数学は美しい2016年08月08日 06時41分11秒

過日、小川洋子さんの小説の感想を本欄に綴ったところ、私にまとめて寄贈してくださる、奇特な方がありました。そこで、少しずつ読んでおります。読み終わってとても良かったのが、『博士の愛した数式』という一冊です。

タイトルは上記のごとくで、『数式を愛した博士』ではない。人間を描くその先に、数学の美を追究し続ける本です。数学の美に惚れ込んだ一種変人の数学者を家政婦さんが世話し、その過程で数学の奥深さに気づいてゆく、というお話。私のように数学がまったく苦手な者にも、そうそう、だから数学はすばらしいんだよ、と思えるように書かれているのがすごいです。家政婦さんがある数式の秘密に独力でたどり着く部分の記述は、スリル満点、感動的でした。

独特な小説です。でも自分にすっと入ってくるのは、著者が人間を超えたものに目を据え、その価値観を貫いているからでしょう。ストーリーの先を絶対に読ませない深謀遠慮も、なかなか。あえて言えば、切り札をどんどん切るため、長編としては登攀の感覚に欠けるところがあります。ワーグナーとは逆の行き方です(笑)。

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