やるべきか、やらざるべきか2013年07月26日 23時23分26秒

地方ではあまり見かけませんが、東京の駅で必ず出会うのは、署名活動、募金活動です。皆さんは声をかけられても、別にどうとも思われませんか?私は相当ストレスです。「やるべきかやらざるべきか」を自問するのが常であること、声をかける側に、対応しない人に対する非難の心を、つい感じてしまうためです。考えすぎかもしれませんが・・・。

芸大に行くおりの、上野駅。若い二人連れが、いつも声をからして叫んでいます。動物愛護関係。私は犬好きですから、やるべきかやらざるべきかいつも考えてから、こそこそと通り過ぎます。

驚いたのは、痴漢冤罪の署名活動を、ご本人がなさっていたこと(国立駅)。これはとても勇気の要ることですし、私だって間違えられない保証はないわけなので、やるべきか、とかなり思いました。結局しませんでしたが、皆さんならどうされるでしょうか。

どの活動も、大義名分は立派です。でも人生経験からして、全部が善意のものではないだろう、という推測が働くわけです。いかにももっともらしいものが必ずしも善意のものではない、ということも、しばしば経験します。また、いかに気の毒に思えても、裁判にかかわるような事柄に、事情もわからずに署名していいのか、と思うわけです。そう考えると結局署名も募金もできず、こそこそと通り過ぎてしまうのがいつものことです。

楽しいお酒2013年07月25日 12時01分47秒

24日(水)は、難渋していたモンテヴェルディの翻訳をやっと終え(コンサートに出すには翻訳の苦労を体験する必要があると改めて痛感)、芸大《ヨハネ受難曲》ゼミの飲み会へ出かけました。

既報の通り、このゼミにおける学生の真剣な勉強ぶりと発表のレベルはすばらしく、ありがたい相互信頼が出来上がっています。それだけに楽しく有益な飲み会となり、後期に向けて、いい準備ができました。

飲み会の成功に不可欠なのは、お店の良さです。この日訪れたのは、上野駅入谷口の近くにあるサンルート・ホテル1階のイタリアン、「ラ・ココリコ」。いつも学会の委員会のあとに寄っていたところです。リーズナブルな価格の良心的なお店で、若いグループには最適。この値段でよくこれだけのワインが出てくるなあと、感心しました。

私が酒好きだから余計そう思うのでしょうが、食事会、飲み会の効用は絶大。とくに、手作りのコンサートをする場合に壮行会をやっておくと、士気向上に役立ちます。それを予算化するわけにはいかないので、最近は交際費と割り切っています。帰りの時間を気にしながらの打ち上げより、有意義だと感じます。

蛇足ですが、ご一緒した方々の評判がいちばんいいのは、やはり渋谷の「ラ・ゴローザ」です。諸般の事情から今月は行かれなかったのですが、群を抜いているのがお店の静けさ=話のしやすさ。にぎやかなお店がお好きな方もおられるでしょうが、大きな声で話さないとなかなか、という環境と、何人いても1つの話ができる環境の差は大きいです。

今月の特選盤2013年07月22日 11時13分00秒

今月は、アンドレアス・シュタイアーのチェンバロによる「憂鬱をやり過ごすために--ドイツ、フランス・バロック鍵盤作品集」(ハルモニアムンディ、金部インターナショナル発売)を選びました。演奏者にやりたいことの明確なイメージがあり、それがしっかり実現されている、というのが推薦理由です。

「憂鬱をやり過ごすために」というのはフローベルガーの組曲に出てくる注釈で、CDはこれを冒頭に置き、最後に同じフローベルガーのフェルディナント4世へのラメントを置く。その間に、ダングルベール、ルイ・クープラン、フィッシャー、クレランボーらのメランコリーに満ちた作品が並べられてゆきます。減衰するチェンバロの響きに当時の人が重ね合わせた憂鬱を、さらには「メメント・モリ」の思想を掘り下げようという、筋の通ったプログラムです。

演奏も鋭い突っ込みを感じさせるもので、すべてのフレーズに、意味があり主張があるという印象を受けます。文字通り、聴き応えのあるアンソロジーです。

人間国宝!2013年07月20日 22時23分06秒

なんとか過密スケジュールを乗り切ろうと、生活の乱れを招いていた今週の、金曜日(19日)。NHKの収録があり、スタジオに入りました。最近は寄る年波で、声がかすれていることが多く、この日もそれが心配。お世話いただいている女性アシスタントに、「声、大丈夫ですかね」と尋ねてみました。

