうなので、事実上の日本初演。シュトラウス晩年の含蓄深いオペラをこの歳で初めて知ることができ、感無量です。

知られざる大作を取り上げるだけでも蛮勇を奮わなければならないのに、これだけのレベルの上演に仕上げるのはさぞたいへんだっただろうと、ついつい、見えない部分の努力を想像してしまいます。たいしたものですね。

準・メルクルさんの指揮でみずみずしく流れるオーケストラの上で、佐々木典子さんがみごとなドイツ語で潤い豊かに歌われた終幕を何度も思い起こしながら、帰路につきました。