今月の「古楽の楽しみ」2016年11月04日 00時10分50秒

今月は、かなり渋いですが、《ブロッケス受難曲》特集をします。

《ブロッケス受難曲》というのは、ブロッケスというドイツの詩人が1712年に書いた受難オラトリオの台本で、聖書を、自分の韻文に書き直してしまっているのが特徴です。これがたいへん人気を博し、有名作曲家が次々と作曲した上、バッハに大きな影響を与えました。CDも揃ってきましたので、そこから、マッテゾンを除く4曲を、次のように並べました。

7日(月) カイザー《ブロッケス受難曲》(1712) ファン・へイヘン指揮
8日(火) テレマン《ブロッケス受難曲》(1716) マギーガン指揮
9日(水) ヘンデル《ブロッケス受難曲》(1719) ノイマン指揮
10日(木) シュテルツェル《ブロッケス受難曲》(1725) レミー指揮

長い曲なので、特徴のあるところ、比較に適したところを抜粋しました。どれも相当いい曲で、受難曲史の上位に位置するものだと思います。

バッハは《ブロッケス受難曲》を書きませんでしたが、一線を画したわけではありません。、1724年の《ヨハネ受難曲》作曲にあたり、いくつものアリアをブロッケス台本から取り入れているからです。また、晩年にはヘンデルの作品を、わざわざ楽譜を作って上演しています。

こうした関心の寄せ方、《ヨハネ受難曲》におけるブロッケス台本の使い方などは、バッハの受難曲観、《ヨハネ受難曲》変遷の理解に、重要な示唆を与えるものであるように思えます。

この点についてはさらに吟味して、《ヨハネ受難曲》論に生かします。時節柄マニアックに過ぎたかという思いもあるため、12月は、有名曲の最新録音をオムニバス的構成でだそうと思っています。ともあれ、どうぞよろしく。