私は字幕 ― 2014年02月15日 22時28分59秒
11日(火)は、松本へ。北アルプス北部まで鮮やかに見えているすばらしい天候の日でしたが、私は「あずさ」の車中で、必死の字幕点検。この日は小林道夫指揮、松本バッハ祝祭アンサンブルによる《ロ短調ミサ曲》の本番で、プレレクチャーを済ませた私は、お客様のはずでした。しかし字幕が急遽準備され、私がその責任者となったのです。
私は声楽曲に字幕は絶対必要、という考えです。ですから、自分がプロデュースするコンサートでは極力、字幕を使ってきました。しかし、操作は全部、人任せだったのですね。しかし今回は、字幕原稿とキュー入り楽譜ができたばかりの上に、リハーサルは短いので、事実上、本番ぶっつけ。これでは人任せにはできず、自分でやることにしました。
操作する場所は、ホール奥の、高いところです。煙突まがいのハシゴを登り、四角い穴を抜けなければなりません。覚悟を決めて上り始めたところ、松本ハーモニーホールのスタッフが駆け寄り、「それだけはやめてください」と、止めにかかるではありませんか。炎の山を登るジークフリートの心境になりました。
制止を振り切って上ると、そこはホールを一望できる、気持ちのいいところ。降りることさえ考えなければ、天国です。初体験の字幕操作が始まりました。
一発勝負なので緊張しますね。次の画面が予定と違うものだったらどうしよう、という不安も起こってきます。流れに乗ってしまうと、演奏に加わっているような快感があるのですが、ふっと気が緩む瞬間も訪れる(遅れ、1回)。演奏を楽しみながら、という境地に至るまでは、経験が必要なようです。裏方の苦労、少しわかりました。
写真の右上に、字幕が移っています。演奏はたいへんすばらしく、《ロ短調ミサ曲》の真髄を伝えるに足るものでした。若い演奏者が多いのに、円熟した味わい深い響きが、小林道夫先生のタクトから引き出されてくるのです。リハーサルがとても勉強になりました。先生はメンバーをくつろがせながら、少しの無駄もなく的確な指令を発し、歌って模範も示しつつ、演奏をどんどん向上させていくのです。そんな偉大な先生に、みんなが心酔してベストを尽くしていることがよくわかります。声楽にコンチェルティスト方式が採られていたのもうれしいことでした。
松本というと「転落」という言葉が皆さんの脳裡に浮かぶようです(注:昨年の講演中、演壇から転落)。でもハシゴは無事に降りることができました。おあいにくさまです。
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