陸のこと2010年03月08日 00時21分51秒

愚犬、陸のことでご反響をいただき、ありがとうございます。マルチーズとヨークシャー・テリアの雑種で、見かけより大きく、7キロぐらいあります。

初めて雑種を飼いましたが、雑種が絶対お薦めであることがわかりました。体が強く、健康なのです。頭も、いままで飼った内で一番いいです。たいていのことは覚えていて、先回りされてしまいます。

初めての、オスでもあります。しかし犬の性差というのが、もうひとつわからない。今までのメスに比べてキカンボの暴れん坊であることは確かで、妻は、ボール遊びをいつまでもやるとか、欲しいものを万難を排して探し出すといった特徴をとらえて、男の子ってこうなのかなあと思う、と言います。今までメス犬ばかり飼っていたので、なでられるのが好きとか、甘えて鼻を鳴らすというのはメスだからかと思っていたのですが、鼻を鳴らして甘えるという意味では、今までのメス犬以上。ただ、違うことが一点あるのです。いままでの犬は、抱かれるのが好きだったのですが、陸は、自分から飛び乗ってくるのは大好きなのに、つかまえて抱かれるのはいやがります。この能動性がオスの特徴かなと、まあ事例が少なすぎますが、想像しています。


家に来て1年経ちましたが、子犬時代より、格段にかわいくなりました。犬は、かわいがればかわいがるほどかわいい顔になると、断言できます。毎月トリミングに行くのですが、そのお店がいつも写真を撮り、大きく焼いてお土産にしてくれるので、家の中が、陸の写真だらけ。今回は「プロのカメラマンが撮ってくれる」イベントがあり、喜んで参加しました。いくらなんでも、自宅にひなまつりのセッティングをして撮影したりしませんよ(笑)。どっち似か、というご質問がありましたが、どうでしょうね。私は犬に似ている、と昔から言われていますが・・・。今後とも、ごひいきにお願いいたします。


後奏を聴きましょう2010年03月06日 11時37分25秒

「国立音楽大学×サントリーホール オペラ・アカデミー特別公演」と謳った《コジ・ファン・トゥッテ》、とても良かったと思います。管弦楽、合唱、裏方の学生たちはすごく勉強になったはずですし、公演自体を楽しまれた方もたくさんおられたことでしょう。

さて、当夜のキャストは、文屋小百合(フィオルディリージ)、小野和歌子(ドラベッラ)、折河宏治(グリエルモ)、櫻田亮(テノール)、鷲尾麻衣(デスピーナ)、増原英也(ドン・アルフォンソ)というものでした。6人とも、とても良かった。独走する人はひとりもなく、一定の抑制を利かせた上でアンサンブルを取りに行っていて、それぞれの持ち場の責任を、見事に果たしていました。オペラ・アカデミーで、いい勉強をされたに違いありません。

彼らは本番へのカバーの歌い手なので、普通は、準備しただけで終わってしまいます。それがこのように公演でき、高い水準の力量を示し得たわけですから、彼らにとっても、本当にいい一夜だったと思います。おめでとう。

ところで、アリアや二重唱への拍手は、後奏が響き終わってからにすべきではないでしょうか。シューマンの歌曲には意味深長なピアノの後奏の付くことが多いですが、こうした場合に、歌が終わったところで拍手する人はいませんよね。オペラでも同じだと思うのです。アリアや二重唱の最後をどう美しく終えるかにモーツァルトは心血を注いでいるので、最後の音まで聴いてあげてこそ、感動は倍加するはずです。

歌い手が心を込めて歌ったことに拍手したい気持ちはわかりますが、モーツァルトより自分を聴いて欲しいという歌い方をした人は、この日はひとりもいませんでした。誰か叩き始める人(多分業界人)がいると周囲もそれに追随して、そこで終わりになる場面がいくつかあったのが、残念です。

博士研究コンサートのご案内など2010年03月04日 23時13分00秒

今日は久しぶりに在宅。まず小山由美論を仕上げ、それから音楽研究所の論文集に掲載すべく書いているモテット《イエスよ、私の喜び》論に集中しました。ほとんど完了。もう演奏が終わっていて後の祭りなのですが、いろいろなことに気づきました。やはり論文を書くことで研究者は勉強するのだと、つくづく思います。

私の一番嫌いなニュース、子供の虐待が、続けて報道されていますね。母親が何とか止められなかったのか、と思っていたら、いま見たニュースでは、虐待の6割が実母なのだそうです。お腹を空かせている子供に食事を与えないという一点が、すでにして、とうてい信じられません。世の中には、本当にいろいろなことがあるものですね。かわいがれば、犬だってかわいくなるのに・・・。

金曜日のオペラのチケットがもうないそうで、案内が遅すぎる!とお叱りをいただきました。ごめんなさい。そこで、「大学院博士後期課程研究コンサート」の、ご案内第一弾です。14日(日)、16:00から国立音大講堂小ホールで、1年次5人のコンサートがあります。紙面の都合上、私の弟子のみのご案内で申し訳ありません。ソプラノが3人です。

トップバッターは阿部雅子さんで、『雅歌』にこだわるバロック音楽のプログラム。グレゴリオ聖歌に始まり、グランディ、モンテヴェルディ、メールラ、そしてバッハのカンタータBWV49と140からです。

次は高橋織子さん。専門とするシュトラウスの歌曲で、 op.10とop.27から。 op.10には、有名な《献呈》や《万霊節》が含まれています。須坂の方、お出でになれませんか?

