つきまとう言葉2016年11月15日 23時07分48秒

その人その人に、つきまとう言葉というものがありますね。自分は何だろう、と思ってみると、いやな言葉が浮かんできました。多くの人が私に重ねている言葉は、きっと「ダブルブッキング」です。違いますか(笑)。

もちろん、ダブルブッキングをしないように、私なりに努力している。それでも人様に迷惑をかけてしまう、という連鎖の中で、今回のことは起こりました。

朝日カルチャーは横浜と新宿にお邪魔していて、ときどき、犠牲になっていただいています。最近、立川にも伺うようになりました。駅ビルですから至近距離、もっとも便利な仕事場です。

名曲の演奏比較を、いろいろやってみようということになり、土曜日で空いている日を探したところ、3月11日がいい、と決まりました。来年の話です。

対象を《ゴルトベルク変奏曲》に決め、チラシを作成するやりとりをし、プロフィールも、新しいものに直しました。あとは、その日を待つだけです。

ところがふとメールを見返しているとき、スケジュールにこそ書かれていないが、その日は同じ立川で「たのくら」の例会と錦まつりコンサートをすることになっている、と気づいたのですね。わーーーーっ!と思って、担当の方に「まだ間に合いますか」と連絡したところ、すでに印刷中です、というお返事。平謝りで、別の選択肢を挙げてもらいました。平日になってしまうのは、もう仕方ありません。

ところが今日、別の事実が判明しました。11日の土曜日はたしかに当初候補にしたが、出演者の都合で、12日の日曜日に変更した、というのです。メールを見直すと、確かにそう。私は大いに喜び、立川朝日の方に、「大逆転!」と題するメールを打ちました。私を担当される方は、きっと安らぎのない人生を送られるのですよね。申し訳ありません。

さて、ダブルブッキングというのは、普通、同じ日に二重の予定を入れていることをいいますよね。では、一つの予定を二つの日に入れたらどうでしょう。それもダブルブッキングではありませんか?

今日はサントリーの会議が予定されていましたので、家での仕事を打ち切り、出がけに念のため、予定を確認しました。私、手堅いのです。そうしたら、その予定は参加者の都合で11月に延期になったことが判明したのです。空いた時間を私がありがたく活用したことは、言うまでもありません。

もう汚名から逃れようとは思いません。かかわりのある皆様、くれぐれも確認をお願いいたします。

勉強は嘘をつかない2016年11月11日 00時38分19秒

taiseiさん、久美さん、ご感想ありがとうございました。マニアックすぎるかな、と気にしていましたが、こういう情報発信も大切と思うことができました。もうさっそく、来月のための録音です。今度は演奏に焦点を当てていろいろご紹介しますので、ご期待ください。

いまCDの選考をしていますが、今月は年末で量がとても多い上にいいものが多く、難渋しています。しかも、最後に届いたセットものが本命視される内容なので、もう少し時間が必要です。というわけで、今年の学会は現役の人たちにおまかせすることにしました。ごめんなさい。

小野光子さんは国音に学ばれた方ですが、続けておられた武満研究がすばらしい本になりましたね。『武満徹--ある作曲家の肖像』(音楽之友社)です。あらゆる細部に目配りしつつ、信頼性の高い記述が、いい文章で展開されています。勉強は嘘をつかないと、つくづく思います。

〔付記〕深夜こう書いて寝ましたら、美学のゼミについていけないでいる夢を見ました。授業をさぼっては置いていかれ、一応自信のあることに対しても、先輩が「君はこういうことには向いていないよ」というのですね。同傾向の夢は何度も見ています。

ジンクスは日々に2016年11月06日 21時54分26秒

4日(金)、大阪を往復。行きは新横浜から(若干早い)、帰りは東京へ(座って帰れる)というのが、最近の定番です。新横浜で少し時間が取れたので、下車してお店に入り、海鮮丼を注文。

ところが、なかなか出てこないのですね。食べ終わるまで20分を想定していたのですが、10分、15分と過ぎ、ついに20分経っても出てきません。仕方がないので、時間がないので帰ります、お金は払いますので、と言って千円札を出しました。

すると店員がうろたえ、相談している。そこで、注文が通っているかどうかだけ確認してください、と言ったところ、調べた結果は、通ってはいたが、作るのを忘れた、とのこと(笑)。もちろん千円札は引っ込め、走ってホームへ。昼食は駅弁に変更です。

