おめでとう ― 2010年12月11日 10時29分22秒
昨日本選が行われた第21回友愛ドイツ歌曲コンクールで、私の論文弟子である小島芙美子さんが優勝、川辺茜さんが2位・聴衆賞・シュトラウス賞というニュースが入りました。おめでとうございます。
26日の《ポッペアの戴冠》にも、小島さんはドゥルジッラ、川辺さんは幸運の神+小姓で出演します。おかげさまで、公演にも箔が付きました。長野の方々、ご期待ください。
話は変わりますが、昨日研究室で「ニヒル」という概念が話題になり、「ニヒルな人」って誰だろう、とみんなで考えました。多々候補が挙がり、名簿なども繰ってみましたが、今は亡き佐藤慶のような人って、案外いないんですよね。寡黙、孤高、陰影・・・といった諸条件も検討し、かなり価値観が高いという結論になりました。皆さんの周囲にはおられますか。容易に見あたらないのは、「武士は食わねど高楊枝」「父親の威厳」といった価値観がなくなって、みんなパンダやコアラのようなお父さんになってしまったからでしょうか。
【付記】澄音愛好者さん、候補としてどうでしょう。
26日の《ポッペアの戴冠》にも、小島さんはドゥルジッラ、川辺さんは幸運の神+小姓で出演します。おかげさまで、公演にも箔が付きました。長野の方々、ご期待ください。
話は変わりますが、昨日研究室で「ニヒル」という概念が話題になり、「ニヒルな人」って誰だろう、とみんなで考えました。多々候補が挙がり、名簿なども繰ってみましたが、今は亡き佐藤慶のような人って、案外いないんですよね。寡黙、孤高、陰影・・・といった諸条件も検討し、かなり価値観が高いという結論になりました。皆さんの周囲にはおられますか。容易に見あたらないのは、「武士は食わねど高楊枝」「父親の威厳」といった価値観がなくなって、みんなパンダやコアラのようなお父さんになってしまったからでしょうか。
【付記】澄音愛好者さん、候補としてどうでしょう。
存在への愛 ― 2010年12月10日 11時54分00秒
毎朝9時からやっている「オペラ史B」の授業が、あと1回を残すのみになりました。
「B」で採り上げるのはイタリア・オペラ以外の作品。1日1曲で、今日まで12曲を勉強しました。パーセルの《ディドとエネアス》、ラモーの《優雅なインドの国々》、ヘンデルの《ジュリアス・シーザー》、モーツァルトの《後宮からの誘拐》と《魔笛》、ワーグナーの《タンホイザー》と《ニュルンベルクのマイスタージンガー》、ムソルグスキーの《ボリス・ゴドゥノフ》、シュトラウスの《ばらの騎士》、バルトークの《青ひげ公の城》、ショスタコーヴィチの《ムツェンスク郡のマクベス夫人》、ガーシュウィンの《ポーギーとベス》の12曲です。
ほとんどの学生がイタリア・オペラの勉強から始めるので、知らないオペラばかり、という人もけっこういたはず。しかし皆さんは、むしろ足りない曲を、次々と思い浮かべられることでしょう。どうしてベートーヴェンの《フィデリオ》がないの?ウェーバーの《魔弾の射手》は?ヨハン・シュトラウスの《こうもり》は?オッフェンバックの《ホフマン物語》は?チャイコフスキーの《オネーギン》は?サン=サーンスの《サムソンとデリラ》は?マスネの《ウェルテル》は?ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》は?ヤナーチェクの《イェヌーファ》は?プーランクの《カルメル会修道女の対話》は?等々、きりがありません。
世界のオペラは、これほど、広い世界なのですね。指が20本あっても30本あっても、傑作の数には及ばない。今日の《ポーギーとベス》(ラトル指揮)は、昨日の下調べの段階から感動してしまい、涙ながらに資料を作成(笑)。今日また、ブルーノートに酔いしれた、という感じです。
たくさんのオペラを時代順に見てきて思うこと。作風や様式は全然曲によって違いますし、硬派な素材も、軟派な素材もある。でも名曲のすべてを貫いているのは、存在への愛、存在をいとおしむ心ではないでしょうか。それを共有できるのが、オペラの体験だと思います。
