今月の「古楽の楽しみ」2014年08月14日 23時56分18秒

8月25日(月)から28日(木)まで放送される、今月の「古楽の楽しみ」。ご好評をいただいていると聞く「リレー演奏」方式で、《ロ短調ミサ曲》を取り上げました。今日3日目、4日目の収録を行いましたが、作品のすばらしさは圧倒的で、こみ上げる感動を抑えながらの収録となりました。

CDの何を使うかはじっくりと考え、手持ちしていなかった輸入盤数点を加えて選考しました。その過程で痛感したのは、汎用型の大指揮者・著名指揮者の録音がよりよいわけでは決してない、ということです。やはり専門的な内容理解や、バッハ演奏への習熟が鍵を握ります。また、購入に迷われるときには、新しい方をお選びになるのも一案です。この難曲に対する演奏水準が、相当に向上しているからです。

25日(月)は、〈キリエ〉から〈グローリア〉の4曲目までをヘンゲルブロックの指揮で聴き、残り時間で、〈キリエ〉の冒頭を、古今の演奏で比較しました。対象は世界初録音のコーツ(1929)、定番のリヒター(1961)、最新のバット(2009)です。

26日(火)は、〈グローリア〉を冒頭からヤーコプスの指揮で聴き直し、残り時間で、ヴィンシャーマン~ドイツ・バッハ・ゾリステンの岡山での録音から、〈グローリア〉の合唱曲部分を聴きます。

27日(水)は〈ニカイア信条〉。ここで選んだのは、通しがロバート・キング指揮、テルツ少年合唱団のもの、比較が、アーノンクールによる中央の合唱曲3つと、ベーリンガー指揮、ヴィンツバッハ少年合唱団による最後の合唱曲2つです。2つの少年合唱団に囲まれると、アーノンクールの1986年の演奏には、大人の作為が感じられます。ヴィンツバッハ少年合唱団はあまり知られていないと思いますが、優秀ですね。

28日(木)は〈サンクトゥス〉以下。ここに、21世紀の録音を集めました。ミンコフスキ(2008)と、フェルトホーフェン~オランダ・バッハ協会(2006)です。どちらもいい演奏ですが、スタジオでは、軽快で躍動感のあるフェルトホーフェンの演奏に、最大の支持が集まりました。

放送の中でも言ったのですが、昔は「《ロ短調ミサ曲》という曲はない、個々の楽章があるだけだ」というスメント説の影響もあってか、《ロ短調ミサ曲》は残念ながら後半に力が弱まる、と言われていました。恥ずかしながら、私も長いこと、そう思っていたのです。今ではもちろん、そうは思っていません。《ロ短調ミサ曲》は、終わりに近づくにつれてますます感動深くなると、確信しています。そのためか、放送も、21世紀の演奏を使った4日目に、クライマックスが来ているように思います。もちろん、3日間があってこその、4日目であるわけですが・・・。