オペラ史の概念をくつがえす--今月のCD2017年12月28日 21時27分24秒

今月はすばらしいものがありました。ラファエル・ピションとピグマリオンが、「愛の蕩尽!」と題して、フィレンツェ・メディチ家の祝宴でオペラがまさに花開こうとする瞬間を復元したのです。今年のライプツィヒにおけるモンテヴェルディ《聖母マリアの夕べの祈り》の感動をまざまざと蘇らせる圧巻の出来映えで、本当のオペラはモンテヴェルディから、という認識に修正を迫ってきます。

1589年に上演された『ラ・ペレグリーナ』というドラマの幕間劇をベースに、由来さまざまな音楽を創造的に組み合わせて、4つの音楽劇が生み出されています。題して、「愛の帝国」「アポロの物語」「オルフェウスの涙」「高貴な恋人たちのバレエ」。

作曲家はファンティーニ、カッチーニ、マレンツィオ、マルヴェッツィ、ガリアーノ、ペーリ、カヴァリエーリ・・などなどの人たちで、ただ、モンテヴェルディだけがいない。しかし音楽はほとばしるような生気にあふれ、気宇壮大で、和声感も見事。この思い切りのよさこそ、古楽の最先端なのです。

カッチーニやペーリはいままでミニアチュアのように思っていましたが、それが古楽的でありながら、壮麗といいたいほど立派に聞こえるのですね。どの時代の音楽にもそれ自身のベストがあって、演奏によってそれが少しずつ発見されているのだ、という感じがします。

リュリ以前のフランスの音楽劇を再現したドセのCDで、似たようなことを書きました。同じハルモニアムンディの、縦長ケースのシリーズに属する新譜です。詳細な台本と解説の詳細な日本語訳がついていますから、ぜひお薦めします。