「B」で採り上げるのはイタリア・オペラ以外の作品。1日1曲で、今日まで12曲を勉強しました。パーセルの《ディドとエネアス》、ラモーの《優雅なインドの国々》、ヘンデルの《ジュリアス・シーザー》、モーツァルトの《後宮からの誘拐》と《魔笛》、ワーグナーの《タンホイザー》と《ニュルンベルクのマイスタージンガー》、ムソルグスキーの《ボリス・ゴドゥノフ》、シュトラウスの《ばらの騎士》、バルトークの《青ひげ公の城》、ショスタコーヴィチの《ムツェンスク郡のマクベス夫人》、ガーシュウィンの《ポーギーとベス》の12曲です。
ほとんどの学生がイタリア・オペラの勉強から始めるので、知らないオペラばかり、という人もけっこういたはず。しかし皆さんは、むしろ足りない曲を、次々と思い浮かべられることでしょう。どうしてベートーヴェンの《フィデリオ》がないの?ウェーバーの《魔弾の射手》は?ヨハン・シュトラウスの《こうもり》は?オッフェンバックの《ホフマン物語》は?チャイコフスキーの《オネーギン》は?サン=サーンスの《サムソンとデリラ》は?マスネの《ウェルテル》は?ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》は?ヤナーチェクの《イェヌーファ》は?プーランクの《カルメル会修道女の対話》は?等々、きりがありません。
世界のオペラは、これほど、広い世界なのですね。指が20本あっても30本あっても、傑作の数には及ばない。今日の《ポーギーとベス》(ラトル指揮)は、昨日の下調べの段階から感動してしまい、涙ながらに資料を作成(笑)。今日また、ブルーノートに酔いしれた、という感じです。
たくさんのオペラを時代順に見てきて思うこと。作風や様式は全然曲によって違いますし、硬派な素材も、軟派な素材もある。でも名曲のすべてを貫いているのは、存在への愛、存在をいとおしむ心ではないでしょうか。それを共有できるのが、オペラの体験だと思います。
「艶」 ― 2010年12月08日 13時43分25秒
まだ大学院にいた頃、先輩から「君のスケジュールは分刻みだね」と言われたことがあります。美しき誤解で全然そんなことはなかったのですが、今週は、これって分刻み?という実感。とりあえず今週を乗り切るのが目標です。今は静岡県。新幹線の中です。
昨日は、カンタータのコンサートの、ゲネプロ。本番が14日に迫っていますので、みんな集中力が高まってきました。それにしても、やるたびに大きく見えてくるのが、198番の選帝侯妃追悼カンタータです。バッハの最高傑作の地位を争う作品ですね。神戸、平尾の二枚看板を揃えたガンバがさすがに強力で、加納悦子さんの歌われるアルトのアリアの効果が倍増。薄幸のヒロインに対するイメージ作りのしやすさが、合唱にも力を与えているようです。
この作品の存在感は、まったく独特。バッハというと奥に分け入るにつれて深いというイメージがあると思いますが、この曲では創意がすべて花開くように外に表れていて、内面と外面が一体になっている。漢字一文字で表せば、「艶」という字が浮かんで来ます。こういう曲は、他にちょっと思い付きません。
別の言葉で言えば、きわめて修辞的に、効果を張り巡らせて書かれた音楽です。ソプラノ独唱の阿部雅子さんがそのことを踏まえた歌作りをしていることに、共感を覚えます。
特別な作品だと思うにつれ、バッハが主要曲をケーテン侯の葬送音楽やマルコ受難曲に転用したのは当然であるように思えてきました。一回では残念過ぎます。
昨日は、カンタータのコンサートの、ゲネプロ。本番が14日に迫っていますので、みんな集中力が高まってきました。それにしても、やるたびに大きく見えてくるのが、198番の選帝侯妃追悼カンタータです。バッハの最高傑作の地位を争う作品ですね。神戸、平尾の二枚看板を揃えたガンバがさすがに強力で、加納悦子さんの歌われるアルトのアリアの効果が倍増。薄幸のヒロインに対するイメージ作りのしやすさが、合唱にも力を与えているようです。
この作品の存在感は、まったく独特。バッハというと奥に分け入るにつれて深いというイメージがあると思いますが、この曲では創意がすべて花開くように外に表れていて、内面と外面が一体になっている。漢字一文字で表せば、「艶」という字が浮かんで来ます。こういう曲は、他にちょっと思い付きません。