最後が川辺茜さんで、シェーンベルクとベルクの歌曲です。3人とも実力がありますから、ぜひいらしてください。直弟子ではないですが昵懇の今野哲也君の作品発表もありますよ。

【付記】今日のオペラ、当日券が若干出るようです。16:45から発売とのことでした。よろしく。

3月/ひなまつり2010年03月03日 22時36分01秒

3月のイベントのご案内をしなくてはなりませんが、とりあえず、至近のものを。5日(金)18:00から、国立音楽大学の大ホールで、モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》の公演があります。これがいわくつき。サントリーのホール・オペラを先取りし、カバーの歌い手さん(オール日本人)たちによって上演しよう、というものなのです。まったく同じ舞台ではなく、オケも学生ですが、ラヴィーア演出のコンセプトは共通ですし、ルイゾッティもフォルテピアノで出演します(指揮はフィンチ)。1500円なら、一見の価値ありではないでしょうか。

今日ゲネプロを見ましたが、みんなすごいテンションで圧倒されました。オペラって、こうやって作っていくんですね。一応私が、導入のトークをします。

今日はひなまつり。当家発信の画像をお楽しみください。オスですけど。


今日のNHK2010年03月02日 23時23分24秒

今日のNHK収録は、「バロックの森」の3/31、4/1分でした。3/31は、私の好きなコラール《心からあなたを愛します、おお主よ》の特集。プレトーリウスのモテットを導入とし、スウェーリンクのオルガン変奏曲、トゥンダーとブクステフーデのカンタータとつなげ、最後を、バッハのオルガン・コラール(BWV1115)と、《ヨハネ受難曲》の最終コラールで構成しました。以前iBACHのコンサートでやった企画の、拡大版です。

このコラールとその編曲については、私の弟子でいま研究室の助手をしている佐藤麻衣さんが修士論文で研究しており、今回も、相談に乗ってもらいました。4/1分は、ヘンデル特集。桐山建志さん、大塚直哉さんのソナタ集から3曲使い、大塚さんのパーソナリティ登場の宣伝も添えておきました。他は、ゼフィロの二重協奏曲と、《シバの女王》です。2人の女性スタッフが本当にきめ細かいサポートをしてくれますので、安心して仕事ができます。いまは客観的な解説スタイルでやっていますが、慣れてきたら、いっしょに楽しむような砕けたスタイルを研究してみたいと思います。できるかどうか、わかりませんが・・・。

いくら慣れていても、収録は緊張します。終わった後渋谷をぶらつき、遅い昼食を摂るのが楽しみ。渋谷のぶらつきは、駒場時代から重ねてきたことで、なつかしい感じがあります。

夜は、尊敬するメソ・ソプラノ歌手、小山由美さんに捧げる文章の準備。《パルジファル》のすばらしい映像を見て、アイデアが湧いてきました。サントリー音楽賞の記念ですから、心をこめて書きたいと思います。

JJ(イエスよ、助けたまえ)2010年03月01日 23時00分05秒

今日は、3つの会議のあと、『魂のエヴァンゲリスト』の初校を編集者に渡しました。4月10日の出版を目標にしているようです。夜は、明日収録の「バロックの森」原稿書き。私、本当に最近よく働きます。

今日、《偽の女庭師》の新聞批評が出ました。そういえば、もう3月に入りましたね。2月のCD/DVD選のことを書いていませんでした。2月は、談話室でご紹介した《ロ短調ミサ曲》(ネルソン指揮)と《メサイア》(クレオベリー指揮)のDVDを1位、2位とし、3位にフォン・オッターとウィリアム・クリスティの共演による「愛する人の影~フレンチ・バロック・アリア集」を選びました。ちょっと偏りましたが、それによって取れるバランスもあると思い、このようにさせていただきました。

この3月も予定目白押しですが、弟子たちのコンサートが中旬に並んでいるのが楽しみです。またご案内します。

追加の話題。『エヴァンゲリスト』の図版をいくつか入れ替えるのですが、いい発見をしました。バッハはしばしば楽譜の冒頭に「JJ」(=Jesu juva、イエスよ助けたまえ)、終わりに「SDG」(=Soli Deo Gloria、神にのみ栄光あれ)と記入します。この記入はルター派の教会音楽に限らない、と本文で記述しているのに、図版には《マタイ受難曲》のそれを使っていました。しかし大学の所蔵するファクシミリを調べ、世俗カンタータ《心地よきヴィーデラウよ》BWV30a冒頭に、「JJ」を発見。これと、《平均律第1巻》の「SDG」を使うことにした次第です。バッハがジャンルを問わず、同じ気持ちで五線紙に向かっていたことがわかります。

