北と南2010年12月02日 23時49分17秒

1日と2日、いずみホールでは、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルのシューマン交響曲全曲のコンサートがありました。月をまたいでしまったためご案内ができず失礼しました。私は1日、第4番と第1番(+α)のコンサートを聴きました。

こんなシューマン、今まで聴いたことがありません。オーケストラの士気が高く、集中力が高くてアグレッシヴ。シャープな響きで奔流のように綴られてゆくシューマンは細部の着想も豊かで、きわめて独創性の高い演奏になっています。胸のすくような全力投球の演奏に接して、お客様たちの熱狂も、まれに見るほどのものでした。

オーケストラの本拠は、北ドイツのブレーメン。指揮者は、エストニア人です。エストニアがどういう風土か知らないのですが、私には、こういう演奏は北のプロテスタント圏でのみ生まれるもののように思われました。南ドイツ以南、カトリック圏の人たちは、長い文化の歴史がありますから、演奏にも、伝統を重んじる。これに対して北は宗教改革を受け入れた人たちで、実験や革新を重んじて、ゼロからの出発も辞さない。古楽において北が先行し、南がずっと遅れたのは、その意味でロジカルなことでした。生活習慣においても、そういう傾向があると思います。

シューマンの音楽に余情や奥ゆかしさを求めると、今回の演奏は、ちょっと違う。でもそこで革新を選ぶのが北の人たちらしいな、と思って聴いた私でした。

〔付記〕オペラの演出もそうですよね。北が前衛傾向、南が伝統傾向です。

コメント

_ 優@背番号1&2&6&22&25 ― 2010年12月05日 01時18分41秒

こんばんは。ご無沙汰しています。
私は、今日オペラシティで聴いてきました。素晴らしい演奏でまだ余韻に浸っています。
かつてベートーヴェン7番をCDで初めて聴いて以来その魅力にはまり、いつか生で聴きたいと思っており、ようやく実現しました。先生もおっしゃってるとおり、活き活きとした演奏もさることながら、各楽器のバランスが実に見事で、ともすれば埋もれがちな管楽器の主体性を持った響きは素晴らしかったです。細かいところまで神経が行き届き、何よりも指揮者と奏者との信頼感が伝わってきました。

確かに北ドイツの人々は宗教改革を受け入れるなど、常に革新的な動きの先端にいたことも一理あると思います。
もう一つ、ブレーメンを含む北ドイツ、さらにエストニアなどバルト三国は、今日こそ経済的な中心からは外れていますが、かつて北海・バルト海地域に幅広く交易活動を展開させていたハンザ都市の舞台でした。このオーケストラの、新しいものに向かう気質もこうした伝統を受け継いでいるのかもしれません。

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