日の出の勢い ― 2008年11月22日 23時27分28秒
21日の金曜日は横浜のみなとみらいホール(小)まで足を伸ばし、加納悦子さんのリサイタルを聴きました(ピアノ・長尾洋史さん)。このところ頂点をきわめるかのような勢いで上昇中の加納さんですが、リサイタルでもの勢いはそのまま出て、ちょっと例を見ないほど中身の濃い、充実したリサイタルになりました。
まず選曲がすごい。ウェーベルンの《ゲオルゲの詩による5つの歌曲》 op.4から始めて、シューベルトの4つの歌曲、ヒンデミット初期の2つの歌曲。後半はスコット『湖の麗人』によるシューベルトの《エレンの歌》3曲と、ゲーテ『西東詩集-不満の書』による、シュトラウスの3つの歌曲。高い文学性をもった詩に付された深い内容の曲がずらりと並べられ、それだけで圧倒されてしまいます。こういうプログラムを見ると、選曲だけでレベルがわかるというのは本当だ、と思わざるを得ません。若い方々、心にとめておいてください。
こうした曲を輝きのある線のはっきりした声で、簡潔に歌うのが加納さんです(長尾さんのピアノがその意味でぴったり)。雰囲気作りのような遠回りをせず、核心に直接切り込んで密度高く歌うスタイルのため、聴く側もうかうかできません。私も、対訳を見ながら集中しました。言い換えれば、聴衆にも多くの要求を課したコンサートであった、ということです。これだけの芸術を、私を含めて聴く側が、もっともっと理解し、応援してあげなければいけません。ドイツ・リートの啓蒙に、私なりに励みたいと思いました。
今日も横浜へ。朝日カルチャーの後中華街で食事をし、マッサージのあと、県民ホールで「アート・コンプレックス2008」という諸芸術の実験的コラボレーションのコンサートを聴きました。こちらの方は、いろいろなことをやり始めている若い人たちがいるんだなあ、という程度の感想です。
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