譜例 ― 2008年11月24日 22時36分29秒
東京は、ひどい雨でしたね。今日私は、2つの面談をこなしてからボストリッジのコンサートに行く、という予定を組んでいました。最初の面談に合わせて支度をし、出がけに(4時)チケットを見たら、なんと5時からではありませんか。
そうか、休日ね。7時だとばかり思い、5時と6時に面談を入れてしまっていました。もうコンサートには間に合わない時間でしたので、ボストリッジはあきらめ。きっとすばらしかったことでしょう。彼は、楽譜をじつに正確に、深く読む人です。
その楽譜なのですが、皆さんは、音楽書にはどの程度譜例があっていいと思いますか。昔よく言われたのは、楽譜を入れると本が売れないから、楽譜はなるべく使わないで欲しい、ということでした。斯界の通説、と受け止めています。私がそれでも結構使ってきたのは、専門性の上でどうしても必要な場合が多かったからです。
楽譜を読める人にとっては、言葉であれこれ説明するより、譜例を出せば一目瞭然、ということが多い。この文章をお読みの方も、多くはそういう方ではないでしょうか。一定の予備知識を必要とする本を書く場合には、むしろ譜例をたくさん入れた方が読みやすく、面白いと思うのですがいかがでしょう。あるいは、それはまだ時期尚早で、そうすると多くの読者を置いていってしまうことになるのでしょうか。このあたりが見極められれば、これからの音楽出版が変わってくるように思います。
日の出の勢い ― 2008年11月22日 23時27分28秒
21日の金曜日は横浜のみなとみらいホール(小)まで足を伸ばし、加納悦子さんのリサイタルを聴きました(ピアノ・長尾洋史さん)。このところ頂点をきわめるかのような勢いで上昇中の加納さんですが、リサイタルでもの勢いはそのまま出て、ちょっと例を見ないほど中身の濃い、充実したリサイタルになりました。
まず選曲がすごい。ウェーベルンの《ゲオルゲの詩による5つの歌曲》 op.4から始めて、シューベルトの4つの歌曲、ヒンデミット初期の2つの歌曲。後半はスコット『湖の麗人』によるシューベルトの《エレンの歌》3曲と、ゲーテ『西東詩集-不満の書』による、シュトラウスの3つの歌曲。高い文学性をもった詩に付された深い内容の曲がずらりと並べられ、それだけで圧倒されてしまいます。こういうプログラムを見ると、選曲だけでレベルがわかるというのは本当だ、と思わざるを得ません。若い方々、心にとめておいてください。
こうした曲を輝きのある線のはっきりした声で、簡潔に歌うのが加納さんです(長尾さんのピアノがその意味でぴったり)。雰囲気作りのような遠回りをせず、核心に直接切り込んで密度高く歌うスタイルのため、聴く側もうかうかできません。私も、対訳を見ながら集中しました。言い換えれば、聴衆にも多くの要求を課したコンサートであった、ということです。これだけの芸術を、私を含めて聴く側が、もっともっと理解し、応援してあげなければいけません。ドイツ・リートの啓蒙に、私なりに励みたいと思いました。
今日も横浜へ。朝日カルチャーの後中華街で食事をし、マッサージのあと、県民ホールで「アート・コンプレックス2008」という諸芸術の実験的コラボレーションのコンサートを聴きました。こちらの方は、いろいろなことをやり始めている若い人たちがいるんだなあ、という程度の感想です。
挑戦の価値 ― 2008年11月20日 23時40分57秒
久しぶりの日生劇場で、開場45周年記念公演《マクロプロス家の事》(ヤナーチェク)を見てきました。今日が初日で、ダブル・キャストの3回公演。ということは、チェコ語のこのむずかしい作品を、22日出演の人は1回だけのために覚えるわけですね。20日の人でも、2回。もったいないなあと思いますが、人生と同じで、1度かぎりだからこそ、貴重なのかもしれません。でもこういう作品に挑戦することには、計り知れない価値があります。賛美を惜しみません。
初めて見る作品で、解説を読んでも、筋がまったく頭に入らない(←超複雑)。幕が上がってからもさっぱりわからず、もう少し整理して作れるんじゃないか、などと閉口していたのが、前半でした。もちろん一貫して、細胞のブロックを延々と繰り返すヤナーチェク様式で綴られています。
