4月のイベント2017年04月02日 09時58分40秒

新年度ですね。気分一新、どうぞよろしくお願いします。といっても、3月の予定が消化しきれず、仕事が遅れていて申し訳ありません。

今月は、朝日カルチャーセンターの仕事が合計7つもあります。

新宿校が4つ。定例の水曜日は5日と19日で、10:00~12:00の「オペラ史初めから」は、モンテヴェルディ《ポッペアの戴冠》全3回の、1と2です。13:00~15:00のバッハの新録音を比較紹介する講座は、今回(最初にして最後ですが)バッハ以外を取り入れました。今月は《メサイア》を2回でやります。

「宗教改革と音楽」という講座を頼まれていましたので、2回で組みました。20日(木)10:00~12:00に、その第1回。「旧約聖書とルター派音楽」というタイトルでやります。メインはシュッツです。(来月、「新約聖書とルター派音楽」になります)。

26日(水)19:00~20:30に、レクチャーコンサートをやります。出演者はウェーベルン+ハンマークラヴィーア・ソナタのCDで大ブレイク中の瀬川裕美子さんです(ブレイクのほどは、日経の動画入り記事をどうぞhttp://style.nikkei.com/entertainment/DF280120166611)。曲はバッハの《ゴルトベルク変奏曲》です。ウェーベルンに隠れてしまいましたが、彼女のCDは、日本人がピアノで弾く《ゴルトベルク》として、有数のものだと思います。ナマ瀬川をご体験ください。

横浜校のモーツァルト講座は、22日(土)13:00~15:00。20番台のピアノ協奏曲に入っていますが、今度は「短調の後は」と題して、第21番ハ長調」を採り上げます。

さらに、立川校があるのです。今度から、2回ワンセットで私の「名曲探訪」シリーズをやることにしました。15日(土)と29日(土)の13:00~15:00で、テーマは「モーツァルトの三大交響曲」です。まだ触れておられない方、立川までどうぞ。

このうち15日(土)は、10:00~12:00に同じ立川で「たのくら」があります。テーマはオッフェンバックの《ホフマン物語》。「怪奇なる娯楽その1」と題しています。

恒例の早稲田大学エクステンションセンター中野校の春講座が、13日(木)から、毎週計5回で行われます。時間は15:00~17:00。前期に「32歳のモーツァルト」をやりましたので、今期は33歳、34歳を採り上げます。題して「モーツァルト、最後の高みへ」。テーマは13日が「北ドイツ訪問の足跡、クラリネット五重奏曲に示された深まり」、20日と27日が「愛の賛歌としての《コジ・ファン・トゥッテ》」です。

「すざかバッハの会」は、ワーグナー《神々の黄昏》その2。《ニーベルングの指環》の最終回となります。須坂駅前のシルキーホールで、23日(日)の14:00~16:30です。

最後に。いずみホールに、私の出番が2回あります。4日に、ライプツィヒのオルガン・コンクールで優勝された冨田一樹さんの凱旋コンサート。バッハ・オルガン作品全曲演奏会の特別企画として催しますが、すでに完売と伺っています。

18日(火)は、ウィーン楽友協会との提携企画で、マルティン・ハーゼルベック指揮のウィーン・アカデミー管弦楽団(ピリオド楽器)による、ベートーヴェンの《運命》《田園》。企画についてハーゼルベックさんがぜひお話ししたいというので、プレトークをすることになりました(19:00から)。要旨を簡潔にご紹介する形で考えています。

17日(月)から21日(金)までの「古楽の楽しみ」は、別途ご紹介します。今月はぜひ、楽しみになさってください。

偉大なる若者2017年04月06日 15時59分02秒

4日(火)、冨田一樹さんのバッハ国際コンクール優勝記念のコンサートを、いずみホールの「バッハ・オルガン作品全曲演奏会」の特別企画という位置づけで行いました。

ヴォルフ先生のリストに基づいて来日するオルガニストが毎回すごいものですから、オルガン演奏における本場の環境や伝統の強みをついつい感じてしまっていた、私。その意味でハードルが高いと思われるオルガン部門を、日本人の青年が、どのように制覇したのか、それはどんな演奏だったのか--。

