温存の術 ― 2008年10月16日 23時20分39秒
《トゥーランドット》、すばらしい作品ですねえ。「なんていい曲なんだろう」と嘆声を上げながら長いオペラを聴き続けるということができる曲は、オペラ史においても、わずかだと思います。プッチーニが死んだあとは、ダメですけど。
高校の頃から、エレーデ盤でこの作品に熱中していました。高校の図書館で〈泣くなリューよ〉の楽譜を見つけてその流麗な書法に感嘆し、楽譜に書き写したことも覚えています。当時はこれと、〈誰も眠らぬ〉(←超名曲)のテノール・アリアが当初のお好みでしたが、最近は、第2幕のトゥーランドットのアリアが一番好きです。第1幕から第2幕の第1場まで、絶えず指し示され、仰がれながら声を出さないトゥーランドットが、ここで初めて歌う。しかし最初はレチタティーヴォの連続(ローリンの物語)で少しずつ、少しずつ盛り上げ、後半に至ってようやく、感動的な旋律が湧き上がってくる。このじらしというか温存の術が、プッチーニの真骨頂です。
《トゥーランドット》の公演では、トゥーランドットが突出して輝いていなくてはなりません。リューが場をさらってしまってはダメで、しかも、そうなりやすい。先述のエレーデ盤などは、テバルディ/デル=モナコの前で、ボルクがすっかりかすんでいました。しかし今度の新国の公演では、見事にトゥーランドットが君臨していましたね。イレーネ・テオリンというデンマークのソプラノ、すごいです。他のキャストも皆よかったですが、感心したのは合唱。オペラのドラマにガッと食い込む歌いぶりで、今や、新国の目玉になりつつあります。
《トゥーランドット》を素材に、ドラマトゥルギー論を作ろうと思いたちました。火曜日の「音楽美学概論」で披露します。
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