モンテヴェルディ、リハーサル始まる2014年07月14日 08時56分58秒

ご案内している8月1日、サントリーホール・ブルーローズにおけるモンテヴェルディのコンサート、昨日日曜日に、横浜の渡邊邸で初練習しました。10時から、夜の9時まで!時間差はありましたが全員が参加し、ほぼ全体像が見えてきました。

今回ヒロインとしてご参加いただいた、加納悦子さん。ヤーコプス指揮の《ポッペア》における小姓役での活躍はDVDでおなじみですが、今回のペネーロペとオッターヴィアは初役とか。にもかからわず誰よりもよく勉強してこられ、早くも圧巻の歌唱で、一同感嘆。これが一流というものなのですね。

《ウリッセの帰還》を手がけるのは、今回が初めてです。当初は《ポッペアの戴冠》と比べるとずいぶん見劣りするように思っていたのですが、勉強するにつれ、真価がわかってきました。今回取り上げるのは4つの場面も、お楽しみいただけると思います。

いい公演にできるよう、みんなで努力してまいります。

綱渡り続く2014年07月11日 10時34分10秒

毎回同じような記述になってしまって恐縮ですが、9日(水)の綱渡り記にお付き合いください。

この日は、サントリー音楽賞&佐治敬三賞の贈賞式で、私は、乾杯の発声をするという役割をいただいていました。手帳によれば、18時からのスタート。昼間はNHKの準備に費やし、16:30に家を出るために、16:00からの30分を、原稿の用意に宛てるつもりでした。3つの団体へのお祝いの言葉を、磨き込んだ形で差し上げようと思ったからです。

16:00が近づき、入浴の前に場所を確認しようと案内状を探し出したところ、髪の逆立つような記述が。そこには、授賞式17時(!)から、祝賀会18時から、と書かれていたのです。

脱兎のごとく支度し、飛びだそうとして気付いたのは、腕時計が見あたらないこと。スマホがあればいいか、と思ったら、その充電を忘れている。大騒ぎで探すこと数分、タクシーが来てしまったので、一刻を争う状況ではあるが、時計なしで駅に向かいました。

鞄の中を見ると、なんと時計が入っている。忘れないように、先に入れておいたらしいのです(それを忘れるという、よくあるパターン)。国立駅の階段を駆け上がると、そこに電車が来るという幸運に恵まれ、17:00少し前にサントリーホールにたどり着くことができました。

そうしたら意外にも、私は胸に花をつける来賓扱いで、堤剛さん以下受賞者の揃う待合室に案内されるではありませんか。会場にも、堤さん、3人の受賞代表者(鈴木雅明さん、有馬純寿さん、ローラン・テシュネさん)、文化庁長官といっしょに入場し、一列目に着席。ああ間に合ってよかったと、何度も心で反復しました。

テレビ朝日のすてきなアナウンサー、坪井直樹さんの快活な司会で会は進み、ついに乾杯のシーンへ。原稿が作れなかったので若干の破綻はありましたが、心配した立ち往生はなく、務めることができました。鈴木雅明さんは「・・とバッハ・コレギウム・ジャパン」という形での受賞なので、そのことの重要性に触れ、メンバーがいっしょに主役として輝けるような、愛のある演奏を追求して欲しい、と申し上げました。

世界的に評価のある団体の功績を本賞で顕彰する一方で、限られた聴衆を前に行われためざましいコンサート(東京現音計画の「イタリア特集Ⅰ」とアンサンブル室町の「東方綺譚」)を紹介するお手伝いができ、末席にいる人間としても嬉しい気持ちの残る、今年の授賞式でした。それにしても、間に合ってよかった!

