歌集『ゆき』より私撰2016年12月19日 00時31分19秒

阿部久美さんの歌集『ゆき、泥の舟にふる』。北海道新聞短歌賞をとられたというこの歌集から、私の好きな歌を6つ、選んでみました。何段階かかけて絞り込みました。分類はオリジナルとは別に、私の独断でさせていただきました。横書きになっちゃってすみません。

(住み処)
人を待ち季節を待ちてわが住むは昼なお寂し駅舎ある町

(叙景)
夏終わるうずくまりたる砂浜のかもめは群れてみな海をむく

(旅)
旅の荷を解いて思えばふるさとは実(げ)に暗々と海に抱かれる

(言葉)
群生のこの黄の花の名を尋ねそれきり今日の言葉が尽きる

(情念)
弱い雪ためらいながら降りてくる熱(ほとぼ)りのある男女の世へと

(音)
蝋燭が尽きてみずから消ゆる音(ね)はこの世にそっと美しきひとつ

オビにも選ばれている「わがうなじそびらいさらいひかがみにわが向き合えぬただ一生(ひとよ)なり」という歌のページに挿入されている後ろ姿、ご本人でしょうか。きっとそうですよね。

たまっている諸々のご報告、もう少しお待ちください。