読売共催講座でバッハ2011年06月02日 23時20分44秒

6月になりました。私にとって今月のもっとも重要なイベントは、19日(日)に行われる、読売新聞と国立音楽大学の共催講座「音楽づくりの現場から~心に癒しを、社会に潤いを」です。講座は4月にスタート、12月まで行われますが、6月の3回目は、企画の責任者である私の出演。「世界に発信されたバッハの手書き楽譜 (音楽研究の現場から)」と題して講演します。

講演の柱は、2つあります。結婚カンタータBWV216の発見楽譜をネタに、音楽研究の実際についてお話しするのが1つ。最初と最後の二重唱を演奏しますが、アルト(プライセ川)は湯川亜也子さん、ソプラノ(ナイセ川)は、期待の新人、種谷典子さんです。指揮の渡邊順生さんには、研究所の去年のテーマだった《ゴルトベルク変奏曲》のテーマも弾いていただきます。

もうひとつのテーマは、《ロ短調ミサ曲》。国立音大による日本初演の様子や、現在進行中の準備の模様などをお話しし、〈クリステ・エレイソン〉を演奏します。こちらは阿部雅子さんと高橋織子さんの二重唱です。

連続講座ですが入場無料で自由に参加できますので気軽にお出かけください。19日(日)の13:30から15:00まで、国立音大の大ホールです。他のイベントについては、次話で。

政治に思う2011年06月03日 23時00分02秒

テレビが、直りました。CSチューナーの接触不良が原因でした。家族の不満大合唱には閉口しましたが(笑)、おかげで、内閣不信任案に伴う、世紀の茶番劇を見逃してしまいました。

皆さんのご意見はさまざまでしょうが、私は言葉で生きている人間として、言葉の術策を弄して地位や権力にしがみつく人間を許すことはできません。そんな人が国の頂点に立っているとは、なんとひどいことか、と思います。

私は、人間を政治的と非政治的に分けて、自分を非政治的、と分類しています。もちろん政治的人間も必要で、そういう人がいなくては、組織が成り立たないことも事実。そういう要素が乏しいのは自分の欠点でもあると思いますが(このため多くの方の期待にお応えできていない面があると思います)、非政治的は政治的の一形態、というよくある主張には、反発しています。それは、政治的であることが一義的に重要、という人の発想だと思うからです。政治的でないことで人間の深いところを見ることが芸術に取り組む上で重要だ、という立場を、私はずっと取ってきました。

音楽仲間にも、政治的な人(=上昇志向な人、権力を拡大しようとする人)と、非政治的な人(=音楽本位の人)がいます。私がいっしょに音楽をしたいのは、後者の方です。社会を見て、ますますその実感を強くしています。

6月のイベント2011年06月05日 10時59分45秒

すでにお知らせした通り19日の読売共催講座が特別のイベントですが、定期的な講座も続いています。昨日、朝日カルチャーセンター新宿講座のこだわり入門講座を済ませました。どう工夫してもむずかしい「一般の方にソナタ形式を理解していただく」というテーマに、新たな工夫で挑戦しました。この講座は、第1土曜の10:00からです。

8日(水)10:00は、調布(ちょうふ市民カレッジ)のバロック音楽講座第5回。テーマは「バロック作曲法入門」です。「古楽の楽しみ」のテーマ音楽であるヘンデルの《水上の音楽》など、分析の対象にぴったり。

10日(金)は、いずみホール・オペラです。グルックの《オルフェオとエウリディーチェ》を、岩田達宗演出、河原忠之音楽監督で上演します。私も参りますのでよろしく。

12日(日)14:00からは、須坂(すざかバッハの会)の音楽入門講座です。今月は「歌の昔と今--テノール歌手さまざま」というテーマですので、素材集めをしなければ。昔のベルカントの価値も、見直してみたいと思います。18日(土)10:00からの立川(楽しいクラシックの会)でも、同じお話をします。