お詫び続き2014年07月09日 12時58分16秒

大阪で2泊した翌日の土曜日(5日)は、横浜の朝日カルチャーで、モーツァルトの1日講座。昔のように「ぐっすり寝てしまって・・」ということはさすがに最近はないので、早く横浜に着き、自由時間を満喫。13:00から、講座になりました。

今回出した本のエッセンスをまとめて提示し、詳細は10月からの新講座(第4土曜日)で、というのが、カルチャーからいただいたご配慮。今回の見直しによって後期の作品がどんな風に違って見えてきたか、ということを鑑賞を交えてお話しし、ちょうど15:30になりました。10分間質疑応答で延長し、受講生とお別れをして、教室を出ました。

すると私を見つけた講座担当の女性が、驚愕の表情で駆け寄ってくるではありませんか。叫ぶようにおっしゃるには、「先生!今日は16:30までですよ!」と。

私も驚きましたね。2コマ、16:30とわかってはいたのですが、15:30が近づいてずいぶん話した気になり、すっかり錯覚していたのです。

大あわてで教室に戻り、ちりぢりになっていた受講生を再招集。あらかた集まっていただけたのですが、予定した話は終わっていたので、どうしたらいいかを頭で考えつつ、平身低頭のお詫び。幸い受講生から次々と質問を出していただけたので、なんとか形をつけることができました。うっかりもいいところで、まことに失礼しました。

8日(火)は大阪音大定例の講演のため、ふたたび大阪へ。大学で取り上げている《コジ・ファン・トゥッテ》の話をして欲しいということでしたので、持ちネタのまとめに精を出しました。最後の仕上げ(パワーポイント・ファイルへの楽譜の貼り込み)で時間が切迫し、新幹線に持ち込むか、仕上げてから急ぐかの選択に直面。後者を選択し、家を出ました。

そうしたら、南武線で「ホームから転落したお客様を救助」するという事故が起きてしまったのですね。新幹線の乗り継ぎも悪かったため、遅刻の避けがたい事態に。連絡通りの15分遅れで到着でき、ほっとして会場入りしたら、よれよれで息せき切ってやってくると思ったのに、意外に平然としていた、とのご感想が。なるほど、横浜のショックに比べて、対応が甘くなりました。次に万一のことがありましたら、よれよれでたどり着くようにいたします(笑)。

講演は、声楽のクラスからもたくさんの受講生が来てくださり、いいペースで進行。いつもながら、庄内駅前での打ち上げが、楽しい雰囲気でした。ありがとうございました。

ここは飲めます!2014年07月07日 23時59分11秒

大阪のおいしいお店を開発中。いずみホールからほど遠くないところにとてもいいお店を見つけたので、「ここは隠れ家にしておこう」という声を振り切って、ご紹介します。「Vivace」という音楽ファンにはうきうきするような名前をもつ、イタリアンのお店です。場所は京橋駅のそば、京阪国道沿いです。

まず、雰囲気がいい。お連れした方は皆さん、京橋(=コテコテの大阪)にこんなに洗練されたお店があるのか、とおっしゃいます。長身で感じのよい青年マスターと、愛嬌のある店員さんたちのもてなしも満点。特筆すべきは、選び抜かれたワインがとても安い値段で提供されていることです。カウンターもあり、深夜まで飲めますから、いずみホールのコンサート帰りには最高ではないかと思います。今回のロトさんがらみでは、二晩続けて行ってしまいました。


これはVivaceではないですよ。大阪から環状線で一駅、天満です。ここ大阪やねん、という感じのお店が密集している一帯。駅のすぐそばに「グリーンカレー専門店」というお店を見つけ、入ってみました。「メティ」というお店で、マスコミにも紹介されているようです。とてもおいしかったので、ご紹介しておきます。

ダニエル・ロト、空前の《大フーガ》2014年07月05日 23時47分07秒

更新が遅れました。木曜日の夜大阪入り。金曜日10時からの、ロトさんのリハーサルに備えるためです。今回のオルガン・シリーズの中では知名度的にも上の方なので期待していましたが、リハーサルを聴き、これはモノが違うぞ、という感じがひしひし。バッハのポリフォニーがすみずみまで明晰に、確信をもって表現され、曲ごとの存在感が、ただごとではないのです。「フランス人のバッハ」どころではない、本質への肉薄です。