しかし後半になり、演奏にノリが出てくると、のめり込むように見てしまいました。338歳の女性主人公が死を迎える最後のモノローグなど、〈ブリュンヒルデの自己犠牲〉さながらの迫力。持ち前の知性に貫禄を加えた小山由美さん、すばらしい舞台でした。
今さらですが・・今月のイベント ― 2008年11月19日 22時47分28秒
書きそびれていました。大きなことのない月だったためでしょう。朝日カルチャー新宿の「新・魂のエヴァンゲリスト」(1日)、芸術祭の《冬の旅》(2日、既報)、楽しいクラシックの会の「バロック音楽百花繚乱」(15日)、いずれも終了しています。
あとイベントと呼べるのは、22日(土)13:00の朝日カルチャー横浜(「バッハの協奏曲とカンタータ」)ぐらいですね。コンサートにはいくつか行きますが、29日(土)のいずみホール16:00は、いいコンサートの続いたベートーヴェン弦楽四重奏曲シリーズのトリとして、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団が登場しますのでご期待ください。曲目は、第6番、《大フーガ》、第13番という、「変ロ長調つながり」です。
その前の木曜日にはヴィンシャーマン指揮の大阪フィルでバッハのコンサートがあり、解説を提供しました。前半が《音楽の捧げもの》、後半が《フーガの技法》という盛りだくさんなプログラム。もちろん、彼自身のオーケストラ編曲版です。《フーガの技法》は、バッハの絶筆のところまで演奏したあと、最後に第1コントラプンクトゥスを反復して締めとするそうです。
明日は日生劇場のヤナーチェク、あさっては加納悦子さんのリサイタルを聴きに行きます。
悪用する動物 ― 2008年11月17日 23時51分51秒
たくさんの貴重な書き込み、ありがとうございます。なるほと、司令塔をつぶして迷惑メール激減ですか。皆さんも、迷惑メールから解放されて快適でいらっしゃることでしょう。最近は、ネットの問題が、ニュースでもひんぱんに採り上げられますね。種を売っているとか、人を轢いたら逃げた方が得だと書いてあるとか。本当に人間は、悪用する動物です。
美学の入門書というと、佐々木健一さんの『美学への招待』(中公新書)、今道友信先生の『美について』(講談社現代新書)を挙げてきました。ところが最近、超入門書というべき本が出版されました。『爆笑問題のニッポンの教養』というシリーズに、佐々木健一さんの『人類の希望は美美美』という本が加わったのです。
インタビュー形式の本文にコラムを配したような形で書かれていますが、軽い外見の中に、深い内容が含まれています。「人間にとって『美』とは何でしょうか。私は、人間の精神には限界があるのだと教えてくれる現象が、美しさではないかと考えています」と始まる講義の格調の高さは、さすがに佐々木さん。この命題に、私はまったく同感です。
しかし、それなら美を生活の、また社会の原理として確立すればよいかというと、それもまたむずかしい問題ですよね。先日話題にしたトロイア戦争が物語るのは、美がいかに人間に災いをもたらすかということです。美もまた、悪用できるというか、人間の対し方ひとつで、災いの源泉になる。明日の音楽美学概論では、そのあたりの関係について考えてみようと思います。
鰍沢 ― 2008年11月16日 23時36分51秒
私の周囲には、熱心な落語ファンの方が複数いらっしゃいます。私は自分から聞くという方ではなく、最近とんと機会がありませんでしたが、今日偶然BSで放映に接しました。
聞き始めたらどんどん引き込まれてしまって、傾聴。諄々と語る、いわゆる「人情噺」です。笑わせるところはないが、さまざまな身振りを交えて面白く、味が深い。調べてみると、三遊亭圓朝作の「鰍沢」という話だそうで、一種の怪談です。落語家も、私は見たことのない人でしたが、じつにうまい。柳家さん喬という人、ご存じですか?こういう人がいるんですね。落語というと笑わせるもの、という通念がありますが、話術としての人情噺こそ真髄なのではないか、と思いました。
