耳を澄ますからこそ2011年02月03日 11時59分49秒

分刻みの毎日から、2月2日の記録です。

準備もおぼつかないまま飛び出し、NHKへ。内容はあらためてご紹介しますが、ウィーンの宮廷音楽特集を録音しています。面白いのですが、よく知っているわけではないので、準備に時間がかかる。結局12時半からのスタートに間に合わず、息せききって飛び込みました。

ところがスタジオはまだ準備以前。聞いてみると、今日は13時スタートとのことです。なあんだ、と思う反面、よかった、とも。おかげで、NHKの食堂で昼食をとることができました。収録は意外に難航し、いつもより遅い終りになりました。

そんなわけで、立川アミューに着いたのが、7時15分前。開演の直前となり、会場には緊張が走っていました。7時から開演なのに司会者が来ないのですから、無理もありません。疲れを休めるひまもなく、トーク開始。それでもなんともないのには、2つ理由があります。1つは、出演者が渡邊順生さんで、司会者は話を振りさえすれば済むこと。もうひとつは、280席のちょうどよい空間におなじみのお客様が集まっているため、緊張が少しもいらないことでした。これだから、「たのくら」はやりやすいのです。

コンサートはベートーヴェンのチェロ・ソナタ第2番(初期)から始まり、第4番(後期)、《魔笛の主題による7つの変奏曲》をはさんで第3番(中期)と進みました。フォルテピアノは音が小さいですから、最初はあれっという感じで、耳を澄ます。これがいいのです。耳を澄ますことは、心を澄ますことだからです。響きになじむにつれ、その繊細な世界の様子がよく見えてきます。やがて、バロック・チェロとフォルテピアノががっしりと嚼み合って音楽を作っているさまがわかり、音量の不足は、まったく感じなくなります。耳を澄ますからこそ見える、音楽の奥行きです。

小さな会なのに、花崎薫さん、渡邊順生さんは本当によく準備して臨まれ、ベートーヴェンの真髄を伝えてくれました。会のコンサートでブラボーが出たのは、初めてではなかったでしょうか。おかげさまです。

不吉な予感2011年02月05日 00時45分30秒

分刻みの毎日から、2月3日の記録です。

3時から、いずみホールの打ち合わせ。慎重に逆算し、出発時間を決めました。それまでの時間を使って、ドイツ語の書類を2つ製作。修正を加えるうち出発が遅れ気味になりましたので、せっかく座れた中央線でしたが、国分寺で特快に乗り換えました。おかげで、余裕をもって東京駅に到着。これなら、十分間に合います。

それにしても、改装成った東京駅のエキナカはすごいですね。レストランもお弁当売り場も一新され、当分、楽しめそうです。セレブな雰囲気が、横溢。新幹線の車中では、仕事に集中しました。レッツノート、本当にいいですよ。WiMAXの効果もあり、仕事がどんどんはかどる。画面の見やすさ、キーボードの打ちやすさ、メールが常時使えることなど、今までとは雲泥の環境です。とにかく仕事が遅れていますので、「ジュピター」(いずみホール情報誌)の巻頭言をがんばって仕上げ、《魔笛》の解説を、あらまし書きました。

ほっとして新大阪に降り立つと、ホールのスタッフからメールがありました。曰く、「3時からお待ちしているのですが、どうかなさいましたか」と。驚いた私は、思わず、「えっ私、1時間間違えましたか」と返信してしまいました。

3時開始に、誤解はなかったのです。しかし、私の計算通りに動いたのでは4時にしか着かない、ということを理解していなかった。時計と見ると、その時点で、すでに3時半でした。

ここまで、計算通りだと思って旅してきたのは、何だったのでしょうか。ご承知のとおりいろいろ間違いを犯す私ですが、この手の間違いは、生まれて初めてです。不吉な予感がします。