別の言葉で言えば、きわめて修辞的に、効果を張り巡らせて書かれた音楽です。ソプラノ独唱の阿部雅子さんがそのことを踏まえた歌作りをしていることに、共感を覚えます。
特別な作品だと思うにつれ、バッハが主要曲をケーテン侯の葬送音楽やマルコ受難曲に転用したのは当然であるように思えてきました。一回では残念過ぎます。
12月のイベント ― 2010年12月05日 23時49分22秒
表記のご案内です。
NHKFM「バロックの森」の出演は、明日から。今月はドイツ・バロックのクリスマス特集ということで、バッハの《クリスマス・オラトリオ》を毎日1部ずつ聴き、さまざまな作曲家のクリスマス音楽を組み合わせる、というプログラムを作りました。演奏は、アーノンクールです。シェーンベルク合唱団のすばらしい、円熟した演奏です。
最初のイベントは、14日(火)。バッハ演奏研究プロジェクト声楽部門のコンサートです。18:30から、国立音大小ホール。今年は、指揮者大塚直哉さんの集めた若手器楽アンサンブルが少しずつ成長し、自前でコンサートが組めるようになりました。要所にはベテランが入り、中でもガンバは、神戸愉樹美、平尾雅子の二枚看板を並べています。
作品は名作揃い。「カンタータとは何かを知りたければこれを聴いてください」と私の推奨する第179番《心せよ、お前の敬神が偽善とならぬように》と、感動あふれる最高傑作の第198番(選帝侯妃追悼カンタータ)、それにモテット《主に向かって新しい歌をうたえ》です。小泉惠子、阿部雅子、加納悦子、藤井雄介、小堀勇介、小川哲生、千葉祐也といった方々が、コンチェルティストを務めます。相当いいと思いますので、ぜひお出かけください(入場無料)。
18日(土)10:00からの「たのくら」(立川市錦町地域学習館)は、「東欧オペラの魅力」という話をします。バルトークの《青ひげ公の城》を、メインに取り上げます。
25日(土)13:00からの朝日カルチャーセンター横浜校のバッハ講座は、『魂のエヴァンゲリスト』の「若き日に死を見つめて」の章第1回です。カンタータ第106番を中心にした話になると思います。
26日(日)は、すでにご案内した、すざかバッハの会(14:00、須坂メセナホール)。モンテヴェルディの《ポッペアの戴冠》を、渡邊順生さん、平尾雅子さんらの器楽と、私の「手兵」たちのスタッフで上演します。今日ようやく、「演出ノート」を配布したところ。目下横浜の渡邊邸で、練習が進められています。温泉もあるいいところですから、観光を兼ねて、ぜひいらしてください。
NHKFM「バロックの森」の出演は、明日から。今月はドイツ・バロックのクリスマス特集ということで、バッハの《クリスマス・オラトリオ》を毎日1部ずつ聴き、さまざまな作曲家のクリスマス音楽を組み合わせる、というプログラムを作りました。演奏は、アーノンクールです。シェーンベルク合唱団のすばらしい、円熟した演奏です。
最初のイベントは、14日(火)。バッハ演奏研究プロジェクト声楽部門のコンサートです。18:30から、国立音大小ホール。今年は、指揮者大塚直哉さんの集めた若手器楽アンサンブルが少しずつ成長し、自前でコンサートが組めるようになりました。要所にはベテランが入り、中でもガンバは、神戸愉樹美、平尾雅子の二枚看板を並べています。
作品は名作揃い。「カンタータとは何かを知りたければこれを聴いてください」と私の推奨する第179番《心せよ、お前の敬神が偽善とならぬように》と、感動あふれる最高傑作の第198番(選帝侯妃追悼カンタータ)、それにモテット《主に向かって新しい歌をうたえ》です。小泉惠子、阿部雅子、加納悦子、藤井雄介、小堀勇介、小川哲生、千葉祐也といった方々が、コンチェルティストを務めます。相当いいと思いますので、ぜひお出かけください(入場無料)。
18日(土)10:00からの「たのくら」(立川市錦町地域学習館)は、「東欧オペラの魅力」という話をします。バルトークの《青ひげ公の城》を、メインに取り上げます。
25日(土)13:00からの朝日カルチャーセンター横浜校のバッハ講座は、『魂のエヴァンゲリスト』の「若き日に死を見つめて」の章第1回です。カンタータ第106番を中心にした話になると思います。
