必読の「論文論」2014年09月09日 23時59分40秒

私がもっとも尊敬する先輩にして友人、佐々木健一さんが、すばらしい本を出されました。題して『論文ゼミナール』(東京大学出版会、2300円+税)。第一部「論文を書くとはどういう経験か--原理篇」、第二部「論文を書く--実践篇」から成り、「卒業論文を書く人」が、主要な読者としてイメージされています。

抜きんでた力量をもち、たくさんの良質な論文を書いて来られた方が、円熟の境地に至って綴る、論文論。それは当然、論文をどう書くかを超えて、論文とは何か、学問はどうあるべきかの、学問論になっていきます。

ですから著者は、この本を「自由な哲学的エッセイ」と呼んでいます。積み重ねられた経験と、透徹した大局観と、なにもそこまでと思うほど誠実な態度によって綴られたこの本を、私は大きな感動をもって読みました。私は、この本に書かれている知見のすべてを、実感をもって理解することができます。なぜ著者がこの本をお書きになりたかったかも、理解したつもりです。そして、記述のほとんどすべてに、心から共感します。しかしそれは、私の書くものが佐々木さんの要求をすべて満たしている、ということではありません。きっと、それは私の限界だろうと思います。

こういう方と学問領域において出会い、個人的な交遊も賜ったことは何と幸せなことだったのだろうかと思います。そこまで言うかとお思いになった方は、どうぞ本を手にとってお読みください。これから論文を書こうとされる方は、もちろんのことです。




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