初めにつまずくとその日はいい、というのが、皆さんご存じの私のジンクスです。その日もいい予感がありました。まずいずみホールで、スタッフと打ち合わせ。スタッフがすごく勉強する人たちなので、ディスカッションがいつも盛り上がります。支えてもらっています。

終了後、必要な本を物色しようと、梅田の紀伊國屋書店に寄りました。すると気がつきましたが、この本屋さん、私の本を丁寧に揃えてくれているのですね。感謝。気をよくして文芸書の棚に移動したところ、そう広くないスペースに、篠田節子さんの分厚い単行本が5種類も並んでいたのです。

そこで『冬の光』という15年の新刊を購入し、読み始めました。四国お遍路の出てくる宗教色は篠田さんらしいですが、これが圧倒的な迫力で、やめられない。新幹線、中央線と一心不乱に読みふけり、帰宅後も読み続けて、夜遅く読了しました。読後感爽快、10歳ぐらい若返った気分です。掘り下げた構想といい筆力といい、やはり第一級の作家だと確信します。

翌5日(土)。上尾の教会で、ルターのコラール《いざ来ませ、異邦人の救い主よ》とそのカンタータの話をする日です。電車はどこでもすぐ乗れ、立ち寄ったタイ料理も美味。迷うこともなく会場到着・・って、これはまずいんじゃないの!!

果たして、事前の資料のミスやDVDが映らずといった事態が起こりましたが、大過なく済み、とても熱心に聴講していただきました。

このブログを読んで来られたという近間の方もおられ、国音の卒業生も複数。最近つくづく思うのは、再会は自然に起こるものだ、ということです。別れもありますが、縁があれば必ず再会する。そう思うことで、肩の力がひとつ抜けました。

今月の「古楽の楽しみ」2016年11月04日 00時10分50秒

今月は、かなり渋いですが、《ブロッケス受難曲》特集をします。

《ブロッケス受難曲》というのは、ブロッケスというドイツの詩人が1712年に書いた受難オラトリオの台本で、聖書を、自分の韻文に書き直してしまっているのが特徴です。これがたいへん人気を博し、有名作曲家が次々と作曲した上、バッハに大きな影響を与えました。CDも揃ってきましたので、そこから、マッテゾンを除く4曲を、次のように並べました。

7日(月) カイザー《ブロッケス受難曲》(1712) ファン・へイヘン指揮
8日(火) テレマン《ブロッケス受難曲》(1716) マギーガン指揮
9日(水) ヘンデル《ブロッケス受難曲》(1719) ノイマン指揮
10日(木) シュテルツェル《ブロッケス受難曲》(1725) レミー指揮

長い曲なので、特徴のあるところ、比較に適したところを抜粋しました。どれも相当いい曲で、受難曲史の上位に位置するものだと思います。

バッハは《ブロッケス受難曲》を書きませんでしたが、一線を画したわけではありません。、1724年の《ヨハネ受難曲》作曲にあたり、いくつものアリアをブロッケス台本から取り入れているからです。また、晩年にはヘンデルの作品を、わざわざ楽譜を作って上演しています。

こうした関心の寄せ方、《ヨハネ受難曲》におけるブロッケス台本の使い方などは、バッハの受難曲観、《ヨハネ受難曲》変遷の理解に、重要な示唆を与えるものであるように思えます。

この点についてはさらに吟味して、《ヨハネ受難曲》論に生かします。時節柄マニアックに過ぎたかという思いもあるため、12月は、有名曲の最新録音をオムニバス的構成でだそうと思っています。ともあれ、どうぞよろしく。

10月のCDプラス2016年11月01日 23時42分25秒

サントリーホールのウィーン・フィル公演、今年は聴かなかったのですが、ルドルフ・ブーフビンダーのピアノ、ズービン・メータの指揮でブラームスの協奏曲第1番がありましたね。

そのDVDとCD(第1番+第2番)が届きました。私はDVDを先に見たのですが、映像からウィーンの香りがむせかえるように漂ってきて、気持ちがよくなりました。何でもウィーンというわけではない。しかしブラームスにウィーンの味わいが出ると、魅力倍増ですね。この組み合わせならではだと思います。