この話には、江戸時代の会話の感覚がある程度伝えられているのだと思います。だとすると、ずいぶん腰の低い、丁寧な会話を交わしているんですね(旅人と花魁)。「礼」が乏しくなったのは、相撲だけではないようです。
新フィルター ― 2008年11月15日 21時28分47秒
最近ますます増加していた、迷惑メール。とくにロシア語の跋扈が目に余る状況になっていました。フィルターをすりぬける技術がこう進んでは対策も追いつかないなあ、と思っていた矢先。迷惑メールがパタッと来なくなったのです。どうやら、ASAHI-netの新フィルターが、威力を発揮しているようです。
プロバイダーのフィルターに頼って大事なメールを取り逃がした経緯については、すでに書きました。以来不安なので、フィルターで落とされたメールをざっとチェックする作業は、折に触れて行ってきました。ところが今度は、プロバイダーのボックスからも、迷惑メールがほとんど姿を消しているのです。
ウルトラCの方策が見つかったのならばよいのですが、あまりにも劇的に変わったので、大事なメールが地獄に道連れとなっているのではないかと心配です。私にメールをくださる方、トラブルも考えられますから、注意していてくださいね。
トロイア戦争 ― 2008年11月13日 22時51分25秒
ちょっと緊張を要するスケジュールになっており、何人かの方にご迷惑をおかけしています。
そんな中ですが、松田治著『トロイア戦争全史』を読みました。私もお世話になっている講談社学術文庫です。面白さもさることながら、じつに勉強になりました。なにしろトロイア戦争は、芸術素材の宝庫。オペラにもカンタータにも採り入れられ、絵画にも豊富に描かれています。でもそれらの結びつきやつながりがどうなっていたのかは、昔少しは読んだのですが、すっかり忘れていました。
種々の伝承は、複雑に入り組んでいるに違いありません。それがこの本には、うまくまとめられています。なるほどそういうことか、と膝を打つこともしばしばでした。必須の教養書のように思います。
膨大な人物の血筋に関する情報が神話の中に形成されていることには、驚かされます。男は剛勇、女は優美の徹底した価値観や、神々が人間にたえず干渉し、戦争では二手に分かれて介入を繰り返すさまも印象的。ゲーテは《ファウスト》の第2部でヘレネーを登場させ、シュリーマンは、実在が疑われた都の発掘に取り組んだわけですよね。ワーグナーの北欧神話と通じる部分も多く、ロマンが広がります。
刀削麺 ― 2008年11月10日 23時16分23秒
最近凝っているのがこれ。こんなにおいしいものがあるだろうか、というノリで食べています。皆さんご存じと思いますが、西安由来の、辛味の太麺です。
お店が、どんどん増えてきましたね。今まではヨドバシカメラの秋葉原店、吉祥寺店の8Fで食べていましたが、今日王立~コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートの帰りに、赤坂見附でお店を発見。カウンターで気軽に食べられるところです。「汁なし」というのに挑戦してみましたが、おいしさは変わらず。サントリーホールからの帰りに、毎回寄ってしまいそうです。
美男ぞろい ― 2008年11月09日 22時21分44秒
今年の日本シリーズは、すばらしかったですね。最後まで緊迫感のある試合が続き、本当に楽しめました。
西武の選手って、みんな顔がいいですねえ。若々しく、爽やか。片岡二塁手など、それほど有名ではないような気がしますが、球界を代表する名選手ですね。お金で集めなくても、ああいう選手が次々と育っている、というのはいいなあ。さあ、巨人が今年は誰をかき集めるか、見物になってきました。
三宅幸夫さんに別件でメールしたくてたまらないのですが、やめておきます。やはり会長たる者、学会の団結を優先しなくてはなりません。
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