私は半信半疑に近いほどの不思議な思いで、大阪に向かいました。このコンサート、ありがたいことに早々に完売になったのですが、同じ思いでチケットを買って下さった方も多かったのではないかと思います。

リハーサルにお邪魔し、演奏が始まってからこう思うまで、ほとんど時間はかかりませんでした。「こりゃあ、一位だあ」と。くだんのコンクールの審査員を調べてみると、委員長がラドゥレスク、委員にベーメ、ロト、リュプザムと、いずみホールのシリーズに出た一流の方々が並んでいて、加うるにわれらが松居直美さんと、ヴォルフ先生(+ロシア人一人)。この顔ぶれでの一位はすごいです。

バッハは18歳でアルンシュタットの教会オルガニストになりましたが、当時、これはすごいヤツが出てきた、と思われたわけですよね。私が冨田さんから受けた印象も、それと同質のものだったように思います。内側からほとばしるものがあり、ペダルの迫力は圧倒的。どの作品にも、正面から思い切りよく、まっすぐに切り込んでいるという印象です。

初めからこうではなかったでしょうから、何か飛躍のきっかけがあったのですか、と、舞台上のインタビューで伺ってみました。すると冨田さんは少し考えて、バッハの作曲技法を研究したからかもしれない、と答えられました。作品分析を怠らずやっている、という意味でしょう。

聡明なまなざしで爽やかにそうおっしゃる冨田さんに、私は舌を巻いてしまいました。そう思って後半を聴いてみると、まさに、バッハがその音符をそこに置いた理由が全部わかるように演奏されているのですね。

名オルガニストであるが、それ以上に総合的な音楽家として卓抜な冨田一樹さんでした。これほどの方が日本を中心に活動してくれるのは嬉しいことです。通奏低音奏者としても、指揮者としても成功されるだろうと思います。

4月の「古楽の楽しみ」~聖母マリアの音楽2017年04月08日 09時56分41秒

「古楽の楽しみ」、今月は17日(月)からです。新年度は金曜日が入る計5日の特集になりましたので、かねてからやりたかった、「聖母マリアの音楽」を特集しました。時間と経費をたっぷりかけて準備し、多彩なプログラムを作りました。思い入れという点では、過去7年余で随一です。

17日(月) マリアと中世
 古代ギリシャ賛歌、グレゴリオ聖歌、中世オルガヌム、いくつかの写本(カルミナ・ブラーナ、聖母マリアのカンティガ集、ラス・ウェルガス写本、モンセラートの朱い本)から。

18日(火) マリアとルネサンス
 ダンスタブルとデュファイの「御母」つながりのモテット、マリアに献げるオルガン曲、「アヴェ・マリア」の聴き比べ(グレゴリオ聖歌、ジョスカン・デ・プレ、ウィリアム・コーニッシュ、オケゲム、ヴィラールト)。カンツォーナを1曲はさんで、パレストリーナとラッソの競演。後者がまたアヴェ・マリアになります。演奏はシャンティクリア、ヒリヤード、タリス・スコラーズ、PCAなど。

19日(水) マリアと雅歌
 旧約聖書『雅歌』のテキストによる、乙女マリアの音楽。いくつかのテキストに焦点をあて、パレストリーナ、ラッソ、レヒナー、ビクトリア、そしてモンテヴェルディを比較します。モンテヴェルディは《ヴェスプロ》から3曲入れましたが、先般ご紹介したザ・シックスティーンの演奏を使いました。

20日(木) 「海の星」のマリア
 絶美のイムヌス、《めでたし海の星Ave maris stella》の大特集です。グレゴリオ聖歌で開始し、作曲者不肖の13世紀モテット、ダンスタブル、デュファイ、ジョスカン、モンテヴェルディと来て、《ヴェスプロ》の〈聖マリアによるソナタ〉をはさみ、カヴァッリで締めくくりました。もとの聖歌がすばらしすぎるためか、聖歌に基づく曲が多い反面、そこから離れた新作は少ないと気づきました。その例外が、カヴァッリです。