誠実な方で、前日はレジストレーション(音決め)に終日、時間を費やされたとか。今回は、後半の枕に置かれるオルガニストへのインタビュー内容を前もって予告しておこうと考え、そんな苦労話を後ほど伺いましょう、と申し上げて、コンサートが始まりました。

バッハ最初期の《ノイマイスター・コラール集》の曲たちが目が覚めるほど立派に響き、初期作品《レグレンツィの主題によるフーガ》が信じられないほと壮麗に盛り上がって、前半が終了。さあ、危険がいっぱいの、インタビュー・コーナーです。

ロトさんのご厚意でドイツ語でやらせていただいたインタビュー。バッハの調性への取り組みとか、最後を飾る《大フーガ》BWV542の現代音楽そこのけの内容とかに話が向かいました。正直に申しますと、私はこの日とても集中力があり、細部に至るまですべて、克明に通訳できたのです。やっていて、よしっ、という気持ちになりました。

これが悪魔のいざない、落とし穴でした。ひとしきり通訳が終わったときに頭が真っ白になり、次の話題が、すべて飛んでしまったのです。こんな話をお聞きします、とこの日に限って前振りしていましたので、お客様には、本当に申し訳ないことをしました(汗)。

前半は通して演奏されましたが、プログラムの配列から考えて、途中で拍手を入れた方がいいように思いました。ロトさんは、どちらでもお好きなように、とおっしゃいます。そこで、トリオ・ソナタ(第2番ハ短調)の前後で拍手を入れていただくよう、お客様にお願いしました。結果として、トリオ・ソナタを、新鮮な気持ちで聴くことができました。リハーサルではやや重かったトリオ・ソナタが、本番ではとても滑らかになり、私の好きな第3楽章には、なんと美しい音楽だろうと、感動をもって耳を傾けました。

その後3曲コラールがあり、エンディングの《大フーガ》になります。そこまで通して、といったんお客様に申し上げたのですが、聴きながら、これは切るべきではないか、と思い始めました。仕切り直しをしてから《大フーガ》と向かい合うべきだ、と思われたからです。

でも一度言ってしまったし、どなたかコラールの後で拍手してくださるといいが、と思っていたら、ありがたいことに、拍手が出たのですね。これはお客様の殊勲。どうやらtaiseiさんだったようです(笑)。

超名曲、ト短調の《大フーガ》は、楽曲への深い理解とエネルギーにあふれた、空前の名演奏でした。これだけのコンサートを一生のうちになかなか聴けないのではないか、と思いつつ私が思い起こしていたのは、恩師、柴田南雄先生が私に語ってくださった言葉。それは、演奏の価値を決めるのは「音楽と向かい合っている人間の大きさだ」というものでした。

終了後、ロトさんに涙ながらに抱きついてしまい、たちまち親友に(笑)。応援してくださった方たちと、ビールを飲みました。その席で「指揮はなさらないのですか」と訊いたところ、「私はやらないが、息子がやっている。フランソワ=クサヴィエ・ロトという名前だ」とのこと。「エー っ!」と驚きましたね。このブログでも紹介したすばらしい指揮者、新譜がことごとく面白く、私が一番楽しみにしている指揮者が、なんと息子さんだったとは。

「ロート」とご案内していましたが、「ロト」と修正いたしました。はっきりそう発音しておられましたので。

モンテヴェルディやります!2014年07月01日 10時37分40秒

サントリーホール・ブルーローズでモンテヴェルディの宗教曲とマドリガーレを「愛の二態」と題して公演してから、1年が経ちます。その第二弾として、オペラ篇を企画しました。8月1日(金)、19:00からです。

今回は、晩年の二大名作、《ウリッセの帰還》と《ポッペアの戴冠》を、「愛の二態」として対比します。前者は、トロイア戦争から待てど暮らせど帰還しないウリッセ(オデュッセウス)を妻ペネーロペが貞節を貫いて待ち、ついに再会を果たすという純愛物語。後者は、皆様ご承知の通りの、悪女の野望が成就する物語です。踵を接して作曲された、あまりにも対照的な両オペラです。

