とても良かった「鳥の劇場」 ― 2015年03月19日 14時53分15秒
土曜日は、豊橋での仕事を終えたあと姫路に入りました。ここを根拠地として、日曜日に鳥取県の「鳥の劇場」を往復しよう、というのです。
廃校を利用して運営されている「鳥の劇場」の活動は、斯界で有名。私の関心は、掲げられている高い理念が、過疎を語られている県の、それもかなり奥まったところでどのように実現されているのだろうか、というところにありました。
鳥取県を訪れるのは、生まれて初めて。早めに着いたので鳥取市内を城址のあたりまで散策し、昼食の後ローカル線に乗って、浜村駅へ。そこから送迎車に乗せていただき、劇場に到達しました。一帯は温泉地のようです。
廃校の利用ですから環境は質素そのものですが、びっくりしたのは、雰囲気の温かさ。訪れた観客が心地よく過ごせるように、バリアフリーの観点も含めて、細やかな配慮が徹底しているのです。
上演される戯曲は、つかこうへい作の『戦争で死ねなかったお父さんのために』というもの。私にはこれまで、縁のなかった領域の芝居です。200席ほどの劇場に入ると、お父さん役の高橋等さんが、満面に闘志をみなぎらせながら、ああでもないこうでもないと、台詞の稽古をしている。ベースは学校の演劇部で、つか戯曲は、劇中劇として設定されるようです。
最初は開演までの時間つなぎかと思いましたが、やがて、その狙いが判明。ドラマの要所で重要な役割を果たす台詞を、あらかじめインプットさせておく意図なんですね。その効果は絶大でした。これは一例ですが、力強い原作にクールな枠組みを与えることによって、戦争と人間の関係に、複雑かつ多重な方向から光が当てられるようになっている。イデオロギーで切り捨てることのできない人間の思いを、さまざまに体験しながら芝居を観ていけるのです。
芸術監督を務める演出家、中島諒人(なかしままこと)さんがおっしゃる「演劇に何ができるのか」という探求はこういうことだったのかと感心し、勉強になりました。高橋さんの熱演はすばらしかったですが、オテロかジークフリートかというテノール歌唱にも仰天。こうした俳優さんたちがチームワークよくここに腰を据えていることも、劇場の理念あればこそだと思います。アフタートークの後、中島さんとお話しし、写真も撮らせていただきました。応援したい活動です。
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