21日(金) マニフィカトのマリア
 「マニフィカト」は『ルカ福音書』の伝えるマリア自身の歌ですから、最後はどうしてもこれになります。グレゴリオ聖歌の後、伝デュファイ、クロード・ル・ジューヌ、ジョヴァンニ・ガブリエーリ(12声)、モンテヴェルディ(7声)の4曲を紹介しました。

古い音楽の良さを痛感する作業過程でした。あえて言えば、月曜日には新鮮な驚きが、水曜日には官能の魅力が、木曜日には美の真髄があると思います。火曜日と金曜日は、王道を行くものです。どうぞよろしく。

熊本の春2017年04月15日 01時26分41秒

昨日(4月14日)は、大地震後一周年を迎えた熊本の映像が、どのチャンネルにも流れたと思います。私も行ってきました。ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞というプロジェクトに関われていることが嬉しく、祈念賞がらみの行事で、熊本の土を踏みました。

うららかな日。飛行機を降りるだけで、伸びやかな解放感に包まれました。こんないいところはそうそうない、というのが実感されます。復興も、思いの外進んでいるよう。ウィーン・フィル・メンバーの弦楽四重奏は県庁と熊本城で行われましたが、その献身的な音楽への姿勢には、いつもながら頭が下がります。

当日のメインは、九州交響楽団にウィーン・フィルの4人を加え、さらに日本各地のオーケストラからの参加者と有志合唱を加えて、マーラーの《復活交響曲》を演奏すること。演奏が終わったタイミングで1年前地震がまさに起こった時間が来るため、そこで黙祷する、という計画です。

それに合わせて、熊本芸術劇場におけるコンサートの開始が20:00。これを聴くと、東京に帰れません。そこで、中途半端で申し訳ないことでしたが、ゲネプロのみに出席して帰路に就きました。土曜日午前中に「たのくら」の例会があるためです。福岡でつなぎ宿泊して一番機という案も考えましたが、飛行機が少しでも遅れるとアウトになるので、大事を取りました。

熊本城の広壮さにはびっくり。その広場にあった見事な木と、名残の桜をご覧ください。今年は熊本で合唱コンクールがあるため、再訪する予定です。




補液2017年04月22日 22時10分19秒

緊迫スケジュールがまだ続いていますが、文字通り、話を聞いてくださる方々から元気をいただくことで、もう少しのところまで乗り切ってきました。明日は須坂です。

そうこうしているうちに、愛犬の「陸」が腎不全になり、先が見えない、という状況になっています。家で1日おきに補液をしているのですが、嫌がって隠れているのを探し出し、点滴。これが犬にとって幸せかどうかわかりませんね。犬は、死について考えたりしないでしょうから。

忙しくなると郵便がそのまま積み上がるのが、いつものことです。しかし今が特別なのは、講座や放送でたくさん使ったCDが椅子の周囲に積み上がり、いくつもの塔ができていること。崩れたのを修復したり、見あたらないのを探したりが面倒。やはり使ったらすぐ戻すのが、仕事の能率を保つ秘訣のようです。

叙唱 レチタティーヴォ2017年04月24日 23時48分26秒

タイトルは、阿部久美さんの歌集続編です。六花書林から、「第3歌集」として発売されました。

タイトルから予想されるように、今回の歌集には久美さんのクラシック音楽好きが、至るところに反映されています。不肖私の放送も、「残響」というコーナーで、歌にしていただきました。以下に引用します。

    NHK-FM「古楽の楽しみ」礒山雅氏が

たましひとぢかに通へるほそき道ありてたどるはフルートの音と

(たくさんの歌たちの中から、今回も私撰により5編をご紹介します。)

