バッハホールで響くバッハ2015年10月23日 09時29分16秒

18日(日)は、宮城県加美町の、中新田バッハホールへ。《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ》のコンサートの解説を担当するのですが、いつになく緊張しているのは、この日の出演者が大御所の前橋汀子さんで、初対面であるため。全6曲の演奏は正味2時間を超えますから、演奏者の負担はまことに大きく、お客様も楽ではありません。要点を絞り簡潔に、と心に刻んで舞台に立ちました。

前橋さんが恐縮にもサイン入りCDをもって挨拶に来てくださり、簡単な打ち合わせ。私がナビゲーションする場合にはいつも演奏者へのインタビューを試みていて、それが(いずみホールのオルガン・シリーズのように)演奏者とお客様をつなぐ役割を果たすと思っているのですが、前橋さんは、当然ながら演奏に集中したい、というご意向です。そこで、一応インタビューなしで終わることに決め、もし話てもいいというお気持ちになられたら、舞台から私を呼んでください、ということにしました。

演奏は前半4曲(ソナタ1、パルティータ1、ソナタ2、パルティータ3)、後半が2曲(ソナタ3、パルティータ2)。前橋さんはゆるみない気迫でまず1曲弾かれました。いったん舞台から下がって一息入れられるだろうと思ったら、そのまますぐ、2曲目に入られるではありませんか。とうとうそのまま4曲目まで行って、前半が終了しました。唖然とする集中力です。

後半のスピーチに出ると、客席が大きく盛り上がっているのがわかります。皆さん、集中して聴いておられるのです!長年《無伴奏》を弾き込んでおられる前橋さんですから、すべての音に神経が行き届き、それらが克明に、しかし豊かな潤いをもって届いてくる。そして全体が、高貴な美意識に貫かれています。それが手に取るように聞こえてくるのは、中新田バッハホールのすばらしい音響とバッハにふさわしい雰囲気のおかげ。それで演奏がどのぐらい引き立てられたかわかりません。

《シャコンヌ》が圧倒的な高揚のうちに弾き終えられ、万雷の拍手。さてどうなるかと思ったら、前橋さんは笑顔で私に合図してくださり(うれしい!)、私の差し出すマイクで、感動のこもったメッセージを客席に送ってくださいました。いや、私がこれまで聴いたうちでも1、2を争う、すばらしい《無伴奏》でした。


写真右端は、バッハホールを建設された本間元町長、左端は、ホールによる町おこしに力を入れられている、猪俣現町長です。このホール、本当にいいところなので、皆さん、ぜひ応援してあげてください。東北新幹線の古川から入ります。

コメント

_ 猪股洋文 ― 2016年02月05日 22時36分08秒

アップしてくださりありがとうございます。素晴らしい演奏会でしたね。磯山先生、またおいでください。

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