すると彼女はきっぱりした口調で、「声は大丈夫です。顔が疲れています!」と言うではありませんか。一瞬ガックリしましたが、放送はラジオなので、とりあえず無関係。適当にご想像いただければ、と思います。

終了後三越前に移動し、「イガラシ」で散髪。「顔が疲れている、と言われてねえ」と言ったところ、そこは床屋さんお上手で、「髪が伸びているからですよ」とのこと。折しも、かかっていたテレビから、三味線の今藤政太郎先生が人間国宝になられた、というニュースが流れてきました。

今藤政太郎先生とは大学で知り合い、その後も親友という言葉を使いたくなるほど、親しくさせていただいています。気合いあふれる名人芸と爽やかなお人柄を心から尊敬申し上げていたので、ご受賞に感動。人間国宝とは、究極の評価ですね。おめでとうございます。

20日(土)、「たのくら」の例会。そこでもつい出た言葉は、「顔が疲れている、と言われました・・・」。すると、ある薬通の会員の方が私のもとに近寄り、「この薬をいま1錠、あとでもう1錠飲んでください。そうすれば治ります」と、心配そうにおっしゃいます。私は冗談のつもりで申し上げたのですが、その方は、「この顔の疲れは危急事態」と判断されたようなのです。

ともあれ、顔の犠牲のもとに、なんとか今週を乗り切ることができました。ほっと一息ついている、土曜日の夜です。

夜が明ける2013年07月17日 11時36分38秒

16日(火)は、大阪音楽大学大学院での、論文公開指導。バロック音楽の研究を志す方が、何人もおられるのですね。少しでもいいものを書いていただきたいので、儀礼的にならぬよう、事柄本位に(=厳しく)やりました。自分の考え方は、しっかり伝えられたように思います。

終了後、旧知の中村孝義理事長、これまた旧知の西村理先生、および発表者と学生たちで、ワインのある居酒屋へ。とても雰囲気のいいクラスで、笑いが絶えません。終電まで楽しく過ごし、帰宅。

ツケはちゃんとめぐってきました。今日(水)の2つの講座(午後が《マタイ受難曲》、夜が《ロ短調ミサ曲》)の準備が間に合わず、ついに朝の6時半まで熱中。《ロ短調ミサ曲》は〈サンクトゥス〉から〈ベネディクトゥス〉までを取り上げるのですが、何回もやっているのに見直せば見直すほど気づくことが多く、内容がふくらんでしまいます。以前の講演がとても情けないように思えてきました。

というわけで、遅れている仕事、返信していないメール等、もう少しお待ちください。外遊しわ寄せの頂点になっている今週です。

まつもとバッハの会コンサート報告2013年07月14日 23時44分49秒

7月7日、七夕の日に、松本で手作りのコンサートを開きました。ご尽力いただいた方々への感謝を込めて、ご報告申し上げます。

今回は、「バッハの仕事場を覗く」と題する、6回シリーズの最終回。連続講演をコンサートで締めるというのは、つねに理想的です。関心と問題意識を共有してきた受講生の方々が聴衆となって、熱い感動で盛り上げてくださるからです。講演とコンサートでは本来予算が大きく異なるため、三方一両損のような形で実施せざるを得ないのですが、その手作り感が、かえってコンサートの魅力ともなっているように感じられます。

今回は、オール・バッハのプログラムとし、古楽器、アンサンブル、カンタータという3本の柱を立てました。準備はチェンバロの調達から始まりますが、穂高クラヴィーアさんから楽器の準備、運搬、調律まで丁寧なサポートをいただき、広沢麻美さんの優雅で潤いのある響きが会場を満たして、コンサートは始まりました。曲目はフランス組曲の第5番です。


まず印象づけられたのは、会場となった深志教育会館(私がステージから転落したところ!)の響きと品格が、古楽器にまことにふさわしいこと。地元の名手、塩嶋達美さん(この方がいらっしゃるのでコンサートができます)のフルート・ソナタホ短調も、若手ガンバ奏者品川聖さんの協力を得て、アンサンブルの魅力を発揮しました。