静岡を満喫2011年02月06日 20時55分17秒

講演は1時からですが、静岡駅には11時5分に着きました。会場でテストを終えるまでに、30分。時間があるので、ゆっくり静岡の街を散策します。天候のせいもあるのでしょうが、静岡は穏やかな雰囲気の町で、人々の表情も、なごやか。おいしそうなお店も多く、「駿河丼」で昼食をとりました。ご存知ですか、シラスとマグロを乗せた海鮮丼です。

いつも息急き切って駆け込む私が、なぜそんなに余裕があるのか。準備ができているからなのです。今回はたいへん過密なスケジュールの中だったのですが、どうやらそういう方が危機感から緊張するらしく、しっかりと準備しました。よく、「仕事は忙しい人に頼め」といいますね。その意味のひとつは、忙しい人は仕事を断らないから忙しいのだ、という洞察であると思いますが、テンションの問題もあるかもしれません。忙しいときほどしっかり準備する、という形で一般化できるかどうか、自分を観察してみます。

思いがけないほど大勢のお客様の前で《ゴルトベルク変奏曲》について語ること、ちょうど1時間半。そのあと、シュタイアーの公演を聴きました。終了後、散策時に見つけて予約してあった、洒落たマッサージ店へ。それから「ナシゴレン」を食べて、静岡を満喫し帰京しました。今日も、レッツ・ノートが伴侶として大活躍。新聞も週刊誌もいらなくなりましたよ、ほんとに。

不思議に思うこと2011年02月08日 11時14分40秒

報道に接して、不思議に思うことがあります。

国家財政の逼迫が叫ばれ、消費税の論議が盛んですね。私も、それは仕方がないと思います。将来の破綻が見えているのに将来にツケを回すというのは、筋道が立たないと思うからです。

しかるに、減税を叫ぶ政治家があらわれ、選挙で大勝し、英雄視する向きもある、というのは、どういうことなのでしょうか。真逆のことが同時に起こっていて、並行して報道されるものですから、とまどってしまいます。どちらが正しいのでしょうか、それとも、どちらかが正しい、というものでもないのでしょうか。

無駄を省く2011年02月10日 11時40分39秒

「無駄を省く」努力が行政の方でも盛んに行われていると、報道されています。結構結構。「エコ」というのは、そういうことですよね。私はお金の無駄遣いをすることはある程度ありますが、時間の無駄は、極力切り詰めています。本当は必要なことまで、切り詰めてしまっているのかもしれませんが。

でも、何が無駄か、という判断はむずかしいのではないでしょうか。未来への投資、学問や芸術への投資は、いつも、判断のグレーゾーンにあります。でも今日書きたいのは、そのことではありません。

私は、制度やシステムを変えることに伴う無駄こそじつは非常に大きいのではないか、と思うのです。選挙も、ここに入ります。こういう制度に変えるべきだ、ああいうシステムに変えるべきだという主張にはいろいろなところで出会いますし、「とにかく変えて欲しい」という希望も、よく耳にする。でも、どんな制度も結局は一長一短だ、という経験を、私はしてきました。

お金をかけ、人手をかけて、新しい制度を採用する。しばらくすると、その制度の思わぬ欠点が目につくようになり、いろいろな調査や議論を経て、新しい制度が採用される。よく見ると、以前の制度に戻っている場合もある。このようにして、多額の金銭と、労力と、時間が失われているのが、世の中ではないでしょうか。実例は皆様に周りを見回していただきたいのですが、わかりやすいとしては、小選挙区制の採用が挙げられると思います。

完璧な制度やシステムはない。それを補うのは、運用です。運用がしっかりしていれば、制度やシステムの不備を補って、合理的に、安価に事を運ぶことができる。もちろん人間ですから、不備を利用した悪い運用が行われ、だから制度の変更が必要だ、ということになっているのでしょうが、身の回りであれば、運用によって伝統的な制度やシステムを活かす、という知恵があってもいいように思います。そういう柔軟性が、だんだん許されない時代になっているのでしょうか。