いま「味わい」と言いましたが、ウィーンの人たちは雰囲気で音楽をやっているわけではなく、見るところ、音楽の論理にとても忠実です。ブーフビンダーにしても、愚直に正統派の道を歩んできて、今、立派な巨匠になった、という印象。堂々たるブラームスです。

サントリーホールと言えば、10月28日(金)にあった「作曲家の個展」、いかがでしたか。西村朗さんと野平一郎さんが相互乗り入れで作曲し、野平さんの超絶的なソロで演奏されたピアノ協奏曲、じつに面白かったですね。この組み合わせでなくては実現できなかったという点で、ウィーンのブラームスと同じです。西村さんには、管弦楽の魔術師、という尊称を差し上げなくてはいけませんね。どうやったら、ああいう響きが出せるのでしょうか。

11月のイベント2016年10月30日 09時02分46秒

10月はとても忙しく、たくさんの出来事があって、まだ報告し切れていません。先に、11月のご案内をしておきます。

公開イベントの最初は2日(水、および16日)の朝日カルチャー新宿のバッハ講座です。テーマは新録音の聴き比べ。今月、来月と4回を使って、《マタイ受難曲》をやります。冒頭合唱曲のみを比較から入るか、最初のコラールまでを含めて比較するか、迷っています。

5日(土)14:00から、上尾合同協会(埼玉)で、「ルターのコラールに基づくバッハのカンタータ」というテーマの講演(第2回)を行います。時節柄もあり、「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」を取り上げることにしました。これから準備します。

12~13日の週末は、中京大学名古屋キャンパスで、日本音楽学会の全国大会があります。期限までにエントリーし損なってしまったので、どういう形の参加にするか、いま考えています。

19日(土)は10:00から立川の「楽しいクラシックの会」。ヴェルディ《ファルスタッフ》の第2回です。

23日(水)はいずみホールで、今年のシューベルト企画その2《白鳥の歌》が開催されます。演奏はバリトン 三原剛さん、ピアノ 小坂圭太さんですが、前半にソプラノの佐々木典子さん(ピアノ 千葉かほるさん)が登場され、二重唱を含めて、幅広いプログラムを楽しんでいただけます。詳細はいずみホールのサイトで。14:00からです。

25日(金)は、府中アカデミー合唱団の練習にお邪魔してバッハ/モテット《イエスは私の喜び》についてお話しすることになっています。翌26日(土)13:00は、朝日カルチャー横浜校のモーツァルト講座で、テーマは《ジュピター交響曲》。終了後、懇親会を開きます。

いずれも、どうぞよろしくお願いします。

無伴奏ヴァイオリンの聴き比べPart22016年10月26日 14時25分43秒

演奏の聴き比べは若い頃から好きでしたが、このところ興味が再燃してきました。

朝日カルチャー新宿における無伴奏ヴァイオリン曲の聴き比べ。ソナタ第1番の意外な結果を受けて、先週、ソナタ第3番・パルティータ第3番による第二弾を行いました。

ブラインドで採点を提出というのでは、受講生方も大変だろうと遠慮したところ、なんと、一生懸命聴けて面白いからまたやりたい、とおっしゃるではありませんか。そこで、まずソナタ第3番ハ長調を、4種類で比較しました。

候補は、モダン・ヴァイオリンがチョン・キョンファの最新録音と、邦人中堅で無伴奏を得意としておられる女性(申し訳ないので匿名にしておきます)。バロック・ヴァイオリンは、前回1位のアマンディーヌ・ベイエと、シギスヴァルト・クイケン。21世紀の録音を条件にしている比較ですが、バロック・ヴァイオリンによるクイケンの古典的な名演(1999年録音)を今回入れてみました。比較は第1楽章と、フーガの途中までです。

結果はベイエとクイケンが同数でトップ。1位票の数でベイエの連覇(!)となりました。私見では、模範的な楷書として完成されたクイケンに比べて、ベイエら今台頭している世代には、自由度と味わいが増しているように思えます。以下、邦人女性、チョンの順になりました。

パルティータ第3番ホ長調の方は、プレリュードの途中までと、ガヴォットの全曲で比較。モダンの二人はそのままで、バロックの方を、ミドリ・ザイラーとエンリコ・オノフリ(最新録音)に入れ替えました。ガヴォットはどの方も弾き込んでおられ、むずかしい比較に。