    「やがて、はなれて」のコーナーから

察するに切りだしかねてゐる人か真紅の花にまづ触れており

    「あなたに、あなたへ」のコーナーから

日の暮れを律儀にしぼむ花ありてこの世の何をうたがふべきや

    「独奏〈ソリテリー〉」のコーナーから

心地よい眠りは来るよ下手から芝居の幕を引くやうにして

日の暮れにさへづる鳥としたしみて家路は細き石みちがよき

あのときの凍える言葉を解きたれば傘さすほどもない雨に似る

(私撰の感想)
久美さんの歌は多様で、奔放なもの、自在なもの、口調の勢いを生かしたものなど、いろいろです。私が選んだのは、どうやら流れよく自然なものに集中しているようで、久美さんの歌への専門筋の評価とは違っているかもしれません。「私撰」ということでご容赦ください。

(付記)最後の歌は、私のよくする経験でもあります。

ツキの帰趨2017年04月27日 23時38分04秒



これは東大の正門を入ったところから、南側を撮ったものです。昔いたのは左側の建物ですが、ずいぶん建物が増えて、密集した感じになりました。

通っていたのは半世紀近く前ですから、変化して当然。昔は胃が痛いのをがまんして通っていたわけですが、さすがにこれだけ歳月が経つと、ゆとりをもって眺められます。

訪れたのは、書類を1つ作ってもらうため。どんな対応になるのか、後日また取りに行くことになるのだろうな、となどと思って依頼書を出したところ、若くかわいい職員さんがきわめて感じのいい対応で、手際よく、その場で作ってくれました。手数料なし。ちょっとうきうきした気分になって、理事をしているある財団に向かいました。

そこでふと気になったのは、この出来事が夜のコンサートに与える影響です。ご承知のように、私はツキの量は一定、事前に思わしくないことがあると本番がうまくいき、万事順調のときは本番で何かがある、という立場なので、これはどうなのかと心配になってきました。

本番というのは朝日カルチャー新宿校のレクチャーコンサート(26日)。大ブレイク中の瀬川裕美子さんの弾く《ゴルトベルク変奏曲》ということで、たくさんのお客様に来ていただきました。

瀬川さんの同曲CDは、演奏ももちろんですが、各変奏に標題を付けるセンスや御自身の解説がたいしたもので、私はその標題と、ライナーノートから抜粋した2つぐらいのセンテンスを、変奏の間でアナウンスすることにしました。これは音楽の流れを止めてしまう危険のあることですが、30も変奏のある曲だと、途中でどこだかわからなくなってしまうのが、私も経験してきたこと。ですので、各変奏の個性をしっかり把握してもらう方に賭けました。レクチャーコンサートですからね。

瀬川さん、とても良かったです。頭のいい方で、哲学や諸芸術に関心を寄せる、幅の広いところがあります。ウェーベルンやブーレーズについて、とくに熱く語られます。ご注目ください。


3月・4月のCD2017年04月29日 12時30分04秒

先月書きそびれましたので、今月、併せて書きますね。

3月選は、ラファウ・ブレハッチのバッハ・リサイタル(グラモフォン)でした。清潔で爽やかなばかりでなく、洞察力も十分に示された、本格的なバッハです。《クラヴィーア練習曲集》の4つの巻から《イタリア協奏曲》、2曲の《パルティータ》、《デュエット》を選び、《主よ、人の望みの喜びよ》で締めているということは、次は《ゴルトベルク変奏曲》ということですね。

今月は趣を変えて、「アメリカン・コンポーザーズ」という、20世紀アメリカの作曲家たちによる打楽器音楽を選びました(コジマ録音)。上野信一&フォニックス・レフレクションの演奏がとても軽やか、リズムに血が通っていて、心地良いのです。トレヴィノ、クラフト、ライヒ、ハリソン、ケージに加えて、ヴァレーズも入っています。

アヴィ・アヴィダルによる、ヴィヴァルディのマンドリン協奏曲集(グラモフォン)もすごいと思いました。編曲が多くなってしまうのは仕方ないですが、マンドリンにしてこの表現力は驚異です。

藤木大地さんの名歌選集(KKC)も良かったですね。「言葉の端正な扱いと匂い立つリリシズムで魅力満点」なのは、藤木さんならではです。