ツェーラーさんのコンサート2011年03月23日 17時34分20秒

21日(月)、バッハの誕生日にいずみホールで、ご案内したヴォルフガング・ツェーラーさんのオルガン・コンサートが開かれました。最初に、大震災の犠牲者の方々を偲んで、黙祷。関西の方々は皆さん震災経験者ですから、よく状況を理解してくださり、義援金にも多大のご協力を賜りました。ありがとうございます。

このシリーズでは毎回ステージでインタビューをするのですが、ツェーラーさん、こんなときわざわざ日本に行かなくても、とずいぶん言われたそうです。直接復興のお手伝いはできないが、精神的に深いバッハの音楽を通じて霊的な側面から貢献したい、というお気持ちを述べられ、ほぼ満員の場内から、大きな拍手が湧きました。

客席に有力なオルガニストの方々の姿が見られたのは、ツェーラーさんに対する専門家筋の評価の高さだと思います。まだ若いのにたいへんな水準をもっておられ、いずみホールのオルガンが、これまでの誰とも違う、すごい鳴り方をしていました。単に音色の選び方が違う、というのではなく、根本的に器が広がるような鳴り方なのです。《クラヴィーア練習曲集第3部》の全曲演奏はさぞ負担のかかる大仕事だと思いますが、精密、正確な名人芸で、後半、フーガへ向けての盛り上がりは圧巻でした。

翌日は、日本オルガニスト協会と連携しての、マスター・クラス。ふだんは口数の少ない方とお見受けしましたが、レッスンでは一転して論理明晰、みごとなレッスンです。何より、作品の構造への視点が研ぎ澄まされていて、作品全体の中でどの部分、どの音がどう弾かれるべきかについて、理にかなった洞察をしておられるのです。全国から受講生が集まったのも、むべなるかなと思いました。

震災後の復興に向けて、大阪の方々からアドバイスをいただきました。それは、「お金を使え」ということ。義援金のことではなく、その後の消費活動のことです。震災後はどうしても、外食すら慎むようになりますよね。でもずっとそうしていると経済が収縮してしまい、復興の基盤ができなくなる、というご意見を、何人もの方から、異口同音に伺いました。なるほどと納得したのですが、帰ってきてみるとテレビでは、「今私にできること--必要もないのに買うのをやめよう」というコマーシャルが流れています。どうなんでしょうね。