重なる面影2011年09月22日 23時34分26秒

連続講義「ルターとその時代」第3回は、宮谷尚美さんの「ルターとコラール」というものでした。宮谷さんは国立音大でドイツ語を教えておられますが、ルター研究を専門とし、 T.カウフマン 著『ルター 異端から改革者へ』(教文館)という訳書も出しておられる方です。

アイゼナハ、ルターの生涯、ルターの神学、そのコラール、《神はわがやぐら》などなど、完璧に準備されたお話が密度高く展開し、じつにすばらしい講義になりました。中でも、ドイツで指導された老教授が《神はわがやぐら》のテキストを朗読された映像は感動的でしたが、それはこの講義のために、わざわざドイツで収録されたものでした。

言葉に力のある、熱意にみなぎるそのお話を聴いているうちに、私には、これはどこかで聴いたことがあるなあ、という思いが兆しました。20歳の頃に駒場で聴いた、杉山好先生の講義です。若い私をゆさぶったのと同じ、ルターに関する熱烈な講義が、半世紀近くを経た今、私の眼前で展開されているのです。

杉山先生の訃報に接したばかりの時に、先生の精神が乗り移ったようなこうしたお話を聴く偶然とは何たることだろうと、私は思い、宮谷さんは杉山先生が亡くなったことをご存知なのだろうか、という思いが湧いてきました。

終了後そのことをお尋ねすると、お返事は、「先生のブログで知りました」というものでした。杉山先生とは孫弟子にあたり、面識はないとのことです。今日のことをお話したら、先生は涙を流して喜ばれるに違いない、と思いました。受け継がれてゆくものですね。

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