26日(日)は、すでにご案内した、すざかバッハの会(14:00、須坂メセナホール)。モンテヴェルディの《ポッペアの戴冠》を、渡邊順生さん、平尾雅子さんらの器楽と、私の「手兵」たちのスタッフで上演します。今日ようやく、「演出ノート」を配布したところ。目下横浜の渡邊邸で、練習が進められています。温泉もあるいいところですから、観光を兼ねて、ぜひいらしてください。
北と南 ― 2010年12月02日 23時49分17秒
1日と2日、いずみホールでは、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルのシューマン交響曲全曲のコンサートがありました。月をまたいでしまったためご案内ができず失礼しました。私は1日、第4番と第1番(+α)のコンサートを聴きました。
こんなシューマン、今まで聴いたことがありません。オーケストラの士気が高く、集中力が高くてアグレッシヴ。シャープな響きで奔流のように綴られてゆくシューマンは細部の着想も豊かで、きわめて独創性の高い演奏になっています。胸のすくような全力投球の演奏に接して、お客様たちの熱狂も、まれに見るほどのものでした。
オーケストラの本拠は、北ドイツのブレーメン。指揮者は、エストニア人です。エストニアがどういう風土か知らないのですが、私には、こういう演奏は北のプロテスタント圏でのみ生まれるもののように思われました。南ドイツ以南、カトリック圏の人たちは、長い文化の歴史がありますから、演奏にも、伝統を重んじる。これに対して北は宗教改革を受け入れた人たちで、実験や革新を重んじて、ゼロからの出発も辞さない。古楽において北が先行し、南がずっと遅れたのは、その意味でロジカルなことでした。生活習慣においても、そういう傾向があると思います。
シューマンの音楽に余情や奥ゆかしさを求めると、今回の演奏は、ちょっと違う。でもそこで革新を選ぶのが北の人たちらしいな、と思って聴いた私でした。
〔付記〕オペラの演出もそうですよね。北が前衛傾向、南が伝統傾向です。
こんなシューマン、今まで聴いたことがありません。オーケストラの士気が高く、集中力が高くてアグレッシヴ。シャープな響きで奔流のように綴られてゆくシューマンは細部の着想も豊かで、きわめて独創性の高い演奏になっています。胸のすくような全力投球の演奏に接して、お客様たちの熱狂も、まれに見るほどのものでした。
オーケストラの本拠は、北ドイツのブレーメン。指揮者は、エストニア人です。エストニアがどういう風土か知らないのですが、私には、こういう演奏は北のプロテスタント圏でのみ生まれるもののように思われました。南ドイツ以南、カトリック圏の人たちは、長い文化の歴史がありますから、演奏にも、伝統を重んじる。これに対して北は宗教改革を受け入れた人たちで、実験や革新を重んじて、ゼロからの出発も辞さない。古楽において北が先行し、南がずっと遅れたのは、その意味でロジカルなことでした。生活習慣においても、そういう傾向があると思います。
シューマンの音楽に余情や奥ゆかしさを求めると、今回の演奏は、ちょっと違う。でもそこで革新を選ぶのが北の人たちらしいな、と思って聴いた私でした。
〔付記〕オペラの演出もそうですよね。北が前衛傾向、南が伝統傾向です。
精神の静けさ ― 2010年12月01日 08時46分38秒
11月31日(火)には、バッハ演奏研究プロジェクト・ピアノ部門の発表コンサートがありました。今年は《ゴルトベルク変奏曲》をテーマに勉強してきましたので、最初は、6人の選抜受講者による、リレー演奏。本番に向けて練習を積んできた成果のわかる、なかなか粒の揃った出来映えでした。
「ピアノで弾くバッハ」の研究を掲げて勉強してきたこのプロジェクト。常任の指導者は、ピアノの加藤一郎さんと、チェンバロの渡邊順生さんのお二人でした。第2部ではまず、加藤一郎さんによる、《半音階的幻想曲とフーガ》。加藤さんのまとまったピアノ演奏を客席で聴くのはじつは初めてでしたが、明晰な音色と知的な構成はたいしたもので、びっくりしました。次いで、お二人の二台チェンバロで、《ゴルトベルク変奏曲》の主題による《14のカノン》。渡邊さんの詳しい解説がつき、バッハの幾何学的世界のすごさを、どなたも実感。私は14のカノンの番号を読み上げる仕事でしたが、途中でわからなくなる危険があり、緊張しました(笑)。