今回は抜粋かつ演奏会形式ですが、キャストが自慢。昨年大成功した櫻田亮さんをウリッセとネローネに据えるのみならず、加納悦子さんがペネーロペとオッターヴィア役で出演してくださいます。《ウリッセ》冒頭の長大なモノローグがどれほど感動的になるかと、今から楽しみです。

加納さんはルネ・ヤーコプスの《ポッペア》プロダクションに参加され、こんなにいい曲があるのかと、心から思われたそうです。渡邊順生さんと学生たちで始めた《ポッペア》ですが、須坂、西国分寺、国立を経て、サントリーホールに進出できることになりました。そのご縁で、iBACHのキャストも、何人か出演します。その他のキャストは、以下の通りです。

人間のはかなさ&ポッペア/阿部雅子、時の神&セネカ/小笠原美敬、幸運の神&小姓/川辺茜、愛の神&エリクレーア/高橋幸恵、ミネルヴァ&パッラデ&侍女/渡邊有希子、セネカの親友たち/大野彰展、小藤洋平。器楽は伊左治道生、渡邊慶子、エマニュエル・ジラール、渡邊順生と発表されていますが、西山まりえさんもハープで華を添えてくださることになりました。

前売4500円でぴあに出ていますが、コメントで申し込んでいただければ、出演者割引でご案内します。なにとぞよろしくお願いします。

7月のイベント2014年06月29日 10時29分13秒

恒例、7月のご案内です。「古楽の楽しみ」はNHKの都合で、《ブランデンブルク協奏曲》の再放送になりました。次の番組は「キャノンズのヘンデル」というテーマで準備しています。またご案内します。

コンサートのステージに乗るのは、4日(金)19:00、いずみホールのバッハ・オルガン作品全曲演奏会です。今回は知名度の高いダニエル・ロート氏(仏)の登場で、《大フーガ》BWV542をトリに、ト短調の作品を多く含む、魅力のプログラムです。

朝日カルチャーの講座がたくさんあります。水曜日隔週の新宿講座は、今月は2日、16日、30日の3回です。10:00からのワーグナーは、いよいよ《神々の黄昏》。とりあえず序幕から入り、ゆっくり進めます。13:00からの《ヨハネ受難曲》は、イエス死後の《マタイ》引用の部分から始めて、重要なソプラノのアリアに至る予定です。

横浜では5日(土)に、10月から開始するモーツァルト講座のプレイベントを行います。「1日で学ぶモーツァルト」というテーマで、13:00から16:30まで(1回休憩)。今回の著作で得た新しい認識を、とりまとめてお話しします。必然的に晩年がテーマとなります。定例のエヴァンゲリスト講座・演奏篇は27日(土)13:00から。今月は「古楽器はどう違うか--弦楽器、合奏」篇です。

8日(火)は大阪音大での節目の講演。今回は、大学で取り組んでおられるという《コジ・ファン・トゥッテ》についてお話しします。15:15から。

19日(土)の立川「楽しいクラシックの会」は(錦地域学習館、10:00~12:00)、ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》に入ります。とりあえず第1幕です。すぐに移動して、東大和市のハミングホールで行われるイベント「アンサンブル・フェア」へ。地域のくつろいだ音楽コンクールで、私は審査員です。明後日、打ち合わせをします。

24日(木)19:00からは、市川混声合唱団のお招きで、《マタイ受難曲》のお話をします。場所は男女共同参画センターです。お近くの方々、どうぞよろしく。

今月のCD2014年06月28日 07時09分13秒

6月の特選は、椎名雄一郎さんのオルガンで「バッハへの道」(ALM)。世界的名器である、ノルデンのシュニットガー・オルガンが使われています。4月に、できれば足を伸ばしたいと思っていてあきらめたところです。

