今月のCD2016年05月29日 07時47分17秒

今月は鮮度とびきりという新譜が3つあり、どれを選ぶか、決心するまでかなり時間がかかりました。最後は、互角なら邦人アーチストを、という原則に則りました。

選んだのはベートーヴェンの《ラズモフスキー》全3曲、クァルテット・エクセルシオの演奏したもの(ライヴノーツ)です。絶好調ですね、このアンサンブルは。ロータスのような本場と見まがう、というスタイルではなく、日本人の繊細な感性が張り巡らされて、しなやか、かつ一体感に秀でています。視界が遠くまで開けている、という感じの、爽快なベートーヴェンです。

チューリヒのトーンハレ管弦楽団ではジンマンが第一線を退き、後任の若手(リオネル・ブランギエ)がとてもいい、という話を、ウィーン筋から聞いていました。そしたら、なんとラヴェルの4枚組、6000円というセットが出ました(グラモフォン)。管弦楽作品全曲に加えて、2つのピアノ協奏曲と《ツィガーヌ》まで入っている。色彩の豊かさに親しみをもって聴き入ってしまう、魅力的なラヴェルです。少しずつ聴いていくのが本当に楽しみでした。

「黄昏に」と題する北村朋幹のピアノ・アルバム(フォンテック)。これがまた良かったのです。ブラームスの第3番から入り、晩年のリスト5曲の後でベルクのソナタ、という通人向きの選曲ですが、並々ならぬ思索力・構想力が示されており、無意味な音符が1つもない。たいしたものですね。

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