最後は、渡邊さんのチェンバロによる《ゴルトベルク変奏曲》の抜粋演奏でした。渡邊さんの《ゴルトベルク》には本ブログでも何度か賛辞を捧げていますが、今回はとりわけ感動的で、チェンバロという楽器のすばらしさにあらためて目を開かれた方も多かったようです。渡邊さんはこの日身内のご不幸を乗り越えて演奏に来てくださいました。そのことも、感動の背景にあったかもしれません。三年間のよい締めくくりになりました。ありがとうございます。
チェンバロ演奏には何が必要か、はっきりわかったことがあります。それは、「精神の静けさ」です。静謐の中から繊細な響きが紡がれるときに、真の優雅さが立ち昇る。渡邊さんがそうですし、レオンハルトもそうですよね。
「ピアノで弾くバッハ」の研究を掲げて勉強してきたこのプロジェクト。常任の指導者は、ピアノの加藤一郎さんと、チェンバロの渡邊順生さんのお二人でした。第2部ではまず、加藤一郎さんによる、《半音階的幻想曲とフーガ》。加藤さんのまとまったピアノ演奏を客席で聴くのはじつは初めてでしたが、明晰な音色と知的な構成はたいしたもので、びっくりしました。次いで、お二人の二台チェンバロで、《ゴルトベルク変奏曲》の主題による《14のカノン》。渡邊さんの詳しい解説がつき、バッハの幾何学的世界のすごさを、どなたも実感。私は14のカノンの番号を読み上げる仕事でしたが、途中でわからなくなる危険があり、緊張しました(笑)。
最後は、渡邊さんのチェンバロによる《ゴルトベルク変奏曲》の抜粋演奏でした。渡邊さんの《ゴルトベルク》には本ブログでも何度か賛辞を捧げていますが、今回はとりわけ感動的で、チェンバロという楽器のすばらしさにあらためて目を開かれた方も多かったようです。渡邊さんはこの日身内のご不幸を乗り越えて演奏に来てくださいました。そのことも、感動の背景にあったかもしれません。三年間のよい締めくくりになりました。ありがとうございます。
チェンバロ演奏には何が必要か、はっきりわかったことがあります。それは、「精神の静けさ」です。静謐の中から繊細な響きが紡がれるときに、真の優雅さが立ち昇る。渡邊さんがそうですし、レオンハルトもそうですよね。
ファイルの復活から打ち上げまで ― 2010年11月29日 07時40分57秒
USBメモリに入ったパワーポイントのファイルを、会場にしつらえられたパソコンで、いかにして開けるものとなしうるか。皆さんだったら、どうなさるでしょうか。
加藤一郎先生がご自分のノートパソコンで試してくださいましたが、やはり開けない、とのこと。ファイルに問題があることは、確かなようです。でも手段は、いろいろありそう。研究室に戻って考えました。私のパソコンには、Agreeは入っているが、Powerpointは入っていません。パソコンごと運搬するという方法は、ちょっと現実味を欠きます。
音楽学の研究室のパソコンには、パワポが入っていない。しかし音楽研究所のパソコンに、オープンオフィスが入っていることがわかりました。やってみると、開けます!そこで、開いたファイルの名前を変え、パワポの複数のバージョンで保存しました。ホールに戻り、試してみると、無事開けるではありませんか。オープンオフィスで保存し直したことで、会場のパソコンと整合性が取れたようなのです。参考にしていただけると嬉しいです。
順調に進んだようですが、時間も迫っていたので、かなり焦りました。しかしおかげで順調に「バッハとポロネーズ」の話が出来、中舘栄子先生率いるリトミック・サークルによる舞踊実演に引き継ぐことができました。後半は、ショパンのポロネーズに関する、さまざまな考察。久元祐子さんの《英雄ポロネーズ》が、華やかな締めになりました。直前のインタビューで、この曲には英雄の裏の面が盛り込まれていることを忘れてはならない、というお話をされたのが、心に響きました。