ツェーンダー氏の研究書2010年02月28日 23時16分50秒

まだ続く、緊張の日々です。明日は、『魂のエヴァンゲリスト』の初校の締め切り。校閲部の手が入ったゲラで作業できるのは、事実上、今日1日でした。具合の悪いことに、ジャン=クロード・ツェーンダーさんのまとめた二冊本の大著『バッハの初期作品--様式、年代、作曲技法』を入手してしまったのです。その情報を盛り込むのに大わらわでした。

ツェーンダーさんは、オルガニスト/チェンバリストで、優秀な研究者でもある方です。ドルトムント大学で、バッハ研究により名誉博士を取られたのですが、その受賞式にちょうど私も列席し、パルティータ第4番の記念演奏を拝聴しました。温厚篤実を絵に描いたような方で、笑顔のやさしい美しさは、比べるものがありません。そんなわけで、新著を無視できないわけです(泣)。バッハの最初期、すなわちオールドルフ時代、リューネブルク時代の作品について、新しい知見が展開されています。

収録する情報にも限度がありますが、できるだけのことはしなくてはなりません。支えてくださる方々への感謝をこめて、がんばります。

プレッシャー2010年02月26日 23時09分19秒

朝から、ドクターコースの入試。受験生には申し訳ないと思いつつ、空き時間に、ワンセグでフィギュア・スケートを見ました。やっぱりワンセグでは真価がわからず、帰ってから録画で見直しましたが、キム・ヨナのすばらしさに感嘆。優雅にして流麗、これ以上ありうるのか、というところまでいっていますね。トシのせいか、涙なくしては見られません。真央ちゃんも、この相手では仕方がないでしょう。ここまで来ると、日本人、外国人は関係ありません。

さかんに言われる、プレッシャー。2人とも、国民的期待を19歳の双肩に担うわけなので、気の毒と言えば、気の毒です。でも、それこそ、本当の晴れ舞台なんですよ。期待を担い、気合いが高まるほど力が出てくる、というのが本当なのです。そこで輝けるかどうかが、将来を分けます。

これは観念で言っているのではなく、自分のささやかな経験や、周囲の芸術家たちを見ていて思うことです。ですから、リスクを忌避する人に、将来はありません。

そんな気持ちで、明日の試験に臨んでみたいと思います。あ、審査員ですが(笑)。

楽しい飲み会2010年02月25日 23時09分26秒

「一寸先は闇」という言葉があります。この言葉を思い出さざるを得ないのが、トヨタのリコール問題。不景気の中で一人勝ちを謳歌していた優良企業がこうなってしまうのですから、世の中はわかりません。民主党政権しかり。広い意味ではこれも、ツキの理論の立証かもしれませんね。

話は飛びますが、飲み会は楽しいですね(飛びすぎ)。月曜日は、「ドイツ語つながり」という会。職場でドイツ留学経験をもつ方々が集まり、親睦を深める、という趣旨の会です。私ははじめて全面参加しましたが、思い出話も多く、盛り上がりました。「ドイツで一番好きなところはどこか」という話題を振り、みなさん思いの丈を語られました。私は、断然ベルヒテスガーデンです。湖と山と修道院のある、すばらしい保養地です。

火曜日は、脳や心理を専門とする東大教授、慶大教授と食事会(スペイン料理)。どちらも大のつく音楽好きの方で、楽しい談話に、時間の経つのを忘れました。私、楽しく飲むことには自信があります。いろいろな方とご一緒したいと思いつつ、時間の制約から、そうできないのが残念です。

大失言2010年02月24日 22時41分27秒

疲れてしまいました(笑)。ハイ・テンションでたくさん仕事をしてきましたが、どうやら限界です。今日はそのためか、大失言。

朝から、入学試験の判定会議をやっていました。今年は推薦の段階から音楽学の受験者が多く、なぜだろう、と首をひねっていたのです。もちろん、受験者減の折から、たいへん嬉しい現象です。そのことを報告する際、「ろうそくが消える前の輝き」というたとえを使ったのですが、これって、とんでもない不吉な比喩ですよね。

私としては、このたとえと、「どんな悪いことが起こるかわからないと心配しています」という言葉とが頭に浮かび、てんびんにかけた末、後者はいかにも、と思って前者にしたのです。背景にはもちろんツキの理論があるのですが、それは、皆さんご存じありません。大失言、ごめんなさい。

会議のあと学生を6人指導し、編集者にDVDの原稿を渡して、帰宅しました。いまオリンピックの映像を見ていますが、カーリングはがんばりましたね。対ドイツ戦を見て、日本女性の美しさを再認識しました。ドイツって、ほんとうにああなんです(内緒)。ともあれ、力一杯投げる競技が多い中で、静かに、力を抜いてショットするカーリングの良さが、少しずつ感じられてきました。目黒さん、やめないでね!

〔付記〕キム・ヨナの完成度の高さはすばらしいですね。たいしたものです。