ロマンティスト2016年12月25日 22時02分07秒

「ホールを奏でる」という形でお示しした価値観について、補足しておきます。

演奏が聴衆に響きを届けて成り立つものであるとすれば、音響体としてのホールを味方につけることが、演奏家には大きなアドバンテージになると思います。ホールの響きを体感することで、演奏家と聴き手が一つに結ばれるからです。

でも演奏家には、それを大切にしている人と、あまり関心をもたない人がいるように思うのですね。2000人のホールでも200人のホールでもまったく同じに演奏する人が、案外少なくないように思えるのです。これは損だというのが、私の意見です。

さて、大阪から名古屋まで戻ってきた、先週の金曜日。朝6時に起きて新幹線に乗ろうとタイマーをかけましたが、乗り遅れたらたいへんだ、タイマーは鳴らない可能性もあるぞ、と思ったらと気が気ではなくなり、結局、まんじりともせずに朝を迎えました。

ホテルを出、余裕をもって名古屋駅に向かいました。ところが駅は人であふれ、6時台の東京行き普通車が、全部満席なのです。旅慣れない家族連れが長蛇の列をなしていてなかなか新幹線エリアに入れず、危ないところでした。こういう中継ぎは、やらない方がいいようです。

10時からの「たのくら」を立川で終えると、さすがに疲労を実感。会食をパスして家で休み、多少の準備をしてから、夜のレクチャーコンサートに臨みました。朝日カルチャー新宿校の音楽室で、敬愛するピアニスト安井耕一さんと、音楽におけるロマンについて語り合おう、というのです。

旧同僚の安井さんを私はロマンティシズムの権化のように思ってきたのですが、ご本人は、いや、自分は職人だ、とおっしゃいます。そこで、安井さんがロマンティストか職人か、という見極めをサブテーマに設定し、コンサートを進行させることにしました。

最初緊張しているようにも見えた安井さんですが、持ち前の音楽に対する愛は抑えるべくもなく、シューベルトに、シューマンに、ブラームスに、ロマンの溢れる会になりました。それが濃厚でも主観的でもなく、透明な響きの中でおおらかに立ち上がるのが、安井さんの職人芸です。

終了後はご夫妻と、ネットで探しておいたお店へ。風俗街のど真ん中を通ることになって肝を冷やしましたが(通らずにも行けます)、ようやく新宿に、おいしく雰囲気もよくて話しやすい、とてもいいお店を見つけることができました。いずれご紹介します。

盛り上がった会話の中で、そういう先生こそロマンティストではないか、という反撃が・・・。どうなんでしょうね(笑)。