ホールに人を集めて研究発表するというのは、学生にとって、重い課題です。ポーランドに精通する学生がいるわけではありませんから、当初はまことに頼りなく、これで発表会できるのかなあ、というのが正直なところでした。そこで、ポーランド音楽研究の権威である田村進先生のお話を伺い、ショパン研究で知られる加藤一郎先生のご指導をいただくなどして、専門性の涵養に努めました。諸先生の無償のご協力は、本当にありがたいことでした。
救いだったのは、7人の学生がきわめて熱心で、団結していたということです。授業時間(←このイベント用に設定されている)内にも、時間外にもいつも集まって、活発に動いている。私はときどき顔を出す程度でしたが、どんどん自力で、雪だるまが大きくなっていくのです。
結果として、かなりのレベルまで進んだと思います。目標に挑むことによって、学生は成長するなあというのが、偽らざる実感。きびきび準備に動いている姿は、全員、とても魅力的に見えました。夜は当然、打ち上げ。ほとんど寝ていないのに解放感を満喫できるのも、若さなのでしょうか。
加藤一郎先生がご自分のノートパソコンで試してくださいましたが、やはり開けない、とのこと。ファイルに問題があることは、確かなようです。でも手段は、いろいろありそう。研究室に戻って考えました。私のパソコンには、Agreeは入っているが、Powerpointは入っていません。パソコンごと運搬するという方法は、ちょっと現実味を欠きます。
音楽学の研究室のパソコンには、パワポが入っていない。しかし音楽研究所のパソコンに、オープンオフィスが入っていることがわかりました。やってみると、開けます!そこで、開いたファイルの名前を変え、パワポの複数のバージョンで保存しました。ホールに戻り、試してみると、無事開けるではありませんか。オープンオフィスで保存し直したことで、会場のパソコンと整合性が取れたようなのです。参考にしていただけると嬉しいです。
順調に進んだようですが、時間も迫っていたので、かなり焦りました。しかしおかげで順調に「バッハとポロネーズ」の話が出来、中舘栄子先生率いるリトミック・サークルによる舞踊実演に引き継ぐことができました。後半は、ショパンのポロネーズに関する、さまざまな考察。久元祐子さんの《英雄ポロネーズ》が、華やかな締めになりました。直前のインタビューで、この曲には英雄の裏の面が盛り込まれていることを忘れてはならない、というお話をされたのが、心に響きました。
ホールに人を集めて研究発表するというのは、学生にとって、重い課題です。ポーランドに精通する学生がいるわけではありませんから、当初はまことに頼りなく、これで発表会できるのかなあ、というのが正直なところでした。そこで、ポーランド音楽研究の権威である田村進先生のお話を伺い、ショパン研究で知られる加藤一郎先生のご指導をいただくなどして、専門性の涵養に努めました。諸先生の無償のご協力は、本当にありがたいことでした。
救いだったのは、7人の学生がきわめて熱心で、団結していたということです。授業時間(←このイベント用に設定されている)内にも、時間外にもいつも集まって、活発に動いている。私はときどき顔を出す程度でしたが、どんどん自力で、雪だるまが大きくなっていくのです。
結果として、かなりのレベルまで進んだと思います。目標に挑むことによって、学生は成長するなあというのが、偽らざる実感。きびきび準備に動いている姿は、全員、とても魅力的に見えました。夜は当然、打ち上げ。ほとんど寝ていないのに解放感を満喫できるのも、若さなのでしょうか。
学生の発表会に参加 ― 2010年11月27日 23時11分36秒
昨日(26日の金曜日)、音楽学専攻の3年生による研究発表会が催されました(「音楽学専攻」というのは制度に照らしては不正確な表現なのですが、わかりやすくそう書かせていただきます)。今年は、7人の共同研究。担当教員は持ち回りなのですが、私が担当になりました。結構重い責任です。全員が興味をもってかかわれるテーマを見つけるのが例年至難の業ですし、予算も特にない中で、イベント化しなくてはならないからです。