予算上、声楽はアルト(高橋幸恵さん)に絞り、カンタータのアリアを歌っていただくことにしました。調べてみると、アリアの名曲はオブリガートの大半がオーボエ・ダモーレです。尾崎温子さんに実力を発揮していただくには、絶好の場ができました。


もちろんフルート、ガンバも使って、多彩なオブリガートを組みました。


右上のトンボが、松本深志高校の校章です。アリアには、時間をかけて字幕を用意しました(中央のスクリーン)。ところが、歌が始まるとお客様の視線が高橋さんに集中してしまい、字幕は無用の長物に(笑)。操作しているまさお君も、おそらくは無用の長物でした。人気を集めた高橋さん、バッハへの適性を感じさせました。


アンコールの一部として、当日演奏された曲からリクエストしていただくことを企画しました。おそらく、演奏効果に富む第214番のアリア(《クリスマス・オラトリオ》のフルート付きテノール・アリアの原曲)が選ばれるだろうと思っていたのですが、支持が集まったのは意外や、死を瞑想する長大な第125番のアリア。深く聴いてくださったんだなあと、感動。演奏がよく準備されていたことは確かですが、「お客様から力をいただく」形ができていたことも、確かだと思います。最後、《ゴルトベルク変奏曲》最後のアリア(広沢さん演奏)が「魂鎮め」として深い余韻を残し、コンサートが終わりました。

帰りの列車が、「鹿と先行列車が衝突して救出に手間取っている」という理由で1時間40分遅れ、ツキの余剰分をしっかりお返ししました(笑)。

旅行記補遺--ドイツの鉄道2013年07月11日 23時54分52秒

今回もずいぶん鉄道を利用しました。その感想です。

昨年はお仲間の方々とジャーマン・レイルパスを購入して便利をしましたが、今年は、予算を計上してあったにもかかわらず、購入しませんでした。それは、既述の通り、自動販売機が進化したためです。たくさんの項目を選択するようになっているので最初は面食らうと思いますが、目的地、等級、列車の選択など必要事項はわずかなので、慣れれば便利に使えます。窓口はたいてい行列になっていて、時間がかかります。

優さんから、カードを使ってトラブルが起こったという書き込みがありましたね。私はすべて現金を使い、問題ありませんでした(どの紙幣が使えるか、画面で指示されるので注意する必要あり)。チップに必要な小銭作りにも、自販機が役に立ちました。自販機は乗り継ぎも指示してくれますが、その場合は書き留めておかないと、あとでわからなくなる可能性があります。

かならず一等車がついていますから、余裕のある方には、利用をお勧めします。二等車が混んでいても、一等車はガラガラで、気兼ねせずに済むからです。ひとりで何人分もの席を占領している人など向こうではざらですから、割り込む勇気のない人は、一等車です(笑)。

一等車には、「静かな席」という区分があります。それは、ケータイ禁止のゾーンです。ということは、ケータイを許容しているということですね。しかし全員がケータイ/スマホとにらめっこ、という風景は、ドイツではお目にかかりませんでした。

最大の感想。それは、ドイツの列車は遅れる、ということです。ドイツ人はきちんとしているから遅れない、と思う方もいらっしゃるでしょうが、少なくとも旧東は、全部遅れると思ってください。マクデブルクからツェルプストに行ったときなどは、女性車掌がホームで話し込んでいて、5分後に悠然と発車する光景を目撃しました。

遅れるとどうなるか。出たとこ勝負で、発着ホームが変わるのです。ふと気がつくと、ホームで待っていた人が誰もいない。来るはずの列車が離れたホームに停まっている、ということが起こります。この臨機応変は、旅行者には大敵です。

ロストックからベルリンに戻るときには、自販機で買った切符の乗り継ぎを窓口で確認し、プリントアウトしてもらった時間割で、列車に乗りました。シュヴェリーンと、ルートヴィヒスルストで乗り換えることになっていました。ロストック~シュヴェリーン間でまず遅れが発生し、乗り継ぎ列車のホームが直前に変更されて、別のホームへと急ぐ羽目に。そうしたら、目前でドアが閉まってしまったのです。ショックを受けましたが、発車ではなかったので、開いて乗ることができました。