22日(水)は調布の第6回で、「バッハの器楽曲--ソナタからコンチェルトまで」です。

25日(土)13:00は朝日カルチャーセンター横浜校のバッハ講座。『魂のエヴァンゲリスト』を読みながら音楽を鑑賞する形で進めていますが、ワイマール時代の最終回です。ドレスデンにおけるマルシャンとの対決などが話題となると思います。

意外にたくさんありますね。がんばります。

オペラどうなるの?2011年06月06日 23時05分05秒

新国立劇場から、《コジ・ファン・トゥッテ》の解説を頼まれました。ありがたく思いつつも、問い合せてみると、今度の演出は「現代のキャンプ場」を舞台にしている由。ドン・アルフォンソはキャンプ場のオーナー、デスピーナはその使用人、とのことでした。

不吉な予感がしましたが、応諾。解説は客観的に書いて欲しいということでしたので、本来のストーリーに従って書くことにしました。もともとどういうものであるかを理解して鑑賞していただきたいし、それを知ることで、演出家の手柄(?)も、正しく理解される、と思ったからです。

解説を書けば、招待券をいただけます。4日に行くことにはしましたが、不吉な予感。私が演出を受け入れることができるだろうか、どう考えても、そうではないように思われたからです。

だめでしたね、やっぱり。一番の理由は何かと言うと、キャンプ場という、一番男女関係の軽くなるシチュエーションを、愛と何か、という重いテーマの受け皿にしたということ。それでは、フィオルディリージの貞操観念自体が、滑稽なものになってしまいます。若者たちにワイルドな演技をさせて笑いを取るなどの工夫もありましたが、そうするとますます、モーツァルトの様式と見た目のギャップが大きくなる。間違いのない長所は、衣装代がかからないということです。しかし衣装を見る楽しみも、大きな事だと思うのですが・・・。

というわけで第1幕をがまんするのが精一杯でした。とはいえ、こういう評価を下す私が狭量だからなのではないか、という気持ちも相当あって、心たのしみません。最近のメジャーなオペラ公演はすべらかくこの路線にあり、それを楽しむお客様を、かなり集めているように思われるからです。このような現代化を通じて、ようやくオペラは生き残れるのでしょうか?

私はオペラ好きを公言して来ましたが、こういう演出ならばもう見たくない、という気持ちが芽生えていることが、われながら不安です。私の考え方がもう古い、というのであれば仕方ありませんが、「オレが面白くしてやるゾ」という演出家が力を握った結果であるとすれば、疑問を感じます。

ついでに、疑問をもうひとつ。なぜ歌い手がすべて、外国人なのでしょうか。今回の水準であれば、日本人を半分は使って、オペラ文化の向上に役立てるべきです。新国が若手の育成に尽力しているのは承知していますが、公演の主役に日本人を入れてこそ、日本のオペラ文化は発展すると思います。それだけの力をもった歌い手は、もうたくさんいるのですから。

老齢年金2011年06月08日 22時37分05秒

不肖私、老齢年金の申し込みに行ってきました。場所は、「たのくら」の会場の近くにある、立川年金事務所です。

対応は、何もそこまで、というほど、親切。面倒くさそうな書類を持ち込み、その場で書こうと思ったのですが、係の方が手取り足取り対応してくださり、ほとんど手がかかりませんでした。「お年寄りに親切」を絵に描いたような対応ですが、指導してくださる方は、私より少なくとも10歳は年上(笑)。こんなに親切な窓口って、日本ぐらいだと思います。日本、いい国ですよ。

まだ勤めていますから、老齢年金は要りません。先送りし、多めにもらうというオプションもあるようですが、「日本の財政状況を考えると今後何が起こるかわかりません。もらうものは早くもらっておいてください」という税理士さんの勧めで、面倒ながら手続きをしました。もうそんな歳になったんだなあ、という月並みな感想を抱きつつ帰宅。