テーマは、「What's ポロネーズ?」というものでした。ポーランドの歴史と文化、ポロネーズのルーツと発展をまとめ、後半はショパンのポロネーズにフォーカスを当てて、最後は久元祐子さんの《英雄ポロネーズ》演奏で締めくくる、という計画になりました。
ポロネーズとなると、私にも言いたいことがあります。当ブログでも折にふれてお話ししているように、トーマス・カントルとしてのバッハはザクセン=ポーランド連合王国の作曲家で、ポーランド文化の象徴であるポロネーズを、種々の作品に取り入れており、そのことが、昨今のバッハ研究の関心の重要な対象になっているからです。
そのことは当然発表の内容に組み込まれて欲しいわけですが、自分も参加していいものか、かなり迷いました。趣旨としては、学生にすべて委ねる方がいいわけです。しかし、来てくださる方に充実した情報をお届けすることの方が結局は重要だと思うに至り、ショパンへの前史の部分で、私にも「バッハとポロネーズ」というコーナーを設けてもらいました。「子供のケンカに親が出る」のは、今年これが2回目です。
そこで、Agreeでプレゼンテーション・ファイルを作成し、パワーポイントの規格で保存して、USBメモリで持参しました。ところがホールにしつらえられたパソコンで試してみると、パワーポイントが読み出してくれないのです。念のためと思って持参した自分のノートパソコンも最近不調で、反応しないキーが、数字まで拡大している。パスワードが打ち込めないのです。さあ、困りました。(続く)
【付記】困ったって言ったって、結局解決しちゃうんだよね、と投げやりにおっしゃる皆さん。続きはすぐ出しますのでお許しください。
テーマは、「What's ポロネーズ?」というものでした。ポーランドの歴史と文化、ポロネーズのルーツと発展をまとめ、後半はショパンのポロネーズにフォーカスを当てて、最後は久元祐子さんの《英雄ポロネーズ》演奏で締めくくる、という計画になりました。
ポロネーズとなると、私にも言いたいことがあります。当ブログでも折にふれてお話ししているように、トーマス・カントルとしてのバッハはザクセン=ポーランド連合王国の作曲家で、ポーランド文化の象徴であるポロネーズを、種々の作品に取り入れており、そのことが、昨今のバッハ研究の関心の重要な対象になっているからです。
そのことは当然発表の内容に組み込まれて欲しいわけですが、自分も参加していいものか、かなり迷いました。趣旨としては、学生にすべて委ねる方がいいわけです。しかし、来てくださる方に充実した情報をお届けすることの方が結局は重要だと思うに至り、ショパンへの前史の部分で、私にも「バッハとポロネーズ」というコーナーを設けてもらいました。「子供のケンカに親が出る」のは、今年これが2回目です。
そこで、Agreeでプレゼンテーション・ファイルを作成し、パワーポイントの規格で保存して、USBメモリで持参しました。ところがホールにしつらえられたパソコンで試してみると、パワーポイントが読み出してくれないのです。念のためと思って持参した自分のノートパソコンも最近不調で、反応しないキーが、数字まで拡大している。パスワードが打ち込めないのです。さあ、困りました。(続く)
【付記】困ったって言ったって、結局解決しちゃうんだよね、と投げやりにおっしゃる皆さん。続きはすぐ出しますのでお許しください。
メディアアート ― 2010年11月25日 08時16分31秒
大学から大学に移動する合間を縫って、展示を見に行きました。初台のオペラシティに行かれる方は多いと思いますが、コンサートホールの上の階に、NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)というのがあることをご存じですか?広々とした、気持ちのいい空間です。そこで、「みえないちから」という企画展示をやっているのです。
アニミズムというと太古の精霊信仰という感じを受けますが、魂の宿りは最先端のテクノロジーの成果にも同じように見られる、という発想から、種々のメディアアートが展示されています。人間の認知の枠組みを考え直させるところがあり、脳のリフレッシュになりますね。2月までやっているようなので、興味のある方、どうぞ。