結果はチョン・キョンファが1位、以下ミドリ・ザイラー、邦人女性、オノフリということになりました。オノフリは自由奔放なプレリュードに皆さん戸惑われたようで、票が上下にはっきり分かれてしまいました。ただこの自由奔放は文化を踏まえての勇気あるアプローチですから、上位でもおかしくありません。

講座のひとこまをご紹介しましたが、もちろん不充分な条件下の試みですので、演奏やCD本来の価値を左右するものではないことをお含みください。この講座、来週から《マタイ受難曲》の新録音紹介です。まず冒頭合唱曲で、比較をやってみたいと思います。

またしてもすごい人が・・・2016年10月24日 11時01分09秒

22日(土)に、いずみホールの「バッハ・オルガン作品全曲演奏会」の9回目がありました。1月16日の前回からかなり時間が空いたのは、今回の出演者、ミシェル・ブヴァールさんのご都合に合わせるためでした。

このシリーズのプログラム14種類のうち、私のかかわっていない、すなわちバッハ自身の構成による唯一のプログラムが、今回取り上げられました。それは、《クラヴィーア練習曲集第3部》です。

最高傑作というべき偉大な曲集なのにここまで残っていたのは、この全曲演奏が必然的に長大になり、演奏者にも聴き手にもハードルが高くなるためでしょう。《平均律》と同じで、1回のコンサートで演奏することは想定されていない、とも考えられます。

プヴァールさんにしても、2回に分けてやったことはあるが1日でというのは初めてで、多分最後かもしれない、大きな体験だったとのこと。それだけの課題なので、この1年というものほぼ毎日、この日のことを考えていたそうです。

このように準備されていますから、ゆるぎない安定感で全曲が演奏されました。コラールでは、曲ごとに変わる音色の定旋律が、美しく伸びやかに浮かび上がってきました。加うるに、テクスチャーの把握が強力。気のせいか、いずみホールのオルガンは、優秀なフランス人を歓迎するようです。

国際的な演奏家が続々とやってくる、このシリーズ。私のインタビュー・コーナーも、ゲストの母国語に合わせてできるといいですよね。ドイツ語でお願いせざるを得ないのが、私の限界です。

ブヴァールさんは、ドイツ語で楽に会話されますが、正確にお話ししたいのでとおっしゃり、事前に書面で質問をさしあげました。結局ステージではフランス語で話され、奥様(ヤスコ・ウヤマ・ブヴアール、日本人の鍵盤楽器奏者)に、通訳で入っていただきました。私の質問を全部頭に入れておられ、丁寧に答えてくださいましたが、このあたり、教育者としても立派だとお見受けします。

リハーサルの合間にオルガン席でお話ししていた時のこと。〈主の祈り〉BWV682がすばらしい、とおっしゃって、楽譜の41小節目を指さされました。「41」は「J.S.BACH」の数です(BACH=14の応用)。

この曲に頻出する逆付点のモチーフは人間の「罪」を象徴しているのだが、それは手鍵盤にしかなく、ペダルは終始、歩みの音型で動いている。しかしこの小節でただ一度、逆付点モチーフを奏する。それは、「私もまたその罪を背負った人間の一人だ」というバッハのメッセージだ、とおっしゃるのですね。その洞察が、使用楽譜にしっかり書き込まれていました。

楽譜を見ると見事にそうなっていますから、この解釈は間違いないでしょう。そのことをぜひお客様にもお伝えようとしてお話ししたら、「ペダル」と言うべきところを「左手」と言ってしまいました。痛恨の間違いで、「九仞の功を一簣に虧く」ことそのものです。私、肝心なところで大きな間違いをすることがままあり、お恥ずかしいかぎりです。謹んで修正させてください。

その思いも後半の名演奏で癒され、最後のフーガが圧巻の盛り上がりとなって、満場の拍手。持ち込まれたCDが、なんと60枚も売れたそうです。ワインで乾杯し、最終で帰ってきました。深夜1時、なおハイテンションで帰宅。

ふらりと富山に降りたら2016年10月18日 07時29分47秒

日曜日(16日)の富山は、最近にない快晴でした。新幹線「かがやき」で長野の先まで行くのは初めて。格段に、便利になりました。

せっかくですから前夜泊か当日泊をしたかったのですが、あいにく土曜日の夜はコンサート、月曜日の午前は授業ということで、日帰りになりました。しかし食べ物のおいしい富山のことです。昼食は何かおいしいものを食べたいな、と思い、余裕を見て到着しました。

