類語辞典2011年05月16日 07時55分18秒

月曜日はカントの授業なので、決死的に早起きして、予習を済ませたところです。その過程で、ある辞書がとても役に立つことに気づきました。それは『ドイツ語類語辞典』(中條宗助編著、三修社)です。似て非なるドイツ語の語彙がいくつかずつ集められ、それがどう違うかが、十分な用例付きで説明されている辞書です。

用例は、みな、日常的な文章。なぜそれが役に立つかというと、カントは日常的に使われる語を精密に規定するところから話を始めているわけで、日本語にたとえていえば、おもしろいとおかしいはどう違うか、というような議論から入ってくる。ごく普通のドイツ語語彙の、再吟味です。しかし日本語訳で読むと、快適だの善だの享受だのということになって、いきなりむずかしい観念の世界に連れていかれてしまいます。哲学系の辞典もいいのですが、概してその世界の中で整合的な説明が行われており、文字通り、雲をつかむような思いをすることが多いものです。

上記類語辞典は、詩の味読にも役に立ちます。なぜここで、この言葉でなくこの言葉が使われているのか。一般の辞書で訳語を知り、日本語に置き換えて考えるのではなく、ひとつひとつの原語を吟味して味わう習慣を身につけると、歌曲を歌う場合にもたいへん有益なはずです。

〔付記〕ページを繰ってみると、「悲しい」系にtraurig以下8語が挙げられていますが、うち6語がuウムラウトを含んでいる。「信用する」系はtrauenなど4語ですが、すべて、auの二重母音を含む。いろいろな勉強ができそうです。