電子書籍2012年04月25日 22時17分29秒

電子書籍リーダーを導入しようかと考え始めたところへ、私の文庫を電子化しないか、という、出版社からのご相談。もちろん違和感なくお受けしたのですが、WEBをこれほど活用している私であるにもかかわらず、液晶画面で本を読む、という感覚がまだつかめないのです。

スマホには、「青空文庫」というアプリを入れています。しかしどうにも、文学を読んでいる気がしない。『源氏物語』にチャレンジしようと思ってダウンロードしましたが、行間から雰囲気が立ち上らず、意味を追うだけになってしまうのです。これは、単なる慣れの問題なのでしょうか。それとも、電子書籍がまだ発展途上で、情報を媒介することはできても、芸術性の表現には至っていないのでしょうか。リーダー導入の是非を含めて、先学の方に教えていただきたいと思います。

これは紙の本ですが、小松長生さんの『リーダーシップは「第九」に学べ」という新書(日経プレミアシリーズ)を、興味深く読みました。小松さんは、東大美学の後輩。そういう方がいらっしゃるということは知っていましたが、面識はありませんでした。しかし共通の知人を介して、本を私にプレゼントしてくださったのです。

「そもそも指揮者は必要なのか」という章から始まるこの本は、指揮者のリーダーシップやマネージメントに焦点を当て、ビジネスマンの参考にも供しよう、という内容のものです。美学出身の方だけあって、指揮という営みへの分析と反省が行き届いており、学ぶところ、共感するところが、たくさんありました。

小松さんの指揮の極意は、「気配を消す」ことだそうです。棒は動かしているけれども指揮者の気配は消えているというときに、楽員はもっとも音楽に没入して、音楽は帆にいっぱい風をはらんだ状態になる、と書かれていました。笛吹けど踊らず、の対極ですね。