ブクステフーデ6曲、ベーム3曲、初期バッハ2曲という、みごとな選曲。演奏も堂々としていて、レパートリーを知悉した人にのみ可能な信頼性があります。勉強しておられますね。

準推薦は、デオドール・クルレンツィス指揮、ムジカエテルナによるモーツァルト《フィガロの結婚》。古楽の主張を、随所に感じさせるモーツァルトです。いわゆる大歌手揃いというのではないですが、歌い手がみな楽器に耳を傾け、楽器の響きに融合するように歌っているのが驚き。フルヴォイスで歌おうとする傾向が強いオペラの世界で、勇気ある提言と受け止めました。完成された演奏ではありませんが、声楽の方々に聴いていただきたいと思います。フォルテピアノが八面六臂の活躍をします。

サッカー素人談義2014年06月27日 01時06分48秒

皆さん、しばらくサッカーに熱中しておられたことと思います。私はサッカーには基本的に興味がないのですが、報道の過熱にあおられ、コロンビアとの最終戦を観戦しました。ファウストの翌日、大阪、ニューオータニの一室で、早起きしました。

素人ですから、批判的なコメントはできません。ただ、一般論として、素朴な疑問を感じるのですね。それは、攻めるのこそが日本のサッカー、ということで、ほとんど攻撃中心の戦術が採られていたことです。もちろん点を取らなければ勝てないわけですが、強い相手に対して正面から攻めていくというのは、古来の兵法に照らしても、どうなのでしょう。

私は、将棋が少しわかります。将棋の世界では、ヘボは攻めるだけ。守りが強くなって初めて、ランクが上がってゆきます。なぜなら、攻めは自分の都合を中心に考えて進められますが、守りは、相手がどう来るか、どう来られたら自分が困るかを、入念に考えなくてはならない。すなわち、相手中心に考えるという高等戦術が、守りには必要なのです。名人になるのはたいてい、守りの強い人です。

というわけで、外野が守らず攻めろ!の大合唱になっていたのは、どうなのかと思っていました。それにしても、中南米は、小国もみんな、強いですね。だからこそ面白い、ワールドカップです。

【付記】野球も同じです。交流戦の間に、守備の破綻から大量失点というゲームをいくつも見ました。ソフトバンクの二遊間(本多、今宮)はすばらしいですね。

本質に迫るファウスト2014年06月24日 22時13分42秒

今、イザベル・ファウスト&アレクサンデル・メルニコフのブラームス・ソナタ全曲演奏が終わり、いずみホールからホテルに戻ってきたところです。絶対の自信をもって採ったコンサートですが、満席には至らず。しかし演奏はヴァイオリンの概念を覆すほとんど究極的なもので、満場を驚嘆させたと言って過言ではありません。

ブログで取り上げたかどうか記憶がはっきりしませんが、先般、日本の若いヴァイオリニストたちが大挙して出演するコンサートに接しました。出てくる人、出てくる人ことごとく立派で、すっかり感心。ただその方向は、ソリストとしての堂々とした押し出しを、音でも技巧でも、ステージマナーでも作っていくことに向けられているように見えました。

ファウストは、その正反対なのです。贅肉をすべてそぎ落として、本質そのものに肉薄していく。禁欲的とさえ思える厳しさが解釈を支配していて、効果を狙うところがなく、毅然とした高貴さで、音楽が運ばれてゆきます。徹底した、内方集中。音程がとてもよく、重音が透明に響きます。弱音が徹底して使われるため、聴き手は、ピアノと織りなす繊細な音の綾へと、どこまでも引き込まれる。メルニコフのまろやかなタッチは、ヴァイオリンの心地よい受け皿です。

こういう地道な演奏がお客様の熱烈な支持を獲得するのですから、本物を求める方がいかに多いかということですね。人当たりもよい方で、長いサインの行列にも笑顔を振りまいて対応しておられました。すばらしい芸術家。またぜひ、お呼びしたいと思います。