「艶」2010年12月08日 13時43分25秒

まだ大学院にいた頃、先輩から「君のスケジュールは分刻みだね」と言われたことがあります。美しき誤解で全然そんなことはなかったのですが、今週は、これって分刻み?という実感。とりあえず今週を乗り切るのが目標です。今は静岡県。新幹線の中です。

昨日は、カンタータのコンサートの、ゲネプロ。本番が14日に迫っていますので、みんな集中力が高まってきました。それにしても、やるたびに大きく見えてくるのが、198番の選帝侯妃追悼カンタータです。バッハの最高傑作の地位を争う作品ですね。神戸、平尾の二枚看板を揃えたガンバがさすがに強力で、加納悦子さんの歌われるアルトのアリアの効果が倍増。薄幸のヒロインに対するイメージ作りのしやすさが、合唱にも力を与えているようです。

この作品の存在感は、まったく独特。バッハというと奥に分け入るにつれて深いというイメージがあると思いますが、この曲では創意がすべて花開くように外に表れていて、内面と外面が一体になっている。漢字一文字で表せば、「艶」という字が浮かんで来ます。こういう曲は、他にちょっと思い付きません。

別の言葉で言えば、きわめて修辞的に、効果を張り巡らせて書かれた音楽です。ソプラノ独唱の阿部雅子さんがそのことを踏まえた歌作りをしていることに、共感を覚えます。

特別な作品だと思うにつれ、バッハが主要曲をケーテン侯の葬送音楽やマルコ受難曲に転用したのは当然であるように思えてきました。一回では残念過ぎます。

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