存在への愛2010年12月10日 11時54分00秒

毎朝9時からやっている「オペラ史B」の授業が、あと1回を残すのみになりました。

「B」で採り上げるのはイタリア・オペラ以外の作品。1日1曲で、今日まで12曲を勉強しました。パーセルの《ディドとエネアス》、ラモーの《優雅なインドの国々》、ヘンデルの《ジュリアス・シーザー》、モーツァルトの《後宮からの誘拐》と《魔笛》、ワーグナーの《タンホイザー》と《ニュルンベルクのマイスタージンガー》、ムソルグスキーの《ボリス・ゴドゥノフ》、シュトラウスの《ばらの騎士》、バルトークの《青ひげ公の城》、ショスタコーヴィチの《ムツェンスク郡のマクベス夫人》、ガーシュウィンの《ポーギーとベス》の12曲です。

ほとんどの学生がイタリア・オペラの勉強から始めるので、知らないオペラばかり、という人もけっこういたはず。しかし皆さんは、むしろ足りない曲を、次々と思い浮かべられることでしょう。どうしてベートーヴェンの《フィデリオ》がないの?ウェーバーの《魔弾の射手》は?ヨハン・シュトラウスの《こうもり》は?オッフェンバックの《ホフマン物語》は?チャイコフスキーの《オネーギン》は?サン=サーンスの《サムソンとデリラ》は?マスネの《ウェルテル》は?ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》は?ヤナーチェクの《イェヌーファ》は?プーランクの《カルメル会修道女の対話》は?等々、きりがありません。

世界のオペラは、これほど、広い世界なのですね。指が20本あっても30本あっても、傑作の数には及ばない。今日の《ポーギーとベス》(ラトル指揮)は、昨日の下調べの段階から感動してしまい、涙ながらに資料を作成(笑)。今日また、ブルーノートに酔いしれた、という感じです。

たくさんのオペラを時代順に見てきて思うこと。作風や様式は全然曲によって違いますし、硬派な素材も、軟派な素材もある。でも名曲のすべてを貫いているのは、存在への愛、存在をいとおしむ心ではないでしょうか。それを共有できるのが、オペラの体験だと思います。

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