アニミズムというと太古の精霊信仰という感じを受けますが、魂の宿りは最先端のテクノロジーの成果にも同じように見られる、という発想から、種々のメディアアートが展示されています。人間の認知の枠組みを考え直させるところがあり、脳のリフレッシュになりますね。2月までやっているようなので、興味のある方、どうぞ。
やっぱりブーレーズ ― 2010年11月23日 11時56分48秒
毎日、がんばっています。
土曜日は、「楽しいクラシックの会」。現役指揮者の映像を見て、品定めをしました。断然すごいと思ったのは、ブーレーズ。シカゴ交響楽団を指揮した《火の鳥》ですが、人間業とは思えません。超正確、精密なのに、音楽が生きていて、しなやかなのです。いったいどのぐらい練習すればああなるのか不思議ですが、ブーレーズが指揮するだけで、かなりそうなってしまうとも思われます。指揮者の能力への、尊敬と信頼、ということなのでしょうか。それとは正反対ですが、アバドの《新世界》も情感豊かで、皆さん感動されていたようです。
今月のCD選でブーレーズのシマノフスキ《ヴァイオリン協奏曲》と《交響曲第3番》を第1位にしたところ、3人の評者が全員一致しました。ウィーン・フィルのライブですが、度肝を抜かれるすごさです。私は先月もブーレーズのマーラーを第1位にしたので、2ヶ月続きました。第2位には、ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルのシューマンの交響曲を入れました。「鳴らない」ことでは定評のあるシューマンの交響曲がこれほど新鮮に響くのは、たいしたものだと思います。
先月スクロヴァチェフスキー~読響のブルックナー《第8》を推薦したのですが、今月は別テイクが、《第9》との組み合わせでDVD化されました。「端然とした楷書の芸術に、求道の精神を聴く」と書いて推薦しましたが、やっぱり80代の指揮者、すごいです。
日曜日は、山崎法子さんのリサイタル。ヴォルフの自在な表現はこの方ならではで、後半、大きく盛り上がりました。火曜日は、皆川先生のホストによるサントリーのオルガン・コンサート。椎名雄一郎さんの演奏がすばらしかったですが、私自身は60点というところで、もうひとつ、流れに乗りきれませんでした。
土曜日は、「楽しいクラシックの会」。現役指揮者の映像を見て、品定めをしました。断然すごいと思ったのは、ブーレーズ。シカゴ交響楽団を指揮した《火の鳥》ですが、人間業とは思えません。超正確、精密なのに、音楽が生きていて、しなやかなのです。いったいどのぐらい練習すればああなるのか不思議ですが、ブーレーズが指揮するだけで、かなりそうなってしまうとも思われます。指揮者の能力への、尊敬と信頼、ということなのでしょうか。それとは正反対ですが、アバドの《新世界》も情感豊かで、皆さん感動されていたようです。
今月のCD選でブーレーズのシマノフスキ《ヴァイオリン協奏曲》と《交響曲第3番》を第1位にしたところ、3人の評者が全員一致しました。ウィーン・フィルのライブですが、度肝を抜かれるすごさです。私は先月もブーレーズのマーラーを第1位にしたので、2ヶ月続きました。第2位には、ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルのシューマンの交響曲を入れました。「鳴らない」ことでは定評のあるシューマンの交響曲がこれほど新鮮に響くのは、たいしたものだと思います。
先月スクロヴァチェフスキー~読響のブルックナー《第8》を推薦したのですが、今月は別テイクが、《第9》との組み合わせでDVD化されました。「端然とした楷書の芸術に、求道の精神を聴く」と書いて推薦しましたが、やっぱり80代の指揮者、すごいです。
日曜日は、山崎法子さんのリサイタル。ヴォルフの自在な表現はこの方ならではで、後半、大きく盛り上がりました。火曜日は、皆川先生のホストによるサントリーのオルガン・コンサート。椎名雄一郎さんの演奏がすばらしかったですが、私自身は60点というところで、もうひとつ、流れに乗りきれませんでした。
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