テノールの話をするために古い録音や録画を確認していますが、昔のベルカント歌手のすばらしさに感嘆。とくにジーリは、鳥肌モノです。

昼からワイン2011年06月09日 23時51分40秒

14時半からのNHKの録音を、「今日はいつもと違います」と宣言して始めました。というのは、かなりお酒が入っていたのです。仕事前に飲んではいけないと思いつつ、いただいたワインがあまりにおいしかったので、結構飲んでしまいました。6月20日からの分の録音ですが、趣向をこらしています。それについては、あらためてご案内します。

なぜ飲んだかというと、サントリー芸術財団の昼食会に招かれていたからです。今度から、財団の理事にしていただきました。新しい音楽創造の支援に尽力してきた財団に私でいいのかという思いもありますが、視野を広げるための勉強をずいぶんさせていただいていることも確かなので、さらに勉強させていただくことにしました。妻には、「そんなことまでしたら、人生もうやることなくなっちゃうじゃないの」と言われましたが(笑)。

夜は、メトロポリタン歌劇場の公演へ。どれを取るか迷った末ドニゼッティ《ルチア》を選んだのは、周囲でベルカント・オペラを勉強している人が多く、作品をじっくり見直したいと思ったから。ディアナ・ダムラウ(ルチア)、ローランド・ヴィラゾン(エドガルド)以下、完璧なキャストによる、じつにすばらしい公演でした。やっぱりオペラ好きです(笑)。

またしてもペースメーカー2011年06月11日 23時46分25秒

大阪から帰宅。いずみホール・オペラの印象が体に満ちみちていますが、それについては落ち着いてから書くとして、別話題をはさみます。

木曜日。バスに乗り、運転手のすぐ後ろの席に座りました。バスの場合、前部ではいちばん前の席だけ、左右とも、進行方向に向いていますよね。その右側です。

メールチェックをしようと思い、携帯を出しました。すると、左側の席の女性から声あり。「ペースメーカーをしているので、やめてください!」と。どうやら、先日話題にした女性と同じ人のようです。

前回いただいたコメントで、「22センチ離れていれば大丈夫」という知識を得ていた私は、「これだけ離れていれば大丈夫ですよ」と言いました。間に通路をはさんでいるので、確実に1メートル以上あります。するとその女性は、「電波がいけないとお医者さんに言われています」とがんばるのですね。私は再度「いや、絶対大丈夫ですよ」と言いましたが、メールチェックはべつに急がないので、携帯をしまいました。

駅に着き、降りる段になって、ひとこと言ってやろうかと迷いが生じました。そのひとこととは、「優先席に座られたらいかがですか」というものです。しかし考えてみると、前回も今回もその人は一般席に座っているわけで、意図してそうしている可能性が考えられる。一般席から周囲の携帯使用者に警告することを、日課にしているのかもしれません。日課どころか、生きがいになっているのかもしれない。さらに考えてみると、前回も今回も私が言われたということは、その人がバス利用者の中では有名で、若い人達も知っていて利用しないでいるようにも思えてきました。そこで「ひとこと」は、ぐっと飲み込みました。

こんなとき役に立つのが、私の「ツキの理論」です。やっぱりその日、いい1日になりました(笑)。

「古楽の楽しみ」6月2011年06月13日 23時36分02秒

6月の「古楽の楽しみ」は、20日から25日までの放送です。

「バロックの森」が「古楽の楽しみ」と改題された理由は、中世、ルネサンスを含めたい、ということでした。しかしドイツは当時まだ後進国でしたから、聴くべきものが少ない。そこでしばらくバロック・オンリーで続けていました。しかし満を持してようやく、バロック以前のシリーズを作りました。

20日(月)は、中世のミンネゼンガー特集です。これを、『ニーベルンゲンの歌』(13世紀)の朗誦で始めたのが、ワグネリアンでもある、私の自慢。それに、ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ、ナイトハルト・フォン・ローエンタール、オスヴァルト・フォン・ヴォルケンシュタインを続けました。オスヴァルト、なかなかいいですね。

