イメージは仏様2017年03月26日 22時55分53秒

土曜日にいったん戻り、放送の準備をしてから、日曜日、ふたたび大阪へ。バッハオルガン作品全曲演奏会シリーズのコンサートが月曜日にあり、日曜日にはマスタークラスが開かれるのです。

ジャン=クロード・ツェーンダーさんは、演奏家としても研究者としても著名な方で、私はドルトムントのバッハ・シンポジウムでお目にかかっていました。ちょうど先生がドルトムント大学の名誉博士を取られたときです。その後『バッハの初期作品--様式、成立年代、作曲技法』という2巻本の研究書を出され、ブライトコプフからは新校訂楽譜を出版中、という大先生です。

にもかかわらず、仏様のように柔和な笑顔の、人当たりのいいお方なのですね。私も失礼がないよう、先生の研究を逐一参照して解説を準備しました。ちなみにグレーゾーンから入れていた小さい曲が2曲、偽作としてボツになりました(笑)。

月曜日のコンサート、最後のホ短調プレリュードとフーガを除いてすべてが、初期作品というプログラムでした。ホ短調とその関係調を軸とした選曲の結果そうなってしまったわけですが、普通の演奏家だったら、もたないだろうと思います。

しかしさすがに初期作品の権威で、この曲はこうあるべきと確信を込めてお弾きになり、少しもゆるみがありませんでした。笑顔に似合わず、強靱な構成力をもった演奏なのです。最後のライプツィヒ作品では、いずみホールのオルガンが、いままで経験したことのないほど壮麗に鳴り響きました。

報告するとこうなるのですが、私は休憩前のインタビュー・タイムを仕切るという責任があるので、良かった良かったでは済みません。今回といえば、オルガン席から戻り、演奏が始まったとたん、しまったあそこを訳し忘れた、あそこはもっとこう訳すべきだった、などと反省に襲われ、いつもより、後悔が長引きました。

自己採点は70点。そのぐらいが力に見合ったところなのでしょうが、なんとか100点を取りたい、と思うたちなんですよね。それをひきずっていたら、翌日新幹線までお連れしたスタッフから、先生が昨日のインタビューは本当に良かった、彼もきっとそう思っているだろう、とおっしゃっていたと聞き、一気に肩の荷が下りました。私がどう訳したかは、先生、お分かりにならないはずですが(笑)。

先生とは、国際音楽学会の場(藝大)であっけなく再会しました。コンサート後、先生をお弟子さんたちが囲んでいる写真をお見せします。先生(左から5人目)が小さくなっちゃってすみません。