東京都合唱コンクール~男女の対決2011年09月20日 00時56分17秒

書くべきことは多く、書くゆとりのない数日でした。何より、18日(日)、19日(月)と審査員を務めた、東京都合唱コンクールのことを。

引き受けたことを後悔し、迫ってくるとプレッシャーに悩まされる、合唱コンクールの審査。今年はかなり前に1度やっただけの東京都でしたので、様子がわからないことも加わり、大きな難関、という意識がありました。

しかしいざ始まってみると、さすがに私も慣れてきていて、自分なりの判断が、かなり出来ました。もちろんそれは、気持ちよくやらせていただいた全日本合唱連盟の方々や、同僚審査員諸氏のおかげです。ありがとうございました。

採点の半分を占めることになっている課題曲に、ハイドンの《瞬間》という、威厳とユーモアを兼ね備えた、すばらしい合唱曲があります。この曲については機関誌の『ハーモニー』から依頼され、分析の原稿を書きました。とりあげた団体は多くがそれを読んでくださっているようで、違和感のある解釈は、ほとんどありませんでした。しかし雨森文也さん指揮するCantus animae(魂の歌)という合唱団の演奏は私の解説を数段超えたもので、曲のもっている可能性をすべて表現した、と思えるほどの完成度の高さ。この合唱団が全国大会に派遣される団体の1つになったのは、本当に嬉しいことでした。スウェーリンクとバードにすばらしい様式感を示しながら金賞を逸した豊田商事コーラス同好会が審査員特別賞を受賞したことにも、わが意を得た思いをしました。

中学、高校の部の表彰式には、特別な楽しみがあります。それは、感じやすい年代の生徒たちが、本当に正直な喜怒哀楽を示してくれるからです。最前列に陣取った女子生徒たちが結果発表に先立って「乙女の祈り」とも言うべき緊張の姿勢を見せ、それが喜びに変わる経緯を見守るのは、いつでも感動を伴います。え、失望に変わる経緯もあるんじゃないか、とおっしゃるんですか?最前列に陣取るのは熱心かつ有力な学校なので、失望に変わるのはレア・ケースです。

ぶっちぎりの演奏を続けた強豪校、杉並学院。高校の部の表彰式で、合唱部女子が、中央最前列に陣取りました。発表が迫ると皆手をつなぎ、「乙女の祈り」そのものの、身を固くした姿勢になります。気がつくと、右側最前列には、合唱部男子が陣取っている。抜きん出た強豪校なので、男子と女子が分かれて応募し、どちらも優勝候補という、同士討ち状態になっているのです。

発表の結果、男子が優勝。男子が喜びを爆発させたのに対し、女子(2位)は意気消沈の涙で、ライバル意識がありあり。まさに「男女の対決」の構図ではありました。もちろん、これだけの意欲あればこその、1位2位です。一般の部に出演した卒業生たちの演奏もすばらしく、東京に杉並学院あり、という現実が強烈にインプットされました(続く)。