私は、お店をじっくり選ぶタチです。決めかねているうちに時間切れ、というお昼もひんぱんにありますが、今日は時間があるので、選ぼうと思いました。

広々して整った町並みは、気持ちのいいことこの上なし。ところが、入るお店がないのですね。荷物を転がしながら、公演場所の県民会館を過ぎて富山城の先まで行ってみました。しかしお店が少ない上に、ほとんど休業なのです。観光客は、休日の昼間に来るんじゃないんですかね。

博多ラーメンを富山で食べても、と思い、時間の切迫する中、お城を回って駅に戻りました。すると駅前広場の中ほどにプレハブ(?)の「さかなや撰鮮」というお店があり、賑わっているではありませんか。食券を買い、呼ばれるのを待つセルフ方式のお店です。

ここの海鮮丼が、じつに絶品。さすが富山です。気をよくして県民会館に戻り、ロ短調ミサ曲について、2時間お話ししました。バッハアンサンブル富山さんでの講演は2回目ですが、熱心さ、真摯さともに最高の聴衆のひとつで、私も力が入りました。

会食も盛り上がりました。皆さん、作品に対して自分の意見をお持ちなのですね。3月12日は、きっといいコンサートになるでしょう。

お別れして駅に戻ると、35分のゆとりがあります。そこでふたたび「さかなや撰鮮」に赴き、白ワインでお刺身。これがまた特上でした(笑)。市内を回ったからこそ巡り会えた、珍味でありました。

お店がない、というのは私の探し方が悪い、ということになりましたが、予備知識なしにふらりと下車された方は、このお店に直行されることをお勧めします。

つながり(マッサージ篇)2016年10月15日 23時02分38秒

今年最大の仕事の集中、厳しいですが、月曜日まで頑張れば一息つけます。なんとか切り抜けられそうなのは、皆様に支えていただいている充実感と、思うに、マッサージのおかげです。

かつて、大岡山の「あんのん指圧鍼灸」というお店に伺っていました。ご夫婦とも正式資格をお持ちのグレードの高いお店で、私の記事を見た方がいらっしゃると、それはそれは喜んでくださいました。

にもかかわらず過去形で書くことになってしまい、申し訳ない気持ちで一杯です(皆さまよろしく)。ある日、ヘトヘトに疲れて、新宿を歩いていました。何かの終了後です。すると道筋に整体のお店があり、吸い込まれるように入ってしまったのです。大手のチェーン店です。

ここは何回かでワン・クールをこなすシステムなので、通うことになりました。どの仕事場からも近く便利で、内容も悪くありませんので、ついつい、ここに居着いてしまいました。

そのうち、上手な先生にいつもお願いできるようになりました。H先生、としておきましょう。ある時私が音楽関係だという話をすると、自分の父がクラシック音楽の愛好家で、バッハが大好きです、とおっしゃるではないですか。では私の名前を知っているかもしれないので、聞いてみてください、と申し上げました。

すると次回、私の読者でいらっしゃることが判明。そこで、一番好きな曲は何か聞いてみてください、と申し上げました。

《マタイ受難曲》が一番好き、という、できすぎのようなお答えでした。もちろん嬉しいですから、私の本を差し上げることにしました。丁寧なお礼状をいただきました。

指名競争になる先生ですので、時間が取れないとき、あるいは曜日を変えたい時に、どうしたらいいですか、と伺いました。そこで推薦していただいたのが、M先生です。この方も、すばらしい先生です。

そのM先生に治療していただいている時のこと。先生が、私の父がクラシック音楽好きで、家の本棚に私の本があった、とおっしゃるではないですか。線を引いて読み込んであり、先生の若い頃の写真がついていた、とこれは余分なお話。H先生のお父さんのことは、ご存じなかったようです。

そこで、どの曲が一番好きですか、という同じ質問をしました。次回の返答は、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番、とのこと。今カルチャーでやっている曲ではありませんか!

この偶然には、本当に驚きましたね。若い方の多く来るどちらかというとスポーツ・美容系のお店で、いつしかお世話になる流れとなった二人の先生のお父様が、いずれもバッハ好き、私の読者であられるとは。しみじみご縁だと思うと、血の循環もよくなってきました。がんばります(笑)。