歌集『ゆき』より私撰2016年12月19日 00時31分19秒

阿部久美さんの歌集『ゆき、泥の舟にふる』。北海道新聞短歌賞をとられたというこの歌集から、私の好きな歌を6つ、選んでみました。何段階かかけて絞り込みました。分類はオリジナルとは別に、私の独断でさせていただきました。横書きになっちゃってすみません。

(住み処)
人を待ち季節を待ちてわが住むは昼なお寂し駅舎ある町

(叙景)
夏終わるうずくまりたる砂浜のかもめは群れてみな海をむく

(旅)
旅の荷を解いて思えばふるさとは実(げ)に暗々と海に抱かれる

(言葉)
群生のこの黄の花の名を尋ねそれきり今日の言葉が尽きる

(情念)
弱い雪ためらいながら降りてくる熱(ほとぼ)りのある男女の世へと

(音)
蝋燭が尽きてみずから消ゆる音(ね)はこの世にそっと美しきひとつ

オビにも選ばれている「わがうなじそびらいさらいひかがみにわが向き合えぬただ一生(ひとよ)なり」という歌のページに挿入されている後ろ姿、ご本人でしょうか。きっとそうですよね。

たまっている諸々のご報告、もう少しお待ちください。

コメント

_ 久美 ― 2016年12月20日 19時29分10秒

憧れの礒山先生にこんなにまでしていただいて本当に幸せです。
ラジオのそしてご著書のブログの礒山先生は、わたしにとって遠い世界の方にも思え、またすぐ目の前にいてくださる方とも思えます。
先生のラジオでバッハを聴いた日、バッハがわたしを見つけてくれたと感じたことを今も思い出します。ずいぶん自分本位なわたしですが、以来、新しい感動をあたえてくださる先生が大好きで、尊敬してまいりました。
ご親切に甘えて、拙い歌集をとりあげていただきました。後ろ姿を見ていただきました。ありがとうございます。

_ I招聘教授 ― 2016年12月21日 01時28分04秒

ありがたいご縁です。ところで久美さん、私の選択は意外でしたか、それとも、まあまあ想定内、という感じでしょうか。

_ 久美 ― 2016年12月22日 10時13分14秒

「駅舎」の1首以外は、ほとんどどなたにも採っていただいたことがない歌ばかりだったので、意外でした。こうして分類をして選んでいただくというのもはじめてのことです。
先生の選んでくださった6つをながめていますと、低い声の低い体温の歌が並んだ感があるのですが、なにかトーンがそろっていて、まるでこの6首だけで完成したストーリーを見る思いです。(あれっ?これも一種の自画自賛になりますか?)
なかなか自分の作品を冷静に見ることはできないのですが、生まれ変わったかのような気さえします。「蝋燭」の1首は歌集の中で見るより、礒山先生選のこの位置で見るほうが断然いいです。すごく愛おしいです。←自画自賛(きっぱり)

_ I招聘教授 ― 2016年12月23日 21時51分42秒

格調のある、心に響く歌を選んだので、ある意味、方向が同じかもしれません。久美さんの多様な部分を皆さんに紹介することにはなっていませんね。そこが「私撰」です。

気になるのは、「言葉が尽きる」の余情。花への感嘆というより隣に立つ方への愛情かな、と思いますが。

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