この列車からは、ルートヴィヒスルストで、ICEに乗り換えることになっていました。しかし時間割を見ると、乗り継ぎの時間が4分しかないのです。しかし列車は、10分以上遅れている。これはまずい、と焦り始めたときに、検札の女性車掌がやってきました。

私が乗り継ぎは大丈夫か、と尋ねると、ダメだ、この列車は遅れている、というのです。ICEが遅れている可能性もあるのではないか、と言うと、いや、それはない、というキッパリ返事。乗り継げるというから買った切符だ、それならルートヴィヒスルストで降りて次の列車に乗るべきか、この鈍行に乗り続けるべきか、と尋ねたところ、どこかに電話をかけ、「非現実的な乗り継ぎだ」云々と、強い口調でしゃべっています。結局、乗り継げる列車はないので、このまま鈍行でベルリンまで行くべし、という話になりました。夜の10時着が、11時になってしまう。一応「すみません」という言葉は出ましたが、実感はこもっていませんでした。

あきらめて、窓からルートヴィヒスルストのホームを眺めていました。乗り継ぎ時刻より、15分遅れています。するとホームがあわただしくなり、なんとICEが入ってきたのですね。もちろんあわてて荷物をまとめ、乗り換えました。このように、遅れるから困ることもあれば、遅れて助かることもあるのが、ドイツの鉄道です。

こういうところで過ごしましたので、戻ってきた日本が、別世界のようです。すべての列車が、事故のない限り正確に運行され、そのために、万全の配慮が払われている。秩序の維持も行き届いており、日本人はなんと優秀なのだろう、と心から思った次第です。

モンテヴェルディやります!2013年07月10日 11時14分40秒

7月30日(火)19:00に迫ってきたモンテヴェルディのコンサート、私としては今年の最重点課題の1つなのですが、ドイツ旅行2週間とその前後のしわ寄せで、なかなか向き合うことができませんでした。なにしろ場がサントリーホールのブルーローズ、出演者は一流の方々ですので、これからしっかり作品研究と対訳を準備しなくてはなりません。コンサート誕生の経緯についてはチラシの文章に言い尽くされていますので、以下に引用させていただきます。

「昨年の7月、渡邊順生さんのサントリー音楽賞受賞記念コンサートで演奏されたモンテヴェルディ《聖母マリアの夕べの祈り》は、今でも私の脳裏に、新鮮な感動をもってよみがえってきます。こんなすばらしい作品があったんですね、といろいろな方に言っていただきましたし、古楽演奏のレベルが高くなっていることに驚かれた方もいらっしゃいました。こんな機会を1回で終わらせたくない!そんな一念から、当日は裏方役だった私が音頭を取って、サントリーホールにおけるモンテヴェルディ第二弾を企画しました。《夕べの祈り》で声楽の取りまとめにあたられ、自らも水際立ったテノールを披露された櫻田亮さんのご協力を得て、勇気百倍です。
 今回取り上げるのは、小編成のアンサンブルによる宗教声楽曲と、世俗マドリガーレです。両分野における珠玉の作品、ヴァイオリンを伴う親しみやすい作品を厳選しましたが、前半は聖母マリアへの賛美、後半は愛の神との葛藤をテーマとして、初期バロック特有の『愛の二態』を描き出そうというのが、プログラムの構想です。エキスパートの仲間たちが集まってくれました。私は字幕と解説で応援したいと思います。」

作品は、前半が《サルヴェ・レジーナ》《マニフィカト》など5曲、後半が《ニンファの嘆き》《西風が帰り》など7曲。演奏はモンテヴェルディ・アンサンブル。メンバーは声楽が阿部雅子、渡邊(西村)有希子、上杉清仁、櫻田亮、谷口洋介、小笠原美敬。器楽が天野寿彦・渡邊慶子(ヴァイオリン)、平尾雅子(ガンバ)、渡邊順生(チェンバロ)。全席自由、前売り4000円(当日4500円)です。めったに無い機会ですので、ぜひぜひお出かけください。コメントでご予約くださっても結構です。アドレスをご記入くだされば、ご連絡を差し上げます。

今月の「古楽の楽しみ」2013年07月08日 23時55分05秒

ドイツ旅行のおり、また各地での講演のさいにも、「古楽の楽しみ」への出演が、自分を広げていることに気がつきます。この番組、昨年バッハの「秋のカンタータ」という特集をやりましたが、今年は「夏のカンタータ」を特集しました。6月から8月にかけて初演されたカンタータから、名作を選んだ企画です。

