想像力豊かなピアノ2008年09月10日 23時03分17秒

5日間の演奏旅行というのは、演奏家の方にとってはよくあることなのでしょうが、私はへとへと。昨日は東京に戻ったあと大学に出てスケジュールをこなし、今日も会議や指導がたくさん入っていて、たいへん疲れました。

しかし、自分の企画したコンサートを優秀な手駒で実現できるというのは、幸せなことですね。北陸の方々から心温まる歓待をいただき、想い出に残る日々を過ごすことができました。北陸の方々、同行された方々、ありがとうございました。

《魔笛》の管弦楽は足本憲治さんによる室内楽編曲版を使ったのですが、パパゲーノの鳴らすグロッケンシュピールがありません。そこでピアノで代用することにし、ピアノ四重奏曲ト短調のために同行された久元祐子さんに、演奏を依頼しました。

とにかくそのパートを弾いてくださればいい、ぐらいに思っていたのですが、久元さんの演奏はピアノであることを忘れるぐらいにかわいく、歯切れ良く、夢を乗せて響きました。そしてそういう音を出すために、何度も練習してくださっていたのです。

久元さんがモーツァルトの名手であることは皆様ご存じの通りですが(『青春のモーツァルト』というすばらしいCDがALMから出ています)、さまざまな要素を兼ね備えた中でも特筆に値すると思うのが、音楽に寄せる想像力です。インタビューしたところでは、ピアノ・パートのあちこちで、オペラの情景を脳裏に浮かべておられるとか。それがよくわかったのは、《魔笛》における短調と長調の使い方を調べるために、いくつかの部分を演奏していただいたときでした。曲想に従って音色が縦横に変化し、ピアノとは思えないような色合いと情感が醸し出されるのです。

そうするために、初見でも楽に弾ける数小節を何度も練習されていたのが、久元さんです。ミューズに仕える人のひとりとして、尊敬を深めました。

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