シフという体験(1)2017年03月22日 23時14分03秒

お待たせしました。

今年度のシューベルト企画、「こころの奥へ」の最後に、サー・アンドラーシュ・シフのコンサートが置かれていました。曲は、最後の2つのソナタ、第20番イ長調と、第21番変ロ長調です。

ところが、シフ氏から、《幻想ソナタ》(第18番ト長調)をぜひ弾かせてくれないか、というオファーが入ったのです。もちろんお客様への大サービスですから、ありがたくお受けしました。心配は、曲が長いのでお客様のお帰りに差し障りが出ること。チケットはすでに完売でしたから、売り上げに影響はありません。

でもこんなことができるのは、たくさんの曲が完璧に頭に入っている、シフさんならでは。シフさんは、ステージでピアノを弾くことから、もとい、名曲を弾くことから、限りない喜びを発見しておられるのではないか。その世界は「音楽の神様との語らい」としか言いようのないものですから、スイッチが入ったら長く弾きたい、その次元から離れたくない、と思っておられるのではないか。

ですから4曲もアンコールがあり、長いロザムンデの即興曲も入っていたので、終わりが10時になりました。でもイチローさん、楽屋に駆けつけたら、お疲れではまったくなかったですよ。あふれるような高揚感に包まれ、もっともっと弾きたかった、と表情が語っておられました。

話が先走りました。若いときからずっとシフさんを聴いてきましたが、受けるイメージはつねに清新。私より7つお若いし、風貌もつややかです。でも、考えてみれば60歳過ぎの、巨匠なんですよね。

演奏も、まぎれもなく巨匠のものでした。悠揚迫らぬペースで淡々と、自分の世界を作っていく。紡ぎ出される音は円熟していてナマなところは一つもなく、霊的な様相を帯びているのです。(続く)

コメント

_ らぶらどーる ― 2017年03月23日 10時38分23秒

礒山先生、その節はお手数をおかけしました。
結局ある方からチケットを譲っていただき、いずみホールの公演も聴くことができました。そこでピアノを弾いているのがシフさんなのかシューベルトなのかわからなくなる、不思議な体験をしました。20番の4楽章では涙が止まらなくて困りました。
3公演聴きましたがやはり大阪がベストだったのではないかと思っています。今日も初台に参ります。先生の続報を楽しみにしております。

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