15日(月)は第21番《私には多くの憂いがあった》。ご存じ、初期の大作です。これ1曲でほとんどを占めてしまいますが、わずかに残った時間で、第9曲に出るコラール〈神にすべてを委ねるものは〉の、オルガンと合唱、計3バージョンを流しました。カンタータの演奏はヘレヴェッヘです。

16日(火)。第45番《お前に告げられている、人よ》と、第105番《主よ、裁かないでください》。テキストは教訓的な傾向ですが、音楽的にはどちらも充実したカンタータです。演奏は第45番がレオンハルト、第105番が鈴木雅明。両曲に含まれるコラールの別バージョンを、月曜日同様に--没後、弟子と息子により編纂された《4声コラール集》から--流しました。

17日(水)は世俗カンタータ。第205番《鎮められた風の神》の全曲と、第207番a《いざ、陽気なトランペットの調べよ》から。演奏は前者がアラルコン(西風役で櫻田亮さんが出演)、後者がベルニウスです。どちらもまことに壮大な作品で、再評価への一石となれば幸いです。

18日(木)は、DVDにもなっているガーディナーの名演奏から、第199番《私の心は血の中を泳ぐ》と第179番《心せよ、神を畏れることが偽善とならぬように》をまとめました(プラス、マーク・パドモアの歌で、第113番のテノール・アリア)。メゾのマグダレーナ・コジェナーがソプラノを歌い、「ファリサイ人と徴税人」の説話(ルカ福音書)による深い内容をもったカンタータを、感銘深く聴かせてくれます。

バッハの音楽のすばらしさを少しでも広く知っていただきたいと思って日頃活動していますが、カンタータだと、とりわけ力が入ります。器楽曲ほどは知られていない、と感じることがままあるからです。その意味でとても印象的だった7月7日松本でのコンサート、写真が揃ったところでご報告いたします。

いずみホール年間企画20132013年07月06日 23時56分12秒

5日(金)、大阪で、いずみホールの今年の年間企画に関する記者発表をさせていただきました。

今年は、モーツァルトです!昨年で「ウィーン音楽祭in Osaka」を一区切りにしましたので、とりあえずウィーン頼みを克服することが課題だったのですが、久々のモーツァルト企画をそれに当てました。すなわち、ウィーン以前のモーツァルト、ザルツブルクにおける最後の5年間に焦点を当て、もろもろの体験を克服した上に実現された、たくましい大人の音楽家としてのモーツァルトの名作を、「未来へ飛翔する精神」として聴いていこう、という企画です。コンサートは10月末日から始まります。

詳細はいずみホールのホームページ(http://www.izumihall.co.jp/)におまかせし、近くなったらご案内したいと思いますが、企画は「溢れ出る管弦楽の力」(協奏交響曲、ポストホルン・セレナード)、「パリの青春」(フルートとハープのための協奏曲、《パリ交響曲》他)、「二重奏&ソロの光と影」(ヴァイオリン・ソナタ、ピアノ・ソナタをフォルテピアノで)、「オペラで勝負する」(《イドメネオ》の演奏会形式上演)、「室内楽はのびやかに」(フルート四重奏曲、オーボエ四重奏曲、ディヴェルティメントニ長調)の5つのコンサートと、そこに到達するまでのモーツァルトの成長を鍵盤楽器3種とお話でたどるレクチャー・コンサートによって構成されています。レクチャー・コンサートが露払い役となり、9月5日(木)開催。ご出演は久元祐子さんで、私が聞き役を演じます。

構想についてはもちろん私からお話ししたのですが、演奏者がお二人、助っ人で同席してくれました。《イドメネオ》で主演される福井敬さんと、ハープ・ソロで第2回に出演される福井麻衣さん(パリ在住)です。

職業柄、こんなときに内容のある意欲的なお話をしていただくと、その方に対する尊敬と、コンサートに対する意欲が湧いてくるもの。この日の福井敬さんが、まさにそうでした。洞察力のある密度高いお話を伺ううち、自慢のキャストを揃えた12月14日の《イドメネオ》が、ますます楽しみになってきました。林美智子さん、幸田浩子さん、並河寿美さん、中井亮一さんらが出演されます。