21日(火)は、初期の器楽です。ブクスハイム・オルガン曲集などのオルガン曲、ユーデンキュニヒ、ノイジードラーなどのリュート音楽、ハウスマン、ポッシュなどシュタットプファイファーの音楽と続けて、最後をプレトーリウスの《テルプシコーレ》で締めました。《テルプシコーレ》の開放感は、やはり格別。

22日(水)は多声声楽曲で、ハインリヒ・フィンクとハインリヒ・イザークのミサ楽章、モテットを集めてみました。イザークの美しさはもちろんですが、ドイツ最初の声楽ポリフォニー作曲家というべきフィンクの音楽はなかなかで、聴いていただく価値があると思います。ホーフハイマーのオルガン曲も、この日にはさみました。

23日(木)は、ルネサンス・ポリフォニーの代表者であるゼンフルで始め、初期のルター派教会音楽(ヴァルターなど)を概観し、最後をラッソで締めました。グレゴリオ聖歌にドイツ語を当てはめたミュンツァーの聖歌が珍しいと思います。農民戦争のコワモテ・イメージと違いますよ。

24日(金)は、宗教改革からバロックへの移行期の特集。エッカルト、ハンス・レオ・ハスラー、ヤーコプ・ハスラー、メルヒオル・フランクを取り上げました。ハンス・レオ・ハスラー、いいですね!シュッツ以前の最高のドイツ音楽かもしれません。

というわけで、私もたいへん勉強になりました。よろしくお願いします。

増えてゆくツキ2011年06月15日 23時54分19秒

羽生善治名人の著書『大局観』(角川Oneテーマ21)に、ツキの話が出ていました。羽生さんによると、ツキには2種類があるというのです。1つは、私がいつも申し上げている、「総量は一定」というツキ。しかしそのほかに、どこまでの無限に増えていくツキが存在し、大きな仕事をするときにはそれが役割を演じるのだ、というのです。しかし最終的には、ツキを超越することが大事だ、とも書かれていました。

そうかも知れませんね。神様が味方する、というイメージでしょうか。総量一定は初期分配で、事後的に神様の加減する配りがあるのかも知れません。『大局観』、予想を超えるいい本です。ぎりぎりのところで真摯に生きている方の知恵が、たくさん詰まっています。

勝負の神が帰趨を左右する、野球。広島カープは見る影もなくなってしまいましたが、今日のロッテ=巨人戦はしびれました。ロッテ岡田の、ものすごいファインプレー3つ。もうダメだと思ったところで出た、伊志嶺の逆転ホームラン。これがあるから、野球は楽しいです。ジャイアンツ、借金6だそうです(笑)。

私だけネクタイ2011年06月16日 23時57分38秒

6月は、理事会のシーズンです。今日は、住友生命健康財団の理事会。事前に「クールビズでどうぞ」という案内が回ったのですが、夕方にコンサートの予定もあったので、いつも通り、スーツにネクタイででかけました。

そしたら、ネクタイ着用は私ひとり!「申し訳ありません」などというハメになりました(笑)。この理事会、いつも高名な方々と中身の濃いお話ができるので楽しみです。今日も、震災関連の貴重なお話を、たくさん伺いました。

私はどうしても、クールビズに抵抗があります。きちんとした服装で人前に立て、という教育を受けましたし、自分も、それが好きなのです。しかし今年は、職場でもクールビズの指導が強化されていますので、どこかのタイミングで、イメージを裏切ろうと思います。本当は、定年まで貫いてしまうつもりだったのですが。

午後は、新橋でマッサージ。このところの多忙でずいぶん凝っていましたが、αウェーブ河本さんの丁寧な施療で回復。終わって外に出るとリラックスして、幸福感がありました。秋葉原のヨドバシカメラでゲームを買い、8階の食堂街シーアンで、刀削麺の夕食。私は刀削麺大好きなのですが、私の行く中では、ここが一番おいしいと思います。汗をぬぐい、鼻をかみ、涙をぬぐっての食事です(←超辛い)。

知人のコンサートを覗いて帰宅しました。