今月の「古楽の楽しみ」2014年09月19日 22時34分58秒

今月は「古楽としてのモーツァルト」という特集にしました。朝の気分が、ずいぶん変わることでしょう。古楽様式による名演奏を集めてモーツァルトを見直す、という趣旨ですが、ちくま学芸文庫の『モーツァルト』で推薦した録音をいくつか出しましたので、それとの関連でも聴いていただけます。

22日(月)は、ピリオドのよく似合う、若い頃の作品を集めました。まずモテット《エクスルターテ・ユビラーテ》を、バーバラ・ボニー+ピノックで。次にホ短調のヴァイオリン・ソナタを、ポッジャー+クーパーで。いかにも古楽らしい、のびやかな演奏です。最後にニ長調のピアノ・ソナタK.311を、ベザイデンホウトのフォルテピアノで。モーツァルト時代より少し後の楽器を使っていて、表現力が豊かです。

23日(火)は、ザルツブルク時代の、もう少し大きな編成の曲を特集しました。フルート四重奏曲ニ長調を菅きよみ、鈴木秀美他で。次に《ポストホルン・セレナード》から3つの楽章を、鈴木秀美~リベラ・クラシカで。最後にヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調から第1楽章を、寺神戸+クイケンで。名曲ばかりですが、とくに協奏交響曲、偉大な作品ですね。全身が熱くなります。

24日(水)は《フィガロの結婚》の抜粋。もちろん、クルレンツィス指揮、ムジカエテルナの演奏です。現代的なグランド・スタイルとはまったく異なるアンサンブル重視のコンセプトで、その問題意識には、教えられること大。オペラ・ファンの方々にも、聴いていただきたいと思います。

25日(木)は、最後期の作品を中心に。フリーメーソン葬送音楽をブリュッヘンで、クラリネット協奏曲のバセットクラリネット版(新全集の復元稿)をW.マイヤー+アーノンクールで、未完の最終作、ホルン協奏曲ニ長調(従来の第1番)をモンゴメリとエイジ・オブ・インライトゥンメントで、《レクイエム》から私の好きな〈ドミネ・イェーズー・クリステ〉を、ブリュッヘンで。最後期の響きの感覚が、ピリオド楽器を通じてこそよみがえることを実感しました。とりわけ、長いこと忘れていたブリュッヘン/池袋ライヴのすばらしさに、驚かされました。追悼として捧げたいと思います。

いい演奏が、たくさんあります。モーツァルトがもっともっと、こういう演奏で聴かれるといいと思います。