今月のCD2016年11月29日 09時16分36秒

新聞でやっている紹介の締め切りはたいてい月の中旬に来るのですが、その時期はまさに、新譜が五月雨式に送られてくるさなかです。今月は全体の数が多かったっため、五月雨現象も顕著でした。

締め切りぎりぎりに届いたのが、ファジル・サイによるモーツァルトのピアノ・ソナタ全集(エイベックス)。モーツァルテウムで録音した6枚組(6000円)で、ハ長調作品はこの1枚、というように、調性別に編集されています。

最初にヘ長調K.533を聴きましたが、これには「雲の上」と愛称が付けられていて(全部の曲にそれがある)、爽やか、鮮やか。何曲か聴いた段階で、それまでの第1候補を下ろし、これを選ぶことに決めました。「すべてのソナタがサイの愛を注がれてきらめくさまは壮観で、まるで18人の子供が、童心いっぱいに戯れているかのよう」(引用)。

ただ、楽譜通りには弾かれていません。強弱とアーティキュレーションが、かなり自由です(グールドの影響?)。しかしそれも含めて、申し分なくモーツァルト的と感じます。

ピアノでは、ペライアのグラモフォン移籍第一弾、バッハ《フランス組曲》がさすがです。慈しみのバッハ、円熟の極み。これは来月の「古楽の楽しみ」で紹介しますね。メジューエワさんもいい新譜を積み重ねておられますが、ショパンの《ノクターン全集》(若林工房)は心に染みました。