雪降り積む2011年02月12日 11時24分46秒

松本は、かなりの雪でした。この冬初めてだそうで、皆驚いています。しかし私は自分が住んでいた頃の雪を覚えているので、違和感はありません。むしろ、嬉しく思います。

松本の誇るザ・ハーモニー・ホールは、松本駅から大糸線に乗って2つ目の、島内という駅のそばです。これがなんと、無人駅。ではよほど田舎かというと、近くに「ショコラン」という南仏家庭料理の洒落たお店があり、公演前にもここで食事をしました。

2時から、シュタイアーの《ゴルトベルク変奏曲》の前座に、講演1時間。松本バッハの会の方々をはじめ、たくさんの方に来ていただきました。シュタイアーの《ゴルトベルク変奏曲》を聴くのは、今週3度目です。水曜日のトッパンホールにおける演奏の批評を毎日新聞に書きましたので、ここではちょっと控えておきましょう。掲載は、再来週の月曜日です。

夜は、昔の仲間たちとワインをはしご。松本は、いいお店がたくさんありますね。結構都会的に洗練されているのです。

今、どこでこれを書いているか。浅間温泉の東石川旅館です。日曜日が須坂なので、温泉泊りで英気を養うことにしました。そのために、出発前は必死で仕事の消化し、今も、1本送ったところです。

小学校5年のとき高崎から松本へ転校し、いまサイトウキネンの演奏会場のある水汲というところから、本郷小学校に通っていました。女鳥羽川を渡り、左にカーブしながら緩い坂を登ると、右側に東石川旅館(左側は西石川旅館)がある。毎日その前を通って、学校に行ったのです。はっきり覚えているその旅館に泊まることができてなつかしく、とても満足しています。

winmail.dat2011年02月15日 17時08分48秒

仕事でご一緒している合唱団の方から、添付ファイルを送った、というメールをいただきました。しかし添付されていません。添付されてないですよ、じゃもう一度送ります、というやりとりを、何度か。「たしかに送っているのですが・・・」と言われ、変だなあ、と思っていました。

HTMLメールの場合、ファイルが2つあるように見えます。そのため気にしていなかったのですが、わかったのは、「添付したはず」のメールには、winmail.datという正体不明のファイルが付随している、ということでした。もちろん開けないファイルですので、添付ファイルだという意識もありませんでした。

しかしふと思い立って調べてみると、winmail.datの開き方、という情報を掲載したサイトは、じつにたくさんあるのですね。この変なファイルは、Outlookの2003と2007を使うと発生すること、それを開くためにWinmail Openerというツールをダウンロードできることがわかりました。

めんどうだなあと思っていたら、G-Mailなら開ける、とのこと。たしかにそうでした。もちろん、Outlookを使っている人同士であれば問題がなく、違うメーラーを使っていると発生することだそうです。ネットでは、こういう仕様にしたMicrosoftの方針が批判されています。たしかに、そう言われても仕方ないですよね。

今日も、いつもメールをくださる方から、winmail.datという添付ファイルが送られてきました。困っている方、いらっしゃるのではないでしょうか。

鋼鉄の肉体2011年02月16日 18時07分18秒

土曜日(2/12)は、雪のち晴れの松本で、自由行動。温泉どまりの私に欠かせないのは、マッサージに行くことです。

松本をぶらぶら歩きながら、お店を探しました。ところがどういうものか、お店の多くが、ピンク色の看板を掲げているのです。そうなると、なぜか入りにくい。ここでもない、あそこでもないと歩いているうち、よさそうな店を見つけました。

漢方薬のお店の、2階です。これなら、医療一筋に違いない(注:ピンク色の看板のお店も医療一筋なのかもしれませんが、調べるすべがありません)。台湾系のお店。脇の階段を登ると、やや雑然とした店内に何人も女性が密集している。よく見ると、麻雀に興じているのです。2階は意外に広く、いくつものベッドが暗がりの中に並んでいます。もらった着替えは湿っていて、ひんやり。不吉な予感がしてきました。

まあそれは、思い過ごし。日本語片言の中年女性が、思い切りもんでくれました。カタイ、カタイ、と感心(?)しながら全力投球(ありがとう)。凝っているところがあると、挑むように、そこに集中します。肘を多く使い、時には背中に乗って、体重をかける。人生有数の痛さでした(笑)。中国系のマッサージって、こういう傾向ですよね。

プロのマッサージ師の人がどなたも「本当に固い」と驚いてくれるので、だんだん、自信が出てきました。そこで思い出したのは、少年時代のことです。文弱の徒でコンプレックスをもっていた私は、「男である以上、鋼鉄の肉体を手に入れたい」と思っていたのです。現在ではそれが、実現されている。願うことは実現するものですね、ちょっと意味は違いますが。

国内盤と輸入盤2011年02月18日 23時58分50秒

新聞のCD選に、苦労しています。かつては、たくさんあるいいものの中から何を選んだらいいかで苦労していたのですが、最近は国内盤がすごく減ってしまい、逆の意味で、選びにくくなりました。しかしショップに行くと、輸入盤が目白押しで、面白そうなものも、たくさんあります。

というわけで、送っていただいた国内盤の中から選ぶ、という方針を守ることが、むずかしくなってしまいました。今月の場合、1位にリフシッツの弾くバッハ《音楽の捧げもの》を、2位にラ・ヴェネクシアーナのモンテヴェルディ《マドリガーレ集第8巻》を選んだのですが、これは新譜ではなく、私が新たに手に入れたものです。そこで来月から、一定範囲で輸入盤を公式に、選択肢に含めていただくことにしました。地方の方には不親切かなとも思いますが、ネット販売を活用していただければと思います。

それにしても、国内盤のこれからがどうなるか、心配です。やはり、解説や訳詞のある形で聴ける方がいいのは間違いなく、私も書き手の立場からすれば、それが望ましいのです。しかし価格が高くなるという問題があり、人気のあるアーチストに集中する傾向もメジャーなレーベルほどはっきりしていて、これはもう皆さんご存知だし、という気持ちについなってしまいます。

それにしても、《音楽の捧げもの》をピアノで全曲弾いてしまうリフシッツのバッハ愛は、なかなかですね。このような形で聴くと、作品のすばらしさがよくわかります。《フーガの技法》の先にある、バッハの究極の境地です。

3位には、私の尊敬するクラリネット奏者、四戸世紀さんの「ドイツ・ロマン派の光と影」を選びました。地味な曲が並んでいますが、演奏の品格は、抜きん出たものです。日本人のアーチストの録音は、これからも応援していきたいと思います。

メーラー乗り換え2011年02月19日 23時58分40秒

一筋に使い続けるべきものか、時折変える楽しみも許されるのか・・。メーラーを変更しました。ShurikenをやめてThunderbirdにしたのです。がんばってほしい国内メーカーに申し訳ない、と思いつつ。

Shurikenの機能は、たとえば送信メール作成機能で言うなら、Thunderbirdよりはるかに上です。もうひとつ優秀なのは振り分け機能。毎日来るたくさんのメールをこの機能で自動振り分けし、管理していました。

振り分け管理が絶対便利、と思ってそうしていたのですが、しばらく並行してThunderbirdを使ううち、そうでもない、と思うようになりました。振り分けにはグレーゾーンがついてまわります。そうすると、どのメールがどのフォルダにあるか、わからなくなってくる。それを探すことが、最近多くなりました。

だったら、Thunderbirdの検索のしやすさ、速さが生きるのではないか、ということです。諸事高速なので、タグの管理も快適。アドレス帳も、一発クリックで作れるので、簡単です。今日は、G-Mailのカレンダーと同期できることを発見し、これは離せないな、と思うに至りました。

かたや有料、かたや無料。単純にユーザーの立場には立ちにくいのですが、無料であることに加え、アドオンが提供されているのはいいですよね。このメールを送っていいか、と訊いてくれるアドオンを入れましたが、うっかり送りをふせぐために、これは絶対必要な機能だと思います(ちなみにShurikenには、これが最初から備わっています)。

〔付記〕アーカイブが一発で作成できるのも、便利な機能です。フォルダの作成等をしなくても、アーカイブ指示を出すだけで2009、2010とまとめることができます。