音楽の灯2011年03月31日 11時59分48秒

関西の温かい聴衆のご支援で、いずみホール「日本のうた」企画、30日に実施できました。花岡千春さんのすばらしい復元と伴奏に支えられ、三原剛、石橋栄実、小堀勇介の3歌手が大熱演。感動的なコンサートになりました。

「クラシックな歌謡曲」の第2回で、昭和20年代、30年代、40年代、「時間」にかかわる作品、の4部構成としたのですが、昭和20年代の歌謡曲について感じたことを、ちょっと書かせてください。

今回取り上げたのは、《港が見える丘》(平野愛子)、《青い山脈》(藤山一郎+奈良光枝)、《ダンスパーティーの夜》(林伊佐緒)、《君の名は》(織井茂子)の4曲でした。どの曲も体に染み入るように覚えていて、その中にはカラオケで最初に歌った曲(→君の名は)も含まれています。

ムーディな曲、軽快な曲、洒落た曲などさまざまですが、どの曲にもしっとりした大人の情感がある。そしてコアな部分に、深い悲しみがひそんでいるように思えるのです。昭和30年代の夢美しき歌謡曲とは、まったく違う世界。どう考えてもそこには、生々しい戦争体験が反映されているように思えます。この世の果てを見てしまった人でなくては書けない詩、作れない音楽が、そこにあるのです。

そこで思ったのは、こうした歌が当時の人々にどれほど共感され、その心を慰めたか、ということです。ですから、音楽の灯というのは、絶やしてはいけないのだと思います。たいへんな時に音楽の発信力を保ち、音楽文化のレベルを保つよう努力するのは音楽に関わる者の責任ですが、社会にも、そのあたりの理解